対談「教育の志を取り戻せ」野口芳宏 向山洋一『致知』2007年9月号 ④ [読書記録 教育]
今回は 8月 6日に続いて 月刊誌『致知』2007年9月号より
野口芳宏さんと向山洋一さんの対談 「教育の志を取り戻せ」 4回目の紹介です。
「TOSS」の代表の向山さんと国語科教育で知られる野口さんの対談。
納得できるところもありますし、それは違うのではと思うところもかなり…。
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ものづくりのまちとも言われる浜松。
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☆対談「教育の志を取り戻せ」野口芳宏 向山洋一 『致知』2007年9月号 ④
◇上に立つリーダーの責任
<野口>
この間、ある県の教頭会、校長会で講演を頼まれた時に皆さんに聞いてみたんですが、
日本の社会、日本の子どもや若者が、このままでいいとは誰も思っていないんです。
では、家庭教育、学校教育、社会教育のどれが一番悪いかと尋ねたら、9割5分の人が
家庭教育が悪いというんです。
しかし本当にそうだろうか。
ろくな家庭教育もできない人間を育ててきた戦後60年の学校教育の問題点を謙虚に反
省しないと、本当の立て直しはできないと私は思います。
やはり基本は学校教育です。
また教師はそのぐらいの誇りと責任を持って教壇に立つべきです。
ところがいまは、社会を怖がり、親を怖がり、子どもを怖がって、教師に元気がない。
<向山>
上に立つ人間の責任も大きいと思います。
教師は休みが多過ぎるとよく批判されるので、この頃は校長が気にして夏休み中に教師
をやたら学校に来させるんです。
でもやることがないから、皆自分の部屋にこもって時間をつぶしている。それで、うち
で勉強しているある先生が、2学期に備えて教材研究をしたいので図書館に行きたいと申
し出たんです。
ところが許可してくれない。
そういうつまらないことをやっているために、せっかくの優秀な人材が失望して次々流
出しているんです。
<野口>
枝葉にとらわれて、教育の根本・本質を見失っていると思うんです。
多くの教師が日頃から、点数やコンクールや大会など、目先の火の粉払いに多忙で疲れ
てしまっているんです。だから教育の成果が上がらない。
<向山>
目先のことばかりで忙しくなるのは、学校が近代的資質を持っていないことも大きいで
すね。
例えば、放課後にグラウンドでサッカーをやっていいのかということが問題になる。
「いいんじゃないか」と高学年の先生は言い、低学年の先生は「蹴ったボールが当たった
ら大変だ」と反論する。
しばらく話し合って、一年生が午前授業で早く帰る日ならいいとなったとします。
1、2年たつと教師もだいぶ入れ替わり、そのことを知らない新しい教師が同じことを
尋ねてくる。
ところが元からいる先生も決めたことを忘れていて、また同じ議論が始まる。
教師の集まりで聞いてみたら、九割方似たような体験をしていますよ。
本来ならその学校のルール集をつくって、何か決まるたびに書き加えていかなければな
らないのです。
企業幹部の方にその実態をお話しすると、会社では考えられないことだと皆さんおっし
ゃいます。
教師は忙しいというけれども、そういうつまらないことで随分時間をロスしていると思
います。
<野口>
そこは私も大事だと思って、校長の時に「学校業務マニュアル」をつくりました。
本にもなってとても好評でしたが、私の次の校長は「そんなものはいらない」と捨てま
した。
2年がかりでつくって、これで3年目からは学校運営もスムーズにいくと思っていたら、
そこでまた振り出しに戻る。これが学校の実態ですよ。
<向山>
そうなんです。だから膨大な時間をロスしているんです。
<野口>
本当に前近代的というかねぇ。
やっぱり問題はリーダーだと思いますよ。大半の学校の校長は保身に汲々として、とて
もそういうことまで頭が回らない。
しかし民間人校長は違います。よし、教師人生最後の5年間に校長として何をなすか、
と本気になってやる。
だからおもしろいわけです。
杉並区立和田中学校では、民間から校長に転身した藤原和博さんが非常に頑張っていら
っしゃいます。
