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『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)静岡県女子師範学校郷土研究会編 1994年 ⑫ [読書記録 郷土]

今回は、4月15日に続いて、静岡県女子師範学校郷土研究会編による
『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)12回目の紹介です。




静岡県の羽衣出版による、すばらしい本です。


今回も前回に引き続き「塚と墓」にまつわる伝説の紹介です。




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☆『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)静岡県女子師範学校郷土研究会編 1994年 ⑫

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5 祟りと怨霊、妖怪塚と墓


(1)八十松火 (浜名郡神久呂村神ケ谷・現浜松市)

 神久呂村神ケ谷には、昔から八十松という怪火が出現して人を驚かしている。しかも今
もって時には現れるといわれている。


 神ケ谷神田原の水神様のお池から源を発して、神ケ谷の東の谷を南流し、入野村早土の
総氏神様と片葉の葦で有名な一本松の間に出て、それから堀留に通じる運河と佐鳴湖に通
じる川と合流して浜名湖に注いでいる清流がある。


 これを同地ではただ「川」と呼んでいる。


 神ケ谷本村の南方の田の中に「お休み場」という所があり、その東方は高台地で墓地と
なっている。


 この間をその清流が流れているので、墓地に通じる橋を中橋と呼んでいる。


 土地の人の恐れているその八十松火は、この川の下の方から現れて、以前はこの中橋ま
でであったが、現今ではずっと上の方まで上って来るという。


 数十年前、当地の島村某という者が、若い元気にまかせてその正体を見届けようと、あ
る夕方、お休み場まで出掛けた。


 当時そこには4人抱え位の大松が一本あったので、その大木の根に身をひそめて怪火の
出現を待っていたが、なかなか出ないので帰ろうとして、ふと下手の方を見ると、彼方か
ら小さな白い火が動いて来るのが見えた。


 某は、にわかに元気が出て、

「おのれ、正体を見届けて村人を驚かさん」

と息を殺して待っていた。


 怪火は川岸を次第に上に来た。


 そして中橋付近に来ると、不意に方向を転じてお休み場の方に真一文字にとんで来て、
某との距離約2、3間(約3.6~5.4m)まで来ると、また突然に逆戻りをして下
手の方へ走った。


 元気者の島村某も、その火が近づいた瞬間には流石に驚き恐れて、堅く目を閉じて急に
総身がぞっと冷たくなった。


 やがて目を開いた時には付近には火影も見えず、はるか下手の方に走り去った時であっ
たから、やっと生き返った思いで急ぎ逃げ帰ったという。


 現今の古老の間にも、その八十松火を見たものが多いという。


 この八十松火について次のような物語が残っている。




 昔、八十松という小僧が、主人の金を持って某地に使いし、この川の近くで失くしてし
まったので、小僧は大いに驚き思案にくれた結果、ついに主人にその訳を正直に物語り平
身低頭してその罪を謝った。


 それを聞いて主人は大いに怒り叱責したので、小僧は無念やる方なくてついに自殺した。


 その怨霊が、夜な夜なこの川の付近に現れて、先に失くした金子を求めるのである。
                                 (本田みち)


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