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「倒れないでくれ!教え子たちよ」  『普通の教師が“普通に"生きる学校―モンスター・ペアレント論を超えて』小野田正利 時事通信社 2013年 より 前半 [読書記録 教育]

今回は、小野田正利さんの
「倒れないでくれ!教え子たちよ」の紹介 1回目、前半です。


学校に対する「いちゃもん」論に詳しい小野田さん。
学校の「しんどい」状況について、教えてくれます。



出版社の案内には、


「学校の先生、保護者のみなさん、『相手が分かってくれない』と思っていませんか?全
 国津々浦々をまわって、先生たちを元気づける講演を行っている、小野田正利・大阪大
 教授が、豊富な事例とともにトラブル回避の方法を伝授! 学校と保護者の間に生じる『ト
 ラブル』や『紛争状況』を、どうやって解決していくか。双方の間の意識の『ずれ』を
 解消するために、互いに何ができるのか。 本来であれば、子どもの成長をともに喜び
 とし、目的とする学校と保護者はどこでボタンの掛け違いをしてしまうのか。『お父ち
 ゃんが学校に怒鳴りこんできたのは、本当は別の理由だった』(『父ちゃんの愛情弁
 当』)。『話がまとまりかけた頃に、校長先生がつい漏らしてしまった不注意な一言で
 …』(「その『ひとこと』で座り直す」)など、豊富なエピソードを基に、学校の先生が、
 生き生きと活躍できる学校環境をつくりあげる秘訣が満載です。」


とあります。



人間同士が直接かかわる「場」。





「好きだからやっている?」


「好きだからやっていられる?」







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☆「倒れないでくれ!教え子たちよ」  『普通の教師が“普通に"生きる学校―モンスター・ペアレント論を超えて』小野田正利 時事通信社 2013年 より 前半

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◇倒れないでくれ!教え子たちよ

□教師の労働の「質」
 
 教育学者として齢を重ね、数十年にわたって学校の実情に触れてきたこ場から、特に最
近感じることは、教職員が疲れ果てているという「表情」だ。


 子どもたちの置かれた状況もしんどくなり、相次ぐ無茶な「教育改革」のオンパレード
で教職員にも「ゆとり」と「のりしろ」がなくなっている。


 苦虫をかみつぶしたような顔と、いつもせかされているという圧迫感は、もう一押しあ
れば雪崩を打って倒れていくような、そんな臨界点に達しているような気がする。


 教員を経験し、大学院を私の下で学んだ者が教育委員会で働いている。





 その教え子が、休暇をもらってゼミに参加してくれた際に「労働の質」について語って
くれた。


 仕事は毎晩11時すぎまでしているが(このこと自体が異常)、

「ゆっくり昼ご飯が食べられる」

「お茶は仕事をしながら飲めるし、トイレに行くことだって難しくはない」

「家に帰れば、開放された気分にもなれる」

ことがうれしいという。




 教員だったときには、昼ご飯は5分でかき込み、トイレに行くこともままならず、いつ
生徒指導の問題で呼び出されるか分からない緊張状態がずっとあったという。




 2006年に行われた40年ぶりの「教員勤務実態調査」は、大いに意味あるものでは
あったが、世間の教職員に対する目はやはり厳しいままである。


 始発や最終電車が満員という、もともと無茶な労働実態が横行する中では、教職員の平
均勤務時問が「11時間」と言われても、


「それで? 自分の父ちやんたちはもっとひどい」


という感覚があり、教員の実情に対する理解は阻まれたままかもしれない。




「小野田先生、教員の労働の質をきちんと訴えないと、世間は理解してくれません。一日
 中緊張状態が続くことの意味を、分かるデータできちんと示すことが必要です」


「なるほど」

と私も思った。


 労働の中身をきちんと示しながら、正しい改善の道筋と展望を示していくことが大切だ
ろう。







 一般企業の他の職種との比較でも、公務員一般職との間でも、なぜ教員の病気休識率が
図抜けて高く、理由も精神性疾患が63%に達しているのか? 




 労働場面での裁量が比較的自由に行われるはずの教職て、それが機能せずに、倒れたり、
危険水準にある予備軍が増え続けているのか?





 もちろん元気に頑張っている教員もたくさんいる。


 とりわけ、大都市部を抱える都府県では、4ケタの教員採用数が、ここ数年続いている
ため、若い先生からの存在が学校を明るくし、子どもたちを活気づけている。


 しかし、独身で、自宅から通い、炊事・洗濯・掃除の心配がない教職員には、多少の頑
張りがきくだろうが、一人暮らしで自活しなければいけない者にとっては、食事は外食中
心、洗濯ものは1週間分をまとめて洗って部屋干し、という日々を送っているように見え
る。





努力や頑張りにも限界がある。

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さうざんバー

教育の現場は疲弊していますね(--;)聖職をはき違えているように感じます。教育者が教育だけできるようになるには、教育者の自己犠牲ではなく、教育者と被教育者の両者相互理解が必要だと思います。
これから日本の教育はどうなるのか、本当に心配です。
by さうざんバー (2019-03-22 18:07) 

ハマコウ

さうざんバーさん ありがとうございます。

教職を希望する若者が少なくなっていると聞きます。
子どもの成長を子どもと共に喜ぶことができる職なのに、子どもと対する時間は減り、それ以外に時間が割かれる現状を何とかしようと、現場も努力しています。ただ、限界があります。行政等の早急な具体的支援を切望します。
10年後の教育界がどのような状況になっているのか、非常に気がかりです。
by ハマコウ (2019-03-22 18:25) 

センニン

こんばんは。
先日『みかづき』の原作を読み、ドラマも視ました。
教師はかつて聖職と呼ばれ、新田次郎は小説を書きました。
昨今の山岳事故の事件などを報道で視ると確かに変わってしまっているのだと強く感じます。
by センニン (2019-03-22 22:06) 

リス太郎

これは面白いです。後半が楽しみです。承認制なので余計なことは排除します。「モンスター・ペアレント論を超えて」の部分が私には後半を読まないとわからないのだと推測しますが、私の持論です。まず基本として我が子(養子であれなんであれ)を育てるのは親(養親であれなんであれ)であり、それから教師と思うのです。自分の教育のデタラメぶりを棚に上げ、どの口がゆうんやこのバカタレ!というのが私の考えです。そして教育委員会についても一家言あるのですが、長文になるため控えます。
by リス太郎 (2019-03-23 01:41) 

ハマコウ

センニンさん ありがとうございます。

人間を相手に一瞬一瞬に判断を要求される職業、常に正しい選択ができるよう努力していますが、難しいことです。ゆとりをもてるようにと心がけています。
by ハマコウ (2019-03-23 05:33) 

ハマコウ

リス太郎さん ありがとうございます。

政治家は、法律を作ったり、指示を出したりすれば状況が良くなると思っているように感じられてなりません。ひとりの人格、行動をかえるように促すのは、大きなエネルギーがいります。子どもの、保護者の、学校を下支えするような具体的な策を望みます。
by ハマコウ (2019-03-23 05:40) 

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