ところが、藤原さんが実践公開をやっても、近隣の校長は見に行かないそうですね。
あれだけ世間から注目されている人の実践を見て、一つでも参考にしようという人はほ
とんどいない。
やっかみですよ。
どうも教育界というのは、優れた人間がはじかれるというか、みんな同じに無難にやっ
ているのがいいというぬるま湯社会なんです。
だから近代化することを好まない。
<向山>
こういうこともありました。
いま、校長や教頭が授業を見に行って先生を5段階評価をする学校があります。
ある小学校に授業がとても上手で、本を何冊も書いている女性教師がいました。子ども
にも親にも大人気で、公開授業をやると教室が超満員になる。
ところが、その先生の評定結果は2だったのです。
理由を聞いてもはっきりしない。
職員室に戻って聞いてみたら、他の先生も全員2だったそうです。
これでは授業評定をやる意味なんかまったくないでしょう。おまけに優秀な教師のやる
気まで失わせてしまって。
<野口>
まったくです。
<向山>
幸い私は、よい校長先生に恵まれました。
素晴らしい先生は何が違うかというと、夢を与えてくれるんです。リーダーである校長
先生次第で、教師は教育の魅力や奥深さに目覚めて、自ら進んで勉強するようになるんで
す。
東北のある県のパチンコ屋は、公務員と教師で持っていると言われているようですが、
理想を抱いて教師になったけれども、その思いを受け止めてくれる校長も仲間もなく、次
第に教職という仕事の意味や志を見失っていくのでしょうね。
野口芳宏さんと向山洋一さんの対談 「教育の志を取り戻せ」 4回目の紹介です。
「TOSS」の代表の向山さんと国語科教育で知られる野口さんの対談。
納得できるところもありますし、それは違うのではと思うところもかなり…。
<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>
ものづくりのまちとも言われる浜松。
山田卓司さんのすばらしい作品を
ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
お近くにお寄りの時は ぜひ お訪ねください。
☆対談「教育の志を取り戻せ」野口芳宏 向山洋一 『致知』2007年9月号 ④
◇上に立つリーダーの責任
<野口>
この間、ある県の教頭会、校長会で講演を頼まれた時に皆さんに聞いてみたんですが、
日本の社会、日本の子どもや若者が、このままでいいとは誰も思っていないんです。
では、家庭教育、学校教育、社会教育のどれが一番悪いかと尋ねたら、9割5分の人が
家庭教育が悪いというんです。
しかし本当にそうだろうか。
ろくな家庭教育もできない人間を育ててきた戦後60年の学校教育の問題点を謙虚に反
省しないと、本当の立て直しはできないと私は思います。
やはり基本は学校教育です。
また教師はそのぐらいの誇りと責任を持って教壇に立つべきです。
ところがいまは、社会を怖がり、親を怖がり、子どもを怖がって、教師に元気がない。
<向山>
上に立つ人間の責任も大きいと思います。
教師は休みが多過ぎるとよく批判されるので、この頃は校長が気にして夏休み中に教師
をやたら学校に来させるんです。
でもやることがないから、皆自分の部屋にこもって時間をつぶしている。それで、うち
で勉強しているある先生が、2学期に備えて教材研究をしたいので図書館に行きたいと申
し出たんです。
ところが許可してくれない。
そういうつまらないことをやっているために、せっかくの優秀な人材が失望して次々流
出しているんです。
<野口>
枝葉にとらわれて、教育の根本・本質を見失っていると思うんです。
多くの教師が日頃から、点数やコンクールや大会など、目先の火の粉払いに多忙で疲れ
てしまっているんです。だから教育の成果が上がらない。
<向山>
目先のことばかりで忙しくなるのは、学校が近代的資質を持っていないことも大きいで
すね。
例えば、放課後にグラウンドでサッカーをやっていいのかということが問題になる。
「いいんじゃないか」と高学年の先生は言い、低学年の先生は「蹴ったボールが当たった
ら大変だ」と反論する。
しばらく話し合って、一年生が午前授業で早く帰る日ならいいとなったとします。
