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「文系学部廃止の衝撃」吉見俊哉 集英社新書 2016年 ① [読書記録 教育]

「戦争に勝つには産業経済力の増強しかなく、それには大学の研究力を強化しなければな
 らない」                
「そもそも、勝てるのかという目的自体を客観的に批判する視点は生まれてこない」


今回は 吉見俊哉さんの
「文系学部廃止の衝撃」1回目の紹介です



出版社の案内には

「大学論の第一人者による緊急提言!
 大学は何に奉仕すべきか?
 迷走した廃止論争の真相と、日本を救う知の未来像。
 2015年6月に文科省が出した『国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて』
 の通知を受け、各メディアは「国が文系学部を廃止しようとしている」と報じ、騒動と
 なった。これは事の経緯を見誤った報道ではあったものの、大学教育における『理系』
 偏重と『文系』軽視の傾向は否定できない。
 本著では、大学論、メディア論、カルチュラル・スタディーズを牽引してきた著者が、
 錯綜する議論を整理しつつ、社会の歴史的変化に対応するためには、短期的な答えを出
 す『理系的な知』より、目的や価値の新たな軸を発見・創造する『文系的な知』こそが
 役に立つ論拠を提示。実効的な大学改革への道筋を提言する。」

とあります



今回紹介分から強く印象に残った言葉は…

・「国立大は法人化されてから、まるでかつての社会主義国のように6年ごとに立てる中
 期目標・中期計画に縛られている」
- 文科省が各大学に職員・旧職員を送り込み 言うことを聞かせているようにしている
 のではないか?  
  今回の再就職斡旋問題がその背景にあるのではないか?


・「『儲かる理系』対『儲からない文系』という構図」


・「岸信介内閣の松田竹千代文部大臣『国立大の法文系を全廃してそれらはすべて私立に
 任せ国公立は理工系中心に構成していくべきだ』」
「国立大 理系は定員増  文系は定員数抑制」

・「理系は政策的に保護され、手厚い予算から文系は保護から外され続けた」




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☆「文系学部廃止の衝撃」吉見俊哉 集英社新書 2016年 ①

1.JPG

1 瞬く間に広がった「文系学部廃止」報道

□きっかけ 2015.6.8 文科省通知 各法人学長宛

「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」

6月後半 報道がエスカレート
 


□文科省批判の集中砲火

文科省バッシング 7月末~9月
 


□海外メディア 

 産業界からも相次ぐ批判 



□文科省通知には何が書かれていたのか

 「特に教員養成系学部・大学院 人文社会科学部系学部・大学院」

国立大は法人化されてから、まるでかつての社会主義国のように6年ごとに立てる中
 期目標・中期計画に縛られている
 
                 |

  中期計画の達成度で評価され、叱られたり褒められたり 

                 ↑
    
  膨大な時間を割く 2003年~      






2「通知」批判背後にある暗黙の前提

□通知内容は一年前に公表されていた

2015.5.27 国立大学法人評価委員会に素案

  前年8月に「ミッションの再定義」
 


□「文系学部廃止」批判の背景 

 突然の問題視

1 2015年夏の政治状況 安保-安倍政権

2 新国立競技場建設問題

3 文科省 2014年と2015年の政治状況変化を読み込まなかった

「儲かる理系」対「儲からない文系」という構図






3 分離の不均衡はいつから構造化?

□国立大における文系と理系



□戦争の時代に築かれた理系重視
 
 戦争がない時代は法科系エリート

 1910年以降-即戦力としての軍事力強化の時代
   理化学研究所(1917) 土木学会(1914) 日本鉄鋼協会(1915)
 
       |
 
   ロビー活動 法科系の支配権を理工系が奪還
 
   1940年 「科学動員実施計画綱領」に結実 選択と集中=総力戦に!      


現在に引き継がれる戦時の研究予算体制
   
 ロジック
 「戦争に勝つには産業経済力の増強しかなく、それには大学の研究力を強化しなければ
  ならない」                
  
     ↑

  そもそも、勝てるのかという目的自体を客観的に批判する視点は生まれてこない

  高度経済成長によってさらに強まる理系優先

 岸信介内閣の松田竹千代文部大臣
「国立大の法文系を全廃してそれらはすべて私立に任せ国公立は理工系中心に構成して
  いくべきだ」

国立大 理系は定員増  文系は定員数抑制



□ポスト高度成長期にも継続する理系中心の体制

 1970 80年代以降

   理系は政策的に保護され、手厚い予算から文系は保護から外され続けた
 


□理系偏重の科学技術政策に対する問題提起

 日本学術会議 2001年

「21世紀における人文・社会科学の役割とその重要性」声明

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コメント 2

のべる・K

興味深い話ですね。
大学は何に奉仕すべきかですか・・・。難しいですねぇ。
by のべる・K (2017-02-20 20:26) 

ハマコウ

のべる・Kさん ありがとうございます
戦争時代の話にまでつながるとは思っていませんでした
根深いものがあるのだなと感じました
by ハマコウ (2017-02-21 04:55) 

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