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「現代の現代性-何が終わり何が始まったか」岩波書店 2015年 ③(最終) [読書記録 一般]

「①DSM-Ⅳの表現が変わったこと、②医師に対するマーケティングと、一般の人々に
 対する宣伝を製薬会社が盛んに行ったこと、③メディアに詳細に報道したこと、④困り
 果てた親や教師が手に負えない子どもを何とかしたくて社会に圧力を掛けたこと、⑤A
 DHDと診断された子どもは試験時間が延長され、特別な支援が受けられたこと、そし
 て最後に⑥処方箋の必要な精神刺激薬が、ただ成績を上げたり元気を回復させたりする
 ために広く利用されたことである」  
          <フランセスによる注意欠陥障害について増加の要因6点の指摘>





今回は、3月19日に続いて、
「現代の現代性-何が終わり何が始まったか」の紹介3回目 最終です。




出版社の案内には、


「私たちが生きるこの現代社会で,いま何が終わり,何が始まっているのだろうか.3.11(東日本大震災と原発事故)をはじめとした危機的転換の意味もふまえ,諸論考と座談会
 を通して考える.執筆者は,全編集委員のほか,ジョン・ダワー,西谷修,斎藤美奈子,
 野家啓一,加藤典洋,橋爪大三郎,吉岡斉,斎藤環,広井良典.」



とあります。




今回紹介分より強く印象に残った言葉は…

・「現在の主流は生物学的精神医学」


・「米国精神医学界がDSM-Ⅳを発表した1994年以降米国で一部の精神疾患が急増し
  た。」


・「日本では1999年以降鬱病患者が急激に増えたと言われている
← 1999年日本においてSSRI(選択的セレトニン薬)が導入されたことの影響ではないかといわれている」


・「製薬会社にとってSSRIは魅力的 =  薬価が高い 処方しやすい」


・「統合失調症の早期治療は可能か? 筆者はリスク大と考える」




昨日、高塚熊野神社に徒歩で参拝に行きました。
災害から守る神社、感染による災害がおさまればと思います。

東海道本線高塚駅のすぐ南側です(北側からの写真)。
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周りより数メートル高くなっています(南側からの写真)。
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感染症対策でしょうか、手水舎の柄杓がなくなっていました。
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☆「現代の現代性-何が終わり何が始まったか」岩波書店 2015年 ③(最終)

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5 こころのトポスはどう変わったか 齋藤環
   
□臨床医としてのスローガン

「理論は過激に臨床は素朴に」

     |

 現在の主流は生物学的精神医学    

   

□鬱病はなぜ増えたのか 

 DSM-Ⅳ作成委員長 アレン・フランセス
 
   DSMの功罪について批判的に述べている

           ∥
       
 米国精神医学界がDSM-Ⅳを発表した1994年以降米国で一部の精神疾患が急増した。
        
  「注意欠陥障害」  従来の3倍
        

  「自閉症」     従来の20倍
        

  「小児双極性障害」 従来の40倍           
 

◎フランセスは注意欠陥障害について増加の要因を6点指摘している
      
「①DSM-Ⅳの表現が変わったこと、②医師に対するマーケティングと、一般の人々に
 対する宣伝を製薬会社が盛んに行ったこと、③メディアに詳細に報道したこと、④困り
 果てた親や教師が手に負えない子どもを何とかしたくて社会に圧力を掛けたこと、⑤A
 DHDと診断された子どもは試験時間が延長され、特別な支援が受けられたこと、そし
 て最後に⑥処方箋の必要な精神刺激薬が、ただ成績を上げたり元気を回復させたりする
 ために広く利用されたことである」  



□日本では1999年以降鬱病患者が急激に増えたと言われている
 
      |

 1999年日本においてSSRI(選択的セレトニン薬)が導入されたことの影響ではな
いかといわれている

      ∥

 他の先進諸国も同じ現象     



□1993~1998年 5年間でSSRIを導入したイギリス、スウェーデン、オーストラリ
ア、米国、カナダ、ドイツ、イタリア、フランス、デンマーク、ノルウェー、フィンラン
ド、アイスランドなどの各国で、軒並み抗うつ薬の処方量が増えている

  
 米国 1988SSRIを導入

1987~ 10年間
外来鬱病受診患者は人口1000人当たり0.73人 → 2.33人

      3倍以上に増加 

  
 日本でもSSRI発売以来抗鬱病薬処方は5年間で2倍に増加



◎いずれの先進国でも、SSRI導入後鬱病患者は数倍に急増し鬱病診療に大きな変化
 
          ↑
   
□2つの要因  
 ① 製薬会社のキャンペーン
  
   「うつは心のかぜ」
             
    → その結果は鬱病患者の急増
          

 ② 製薬会社にとってSSRIは魅力的
 
    薬価が高い 処方しやすい

  

□筆者(齋藤環氏)の考えるSSRIの問題点
     
 抗うつ薬の反応率はおおむね60%
 
      完解率は    30%程度

            ∥

 処方量が増えるほど「改善すれども完解せず」という中途半端な状態に留まる患者が急
増するのである

          ↓

 放り出された新規患者の多くが、このような過程を経て慢性化するからこそ、鬱病人口
は蓄積によって増え続けた

          |

 SSRIがなぜ一部の鬱病患者に有効かは謎のまま

          ∥

□コーネル大学 リチャード・フリートマン
       
 最近になってファイザーやサノフィなどの大手製薬会社が神経科学研究施設を閉ざし新
薬の開発もストップしているという

            ∥

 精神疾患を成立させるメカニズムの複雑さに対して身体療法の依拠する原理はあまりに
も単純

            ∥

 精神医学にはあまりにも不確実性が大きすぎる                                   
 

□統合失調症の早期治療は可能か?

 筆者はリスク大と考える


 CBTから「マインド・フルネス」へ
   CBTが圧倒的に優位 認知行動療法
 
   テーラワータ仏教に由来する「マインド・フルネス」
        ルーツはヴィパッサナー瞑想

   マインド・フルネスの脳科学          

批評としての精神分析

   最終目標は多元主義か

   オープンダイアローグ

   対話的多元主義へ     
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コメント 2

リス太郎

我が事なので調べながら注意して読みました。
by リス太郎 (2020-03-23 18:57) 

ハマコウ

リス太郎さん ありがとうございます。

フランセスによる注意欠陥障害について増加の要因6点の指摘を見て、なるほどと感じました。「一般の人々に対する宣伝を製薬会社が盛んに行ったこと」の影響が大きかったのではないかとも思います。
一般に広く知られることにより患者さんが増える、発達障害についてもあてはまるのかもしれません。
by ハマコウ (2020-03-23 20:44) 

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