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「今教育に貫くもの」 向山洋一・門川大作(京都市教育長) 『致知』2007-2  ③(最終) /「東海地震がわかる本」 名古屋大学災害対策室 東京新聞出版局 2003年【再掲載 2012.4】 [読書記録 教育]

今回は、7月28日に続いて、月刊誌『致知』より、向山洋一さんと門川大作さんの対談、
「今教育に貫くもの」3回目の紹介 最終です。


およそ15年前の対談です。
1980年代、向山さんが中心となり教育の法則化運動が若い教師を中心に広がりました。
現在はTOSSとしての運動となり、落ち着いてきています。
その活動について、様々な意見がありますが、わたしには合いません。
しかし、いろいろな考えを知ることは大切だと考えます。


「教育の再生」とはよく言われることですが、
どの時代に「再生」させたらよいのでしょうか。





もう一つ、再掲載となりますが、名古屋大学災害対策室の
「東海地震がわかる本」を載せます。
災害の可能性については常に頭の片隅に置いておきたいですね。


今日から夏休みをつくります。
まずは年休。
雨模様ですのでできることは限られます。





<浜松のオリーブ園>

浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。
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☆「今教育に貫くもの」 向山洋一・門川大作(京都市教育長) 『致知』2007-2  ③(最終)

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◇親の対応次第で子どもの心身はたくましくなる

向山 

 その意味では、いじめに負けない子をつくることもとても大事な視点ですね。もちろん
武道やスポーツを習わせて強い精神力をつくることも必要ですが、私はそれに加えて大切
なのが親の対応だと思うんです。


 
門川

 どういうことですか。


 
向山 

 ある子どもの作文に次のような内容のものがありました。小学校2年生の男の子なので
すが、その子の足の裏にアザがある。友達から「足に汚いものがついている」と言われ、
泣きながら学校から帰ってきてお母さんに「なんで僕の足にへんなものをつけて産んだん
だ」と訴えるんです。するとお母さんはあっけらかんとして「あれはお母さんの子どもの
印なんだよ」と答えるんですね。
 弟二人にも同じようなアザがあって、「地震があったってこの印があれば、お母さんは
すぐに見つけてあげるからね」と得意げに言う母親を見るうちに、悔しさはどこかに飛ん
でいき、「これはうちの子どもという印なんだ」と自慢したくなった」という話です。


 
門川 

 素晴らしい作文ですね。
 


向山 

 普通なら「なんでそんなことを言わせるんですか」と学校や相手の親に食ってかかると
ころを、親の対応いかんでは強い精神力を身につけ、親子の絆が強くなることになるので
す。こういうことを親御さんにはぜひ知っていただきたいと思います。


 
門川 

 いまの子はあまり人と接していないためか、部活動のちょっとした人間関係でもすごく
悩んでしまうようですね。親のほうも「いやなことをされたら全部いじめと思え」という
言い方をしますけれども、これから厳しい国際社会の中で生き抜いていかねばならない子
どもたちが、いやなこと、危険な目に選った時にどのように困難と立ち向かい、乗り越え
るかということを本当は教えないといけないんです。


 
向山

 私がまだ現職の教師時代、ある小児科の先生が「保健室にいつも行っている子は駄目だ
と思われているけれども、そうではない。しょっちゅう擦りむいて赤チンをつけているく
らいでないと、大きな傷の時に防衛体力がつかない。小さな怪我を経験しない子は転倒し
ても手が出ないので、そのまま鼻から落っこちて犬怪我をしてしまう」とおっしゃってい
ました。私もそうだと思います。


 
門川 

 いま家庭が非常に過保護、過干渉になり、一方で放任です。そのへんを学校、地域社会
を含めてどうしていくかが課題なのですが、そこで最近よく言うのが「人間浴」なんです。
人間の力を浴びる。
 


向山 

 海水浴が水を浴びるように、日々の生活の中で人間と触れ合い、その中で成長するとい
う考え方ですね。


 
門川 

 ええ。それで京都市の中学2年生1万人は3300の事業所の協力を得て5日間、いろいろ
な職場体験をしています。あるいは様々な分野の人からゲストティフチャーとして話を聞
いたり、保育所やデイサービスセンターで福祉のボランティアをさせたりしています。
 ある中学校に茶髪で爪に派手なマニキュアを塗った女の子がいたんです。学校にも
  来たり来なかったりで、指導困難な子だったんですが、保育所に願んで職場体験を受
け入れてもらった。担任の先生がなんとか髪の毛だけは黒く染めさせて連れて行きました。
そうしたら、保育士さんがその子を見て「その爪なんですか。子どもに近づかないでくだ
さい」と怒鳴り出したんですね。
 先生が「ああ、これで怒って帰るな」と思ったら、その子、目の前にいる園児を見るう
ちに「爪切りありますか」と言って自分で爪を切って、その保育所で子どもと関わらせて
もらった。そして最後の日には涙、涙だったというんです。
 先生でも切らせられなかった爪を、子どもたちが切らせてくれた。そういうことが実際
に起きるんですね。