1、2年たつと教師もだいぶ入れ替わり、そのことを知らない新しい教師が同じことを
尋ねてくる。
ところが元からいる先生も決めたことを忘れていて、また同じ議論が始まる。
教師の集まりで聞いてみたら、九割方似たような体験をしていますよ。
本来ならその学校のルール集をつくって、何か決まるたびに書き加えていかなければな
らないのです。
企業幹部の方にその実態をお話しすると、会社では考えられないことだと皆さんおっし
ゃいます。
教師は忙しいというけれども、そういうつまらないことで随分時間をロスしていると思
います。
<野口>
そこは私も大事だと思って、校長の時に「学校業務マニュアル」をつくりました。
本にもなってとても好評でしたが、私の次の校長は「そんなものはいらない」と捨てま
した。
2年がかりでつくって、これで3年目からは学校運営もスムーズにいくと思っていたら、
そこでまた振り出しに戻る。これが学校の実態ですよ。
<向山>
そうなんです。だから膨大な時間をロスしているんです。
<野口>
本当に前近代的というかねぇ。
やっぱり問題はリーダーだと思いますよ。大半の学校の校長は保身に汲々として、とて
もそういうことまで頭が回らない。
しかし民間人校長は違います。よし、教師人生最後の5年間に校長として何をなすか、
と本気になってやる。
だからおもしろいわけです。
杉並区立和田中学校では、民間から校長に転身した藤原和博さんが非常に頑張っていら
っしゃいます。
ところが、藤原さんが実践公開をやっても、近隣の校長は見に行かないそうですね。
あれだけ世間から注目されている人の実践を見て、一つでも参考にしようという人はほ
とんどいない。
やっかみですよ。
どうも教育界というのは、優れた人間がはじかれるというか、みんな同じに無難にやっ
ているのがいいというぬるま湯社会なんです。
だから近代化することを好まない。
<向山>
こういうこともありました。
いま、校長や教頭が授業を見に行って先生を5段階評価をする学校があります。
ある小学校に授業がとても上手で、本を何冊も書いている女性教師がいました。子ども
にも親にも大人気で、公開授業をやると教室が超満員になる。
ところが、その先生の評定結果は2だったのです。
理由を聞いてもはっきりしない。
職員室に戻って聞いてみたら、他の先生も全員2だったそうです。
これでは授業評定をやる意味なんかまったくないでしょう。おまけに優秀な教師のやる
気まで失わせてしまって。
<野口>
まったくです。
<向山>
幸い私は、よい校長先生に恵まれました。
素晴らしい先生は何が違うかというと、夢を与えてくれるんです。リーダーである校長
先生次第で、教師は教育の魅力や奥深さに目覚めて、自ら進んで勉強するようになるんで
す。
東北のある県のパチンコ屋は、公務員と教師で持っていると言われているようですが、
理想を抱いて教師になったけれども、その思いを受け止めてくれる校長も仲間もなく、次
第に教職という仕事の意味や志を見失っていくのでしょうね。
おはようございます^^
面白いですね~ 学校と言う所が垣間見えて^^
by mimimomo (2017-08-09 07:12)
学校の先生、塾の先生、自衛隊OB、商社マン、経営者たちみんな考え方が違うので面白いなぁと感じたことがあります(^^)異業種交流すると刺激になるように思いました。
by ワンモア (2017-08-09 09:15)
mimimomo さん ありがとうございます。
教師聖職論を聞かなくなってからずいぶん経ちますね。
by ハマコウ (2017-08-09 18:02)
ワンモアさん ありがとうございます。
同じ教員でも地域によってずいぶん違います。
小中でもかなり違います。
違っているから面白いとも思います。
by ハマコウ (2017-08-09 18:04)
子供は駅のホームを歩いてはいけません。落ちると
危ないからです。(冗談)・・・・・・
変な教育だなー
火傷をして初めて日の怖さを知った私には全く
理解不能です。
by 笠原嘉 (2017-08-09 22:39)
笠原嘉さん ありがとうございます。
保護する範囲をどこにするか 考えがなかなかまとまりません。
by ハマコウ (2017-08-09 23:38)