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『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)静岡県女子師範学校郷土研究会編 1994年 24 [読書記録 郷土]

今回は、10月17日に続いて、静岡県女子師範学校郷土研究会編による
『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)24回目の紹介です。



戦前に女子師範学校の学生さんがまとめた昔話集です。
大変おもしろく、今読むことができるのは 学生さん達のおかげです。




今回は、「植物に関する話」です。

「浜松の松はざざんざ…」
浜松の「ざざんざ織り」も知られています。



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☆『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)静岡県女子師範学校郷土研究会編 1994年 24

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11 植物の話


(1)蛇つなぎの松 (磐田郡二俣町・現天竜市)
 
 鳥羽山にあったが今は無い。

 昔、ここで大蛇を切ったという。(鈴木とし子)








(2)物見松 (磐田郡二俣町・現天竜市)

 二俣城跡にある。

 これに登って辺りをうかがったという。(鈴木とし子)








(3)野口八幡公園の楠 (浜松市)
 
 浜松には、逃げて勝った徳川家康の遺跡が、300年後の今日も依然として沢山残って
いる。


 そのなかで野口八幡公園の雲立の楠はその随一である。
 

 元亀(1570~1572)の昔である。

 武田勢に追いまくられた彼は、逃げ場に困った結果、この野口の楠の洞穴に入った。


 そうして一心に弓矢の神を念じて追手が発見しないように小さくなって闇の中で眼をキ
ョロキョロしていると、不思議な事には、楠の頂上から白雲がにわかに巻き上がると見る
間に、2、3度くるくると回ると、白髪のご神体と化して天に上った。


 徳川勢は、これは正しく武田勢を滅ぼす機会であるとして、矢庭にときの声をあげて敵
勢中に乱入した。


 家康は涼しい顔をして楠のウロからノソノソと這い出し、進め進めと激励した。


 そのため、武田軍は利あらずと見てさっさと退いた。


 この間に家康は易々と浜松城に入って助かった。


 翌朝、楠の周囲を見ると神馬らしい蹄の跡がはっきり残っていた。


 それで家康はここに八幡宮を祀ったという。 

 一説には楠でなくて、クモの木から白馬に蹄がったご神体が天上したとも伝えられてい
る。


 何にしても巧みに芝居を打って味方を激励した事は事実である。                   
                                (中村歌智子)








(4)さざんざの松 (浜松市)

 浜松の野口八幡神社の東方に「さざんざの松」というのがある。


 今のは何代目かの松で、秋風に枯れ枝が増え、当時をしのぶよすがもなく、長さがわず
かに7、8尺(約2.1~2.4㍍)の松になっているが、祖先は、はなはだ大木であっ
たらしい。


 古老に聞くと、昔は八幡神社の東方約5丁(約545㍍)の所にあったという。


 大風のために倒れたが、不思議にも5丁の距離を幹は空に向かって弓なりに円を描き、
下の八幡神社の近くまでとどいた。


 そして樹身からは再び根を生じたという。


 また、ある古老の話にこんな事がある。

 一代の画聖、狩野元信が、ある時浜松の宿に泊まった。


 その翌日、彼は有名な、さざんざの松を写生すべく根元に到り、写生だけして伝馬町の
旅館に帰った。


 そして、いよいよ名墨をたっぷり筆に含ませて書き上げようとしたが、どうも枝振りが
面白くないので、再びさざんざの松を訪れた。


 松は涼しい顔をして元信をひやかすように、ざんざ、ざんざを続けている。


 写生を開いて見比べるとアッと彼が驚いたのも道理、それは似ても似つかぬ形だった。


 そのため元信は、今度こそはと入念に下絵を書いて宿に帰ったが、何度筆を取っても意
の如くならず、それのみか、例の松はそこらの令嬢が着物を着替えるように毎日枝根を変
えてすまし切っている。


 流石の画聖も彩管を投げて嘆三嘆(嘆きためいきをつき)、神のことは我の及ぶところ
にあらずと、ついに思いとどまったという。


 星移り月変わり、今は何代目かの松が、まさに枯死の嘆きを秋風に訴えている。

                                  (中村歌智子)


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