 
向山

 まさに人間浴です。





◇なぜ学級崩壊は起きるのか

向山

 これまでの話を踏まえて、門川さんはいまの教育はどのようにしたら再生できるとお考
えですか。



門川 

 最大の課題は学校での学びと家庭生活、社会生活が乖離している点にあると思います。
学びが生きて働く知恵になっていない。だから学ぶモチベーションが高まらない。昔だっ
たら理科で電気のことを学んだら家でコンセントを直してみるとかいろいろなことをやっ
たわけですが、学ぶのは成績を上げるため、いい学校に行くためという発想になると、生
活の中に学びの成果が出てこないんです
 これを打開するにはまず家庭での役割分担や地域ぐるみの体験学習の充実とかから始め
る必要があります。   
 そして、それを実現するために学校、家庭、地域が足りないところを批判し今うのでは
なく、互いに補い合い融合する仕組みをつくるために、それぞれが一歩を踏み出さないと
いけません。
 もう一つ、これは向山さんがご専門ですけれども、先生の専門性、指導技術、指導力を
もっと高めることですね。教師はどうも人の真似をしたがらない。せっかくのいい技術が
あっても広がらない。そこで京都市ではカリキュラム開発支援センターをつくりました。


 
向山 

 家庭教育のほうからお話しさせていただきますと、子どもたちの小学校の6年間は極め
て重要な時期です。にもかかわらず、いま(改正前)の教育基本法には家庭教育の項目が
ない。あるのは学校教育と社会教育であって、社会教育の中に括弧して家庭教育と書かれ
てある。新しい基本法には家庭教育が盛り込まれることになっていますから、それは大賛
成ですね。
 だって、かつては文言に盛り込まなくても家庭教育はしっかり機能していたわけでしょ
う。でもいま小学校入学式の段階から走り回る子がいたり、まさに子捨て状態に入ってい
るわけですから、ここで家庭教育を再建しなくては、これから大変な時代を迎えることは
間違いありません。


 
門川 

 私もそう痛感しますね。
 


向山 

 次に教師の指導力の問題ですが、第二次世界大戦が終わった時、日本の教育界挙げて反
省するんです。「これまで教育技術ばかりにとらわれてきたために日本は戦争をやったん
だ。これから個々の教師に必要なのは一般教養だ」と。そして伝統ある技術、方法を否定
して教養を重視する形になり、それが今日まで続いているわけです。
 言い換えると先生方は学は修めたけれども術は全然学んでこなかった。教える人もいな
かった。そうすると日本中に膨大な数の我流がはびこっているわけです。自分が考えたか
らいいとか真似するのはいやだとか言って基礎的なことさえ学んでいない。その基本なし
に最初から自分でやるわけですから、医学書を読んだばかりの人間に、いきなり外科の手
術をしろと言っているようなものですよ。
 それで現場ではどういう状態が起きるかというと、新卒の教師が来て9割くらいは、2か月で学級崩壊になります。大変な騒乱状態です。



門川 

 実践的な指導力が大切ですね。
 


向山 

 最初の三日間くらいは静かなんです。これは前の担任からの置き土産。よく言うことを
聞くんです。「なんだ私にだってできるじゃないか」「子どもはかわいいな」と思っている
うちに、たちまち手がつけられなくなってしまいます。学級運営においては、給食や掃除
当番にしろいろいろなルールをつくらねばなりません。教室の中では教師の発言が立法作
用です。法律である以上、クラス全員に言わなくてはいけないのに個々に対応してしまう
んですね。ここに学級崩壊の大きな原因があります。
 給食を例に申し上げますと「先生、野菜を残していいですか」と子どもが聞いてくる。
「調子悪いの? できるだけ食べなさい」。次の子がやってきて「野菜残していいですか。
熱があるみたい」「いいよ全部残しても」。もう一人の子が「これ残していい?俺野菜嫌い
なんだ」「いや、頑張って食べなさい」。
 これは3つとも微妙に違うわけです。子どもたちの中に入ると、先生はああ言った、自
分にはこう言ったと法が独立して作用している。給食に限らず持ち物から何から全部そう
です。この一人ひとりの対応で教室はぐちゃぐちゃになってしまうんですね。
 教師は立法作用ですからクラス全員に言わないといけません。「いま太郎ちゃんが来て、
熱があって野菜が食べられないと言ってきた。そんな時は食べなくてもいいよ」。こうい
う言い方をすれば、子どもたちはすっと分かるわけですよ。


  


◇お互いの良いところは素直に認め合う
 
門川 

 一斉授業の大切さですね。これまで個性に重点を置くあまり、40人の子どもにビシッと
一斉授業をするということをあまり重視しなかったわけです。


 
向山 

 そうなんですよ。
 


門川 

 京都市は何をしているかといったら、京都を中心に48の大学と相互の共同研究、ボラン
ティア協定を結んで、いま1800人の学生がインターンシップ等をやっています。それと同
時に教師塾を立ち上げていて550人の塾生に、学校の先生たちがボランティアで講義をし、
塾生は学校現場で素晴らしい授業を盗んでいます。さらに十日間の採用内定者の事前研修
を実施しているんです。


 
向山 

 必要なことばかりですね。
 我々TOSSのほうでも技量検定といいまして、全部で40段階の検定を行っています。
例えば、授業をやる時に紙を見ながらやるというのは問題外。歌舞伎役者が台本を見なが
ら台詞を言うのと一緒ですからね。それから授業を開始して15秒以内に本筋をつかまない
といけない、目線はきちんと子どものほうを向く、指示や説明は極めて端的に短く、とい
うように授業をする時の様々な基準を求めていきます。


 
門川 

 そうやって訓練された教師を育成されているわけですね。
 


向山 

 ええ。先ほど学級崩壊の話をしましたが、崩壊して校長先生から何のサポートもしても
らえずに「おまえ、教員に向いていないから辞めろ」と言われてノイローゼになった先生
がいるんです。そういう人たちも駆け込み寺みたいに何人も来ておられますしね。


 
門川

 再生工場ですね(笑)。
 


向山

 まさにそうです。先生にしてみても、難しい試験を通過して小さい時からの夢を実現さ
せ教師になったのだから、ちょっとくらい失敗して「さあ、辞めろ」なんて、そんなわけ
にはいきませんから。          
 


門川 

 向山さんのいまのお話のようにいいものはどんどん真似したらいいと思うんです。形と
いうのは「型の知(血)」ですから、型を学んでそれに自分の知恵や血液を入れる。その上
で自分のオリジナリティーを発揮したらいい。
 私はいま安倍内閣の教育再生会議のメンバーを務めさせていただいていますが、ここで
は社会全体が子どもたちのためにいま何を為すべきかを熱心に議論しています。多様な意
見が出ており、もちろん一色に染める必要はないと思いますが、私はこれからの地方の時
代、地域社会の中で次の世代を育むことが一番大事にされないといけない。「当事者意識」
と「参画」「公開」をキーワードに志高く行動する。そして、国は各地方の素晴らしい取
り組みを激励し、お互いの長所を取り入れながら、遅れているところには徹底して指導し
ていくのがよいのではないでしょうか。





◇いま子どもたちのために何をしてあげられるのか
 
門川 

 お話をしながら思うのは、教育において重要なことは昔もいまも変わってはいないとい
うことです。そこには何か貫くべきものがなくてはなりませんね。


 
向山 

 教師の基本は何よりも教室の中で教えることです。授業が上達し、その内容も魅力的に
なるように修業を積んでいかないといけません。つまり、子どもたちが授業に集中する、
試験だったらクラスの平均が90点以上を取るという具体的な行為をさすんです。教師がま
ず貫くべきはこれですね。
 ところが、いまの教育現場を見ると、算数の教科書の半分以上を宿題にしているところ
があるんです。「計算問題はみんな宿題でやりなさい」「漢字は家で教えるものだ」と。こ
れはとんでもない話で、教科書にあることをちゃんと教える、しかも魅力的で授業に集中
できるように教えるのが教師の役目です。そのためには教師に技量が求められるんですね。
 だが、教師になった途端、一人前になったと錯覚する人がいるわけです。テニスでも書
道でも一週間、一か月間練習を続けたら人に教えられるかというとそうではない。一所懸
命やっても3年は必要です。教師も同じなんですね。教えるという行為に対して、ちゃん
とプロの目を持ったコーチがついて、3年くらい修業をしてやっと一人前になれる。それ
があってこそ授業の中で様々な感動も生まれます。
 例えば私、跳び箱を跳べない子のほとんどを1、2分で跳ばせることができます。これ
は授業を続ける中で考え出したもので、コツを覚えれば誰でもやることができるんです。
そういう腕を待っているのが教師であって、そうなれるよう自分を磨いてくことが大事で
す。
 それに併せて国家全休としては頑張っている先生方が本当に力を出せるだけの仕組みづ
くりをお願いしたいですね。理念や方法は違っても子どものためを思って、何かをしてい
こうという先生たちの思いは一緒なわけですから。


 
門川 

 教育において貫くべきことはたくさんありますが、いま強調したいのは経済の格差に厳
しさを感じているということです。これが子どもたちの学力や進路の格差につながっては
ならないと。また感性や志の格差も気になります。豊かで学力も高い中で、ひ弱な子ども。
困難な条件の中で希望を失っている子ども。そうした中で私たちがやるべきことは、やは
り一人ひとりを徹底的に大事にすることに尽きます。
 課題のある子がいたら、教師や学校がその背景にまで迫る。学校だけの力で無理なら、
やはり親も変わり、地域も変わらないといけない。要は子どもたちに関わる人々が労を惜
しまず手間暇かけて総がかりでやることが大事です。



向山 

 教育とは手間服かかるものですからね。
 


門川 

 教師の専門性のほうも重要ですが、教師の増員など教育条件の充実も喫緊です。OEC
D、(経済協力開発機構)最下位の日本の教育予算です。京都市では桝本頼兼市長のマニ
フェストに基づき、独自予算で小学校1,2年生に35人学級を導大していますが、さらに
来年度から独自予算で中学3年生の30人学級を実施します。
 教育行政にいる者としては現場主義に徹して、学校、家庭、地域の共汗関係をこれから
一層強化していきたいと考えているところです。


 
向山 

 挑戦が続きますね。
 


門川 

 はい。大事なのは。立ち向かう楽観主義だと思っています。明治維新を成し遂げた先人
たちは西欧との経済力、文化力の格差に愕然とした。だが、悲観主義ではなかった。行動
すれば必ず道が開けるという自信を持って問題に立ち向かっていきました。私たちに必要
なのはこれです。制度が悪いなどと言い訳せずに、現行制度の中でも当事者意識を持って
やれることは何でも精いっぱいやっていきたいと思います。









☆「東海地震がわかる本」 名古屋大学災害対策室 東京新聞出版局 2003年【再掲載 2012.4】

<出版社の案内>
いざという時のために、知っておきたい地震の基礎知識。東海・東南海・南海地震のメカ
ニズム、被害、対策、そして予知の現状を分かりやすく解説。
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◇地下で起きたゆっくり滑り

 2001年7月25日
   日本中の地質学者に衝撃が走った


 国土地理院GPSネットワーク 
   全国1000点の地震観測点 
   1200点の観測点


 
 スロースリップの正体
  プレートと陸側地殻にザラザラ部分(地震)とねばねば部分(ゆっくり)

 大きな地震が近付いてきたことの根拠



 東海地方では年間約4㎝の速度でプレートが陸の地殻の下に
  スロースリップにより頑張り続ける部分が狭まる





◇東海地震って何


 地震3兄弟

  = 東海・東南海・南海



「割れ残り」
   地震空白域



 観測は劇的に変化  
 


 掛川付近水準測量

   - 今村明恒博士の働きかけ



 1978年 大震法  
   予知 - 「発生場所」 「大きさ」 「地刻」
   


 「流れ」 
   異常発見

  → 観測情報・解説情報 

  → 判定会

  → 警戒宣言
 
  → テレビ・ラジオ広報

  → 計画行動



 今村明恒
   東京帝国大学助教授→大森今村論争→教授

   1929年 地震学会 

    1928年 和歌山に南海地動観測所





◇そうなればどうする 地震に強い建物

 耐震性 
   1950 建築基準法 壁量規定

   1971 布基礎義務づけ

   1981 新耐震設計基準 - 壁率見直し = 最低基準
   


 共振とうちわ

   免震 制震(TMD TLD)





◇身の回りの防災

 備蓄 = 保険 
   3日分の水(約1リットル/1人1日)

食糧、衣類(防寒)、常備薬、十円玉



 阪神淡路大震災

   - 死亡者の約9割が圧死

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