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月刊「少年育成」より ⑤-「せめぎあっておりあっておたがいさま」より「そんな話、まだ聞いていなかったよ」冨田富士也 子供教育フォーラム代表 /「子どもの本のカレンダー」鳥越信・生駒幸子 創元社 2009年 ⑤【再掲載 2014.5】 [読書記録 教育]

今回は、5月10日に続いて、
キーワード「月刊『少年育成』」より5回目の紹介です。

両親のわたしたち子どもへの思いを、
年を重ねるにつれ大きく感じられるようになりました。


冨田さんの文章にじいんとしました。




もう一つ、再掲載となりますが、鳥越信さん、生駒幸子さんの
「子どもの本のカレンダー」⑤を載せます。
その日その日の本の紹介です。






<浜松のオリーブ園>

浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。
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<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

  ものづくりのまちとも言われる浜松。
 山田卓司さんのすばらしい作品を 
 ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
 お近くにお寄りの時は ぜひ お訪ねください。








☆月刊「少年育成」より ⑤-「せめぎあっておりあっておたがいさま」より「そんな話、まだ聞いていなかったよ」冨田富士也 子供教育フォーラム代表

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 聞いているようで聞いていない話があるものである。


 また、こちらが積極的に聞き出そうと構えてしまうと、相手も緊張して、
意識するまでもないような話は思い浮かんでこない。


 なにげない会話のなかでこそ聞くことのなかった、ふっと思いついたよ
うな話と出会えるものである。


 話す本人にとってはたわいない話かもしれないが、聞くその立場によっ
ては落ち着ける話であったりする。


 夕食のときに母親と食卓についたときの話である。


 その夜は妻も娘たちも外出していて不在だった。


 私はひさしぶりに母親と二人で食事をとることになった。


 とかく日銭をかせぐために働くだけで戦後ずっと生きてきた母親は手料
理も「ろくにできない」身である。


「わしの料理じゃ、お母さんや子どもたちと違ってうまくもないだろうか
 ら、なにか帰りに店で好きなおかずでも買ってこい。わしは味噌汁とい
 もの煮っころがししか用意していないからな。ビールは冷蔵庫に入れて
 冷やしてあるからな」
 

 こんな言葉を帰りぎわに相談室の電話口で言われてしまうと、なんとな
くわざわざ店に寄ってまでおかずを買う気にはなれない。


「うまくないいもの煮っころがし」があればこそ、私は家庭の経済的破綻
も経験することなく子ども時代を過ごすことができたわけである。


 母親はぶっきらぼうに缶ビールとグラスを私の目の前に置いて、いもを
小鉢にもった。


「自分で缶を開けて飲めよ。わしはお母さん(妻)のように注ぐなんって
 ことはできないからな。おじいさん(夫であり私の父親)にも注ぐこと
 はなかったな。稼ぎが悪いから仕方がなかったけど、とにかく働きづめ
 だった。だからおじいさんには時間がきたら(夕刻)酒だけ出しておい
 て、わしは明日の朝の仕事に出掛ける(行商)準備だった。おじいさん
 も酒と菜っ葉漬けさえ出しておけばそれでよかった。いまの人みたいに
 あれもこれも用意するなんってことはなかったな」


 やはり、ここでも母親と二人で向きあい、気を散らすことなくその話を
聞いていると私の目頭が熱くなってくる。


 両親のその「つつましさ」があればこそ、私は家を出ても送金の心配を
しないですんでいたのだ。


 中学を卒業して一緒に就職した友人たちのほとんどは親に給料をわたし
てこずかいをもらっていた。


 私は全部一人で管理し、自分の名前で貯金もできる身分であった。
 

 食事を終わろうとする母親にまだ酒を楽しんでいる私はその立ちあがる
足をとめようとして話しかけた。


「昔の人は働いたな」


 母親の話のフタをあけるにはこの青菜をかけるのが一番の ″効果″が
ある。


 ただ唐突に言うと、「今の若いものは…」と比較から説教になってしま
い、こちらの心は閉じていく。


 ところが話す相手も二人しかいないようなインターバルのとりやすいこ
んな日は母親も気負いがなく安心して自分と向きあう話ができる。


「そうだな、働いて死んだ。そういえばおじさんも(母親の弟で私にとっ
 て叔父)働きづめで、死ぬときは脳いっ血であっけなかったな。わしら
 ん家はわしの父親も脳いっ血で海で死んでしまったなり沖から伝馬船で
 父親が海端につれてこられたときに母親が海んなかに向かって泣き叫ん
 で行ったのをわしは今もおぼえているな。父親は三十代で、小さかった
 わしは母親に『おじいさん(曾祖父)が代わってくれていたら』と泣き
 ついた。わしの父親と母親は昔の人にはめずらしい大恋愛だった。長男、
 長女で、母親の方が積極的で、婿にきてもらったんだ。でも子どもがな
 かなかできなくて、やっとわしが長女として生まれたんだ。だからわし
 は可愛いがって大事に大事に育てられた」
 

 私にとって初めて聞く話だった。


 母親と四十数年にわたって親子関係をしていながら新たな〃命の継承〃
だった。


 そしてその話を開いて私は母親が八十数歳になる今でも、恋歌が好きで、
それを歌いたくて老人会の旅行に行く理由がわかった気がした。


「そうか、そうするとわしも脳いっ血でぽっくりいってしまうかもしれん
 な。長く世話になって生きているより、その方がいいかもしれんな」


 私はうなずきながらこう話す母親をみて、


「ダメだよ、死んじゃ、まだ聞いておかなければならないことがいっぱいあ
 るんだから…」


と心のなかで叫んでいた。


 親成の人の名をあげ死因をたずね始めると


「あとはよく分からん」
 

と腰をあげる老いたる母親だった。


 いつまでたっても父親でいることよりも息子でいたい私がふがいない。
      (2003.1月号)









☆「子どもの本のカレンダー」鳥越信・生駒幸子 創元社 2009年 ⑤【再掲載 2014.5】

<出版社の案内>
「自分の誕生日が出てくるお話の本が読みたい」九州のとある公共図書館
への子どものリクエストに応えて、1年間366日毎日の日付の入った子ど
もの本を紹介する。「○○ちゃんのお誕生日の本はどれかな?」「次はお父
さんのお誕生日の本を読んでみようか」会話が広がり、自然と本好きに
なる楽しい本。本書は、1996年に、ゆまに書房で刊行されたもののリニ
ューアル版。紹介する本を、現在書店や図書館で入手可能な本に改めた。

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◇5月

 5日 「折り鶴は世界にはばたいた」 うみのしは PHP研究所 原爆


 6日 「せつめいのれきし」 バージニア・リー・バートン 岩波書店 1964年


 7日 「つめたいよるに草之丞の話」 江國香織 理論社 1993年 メルヘン共和国


10日 「戦争の冬」 ヤン・ラルラウ 岩崎書店 1985年 ヒトラーのオランダ侵攻    


13日 「ゴールド・フィッシュ」 森絵都 講談社 1991年


14日 「細菌ってなに」 アイザック・アシモフ 教育社 1982年 ジェンナー


20日 「恐竜公園秘予言ノート事件」 和田登 PHP研究所 1996年


23日 「トキが生きていた」 劉蔭徳 ポプラ社 1992年


26日 「はれときどきぶた」 矢玉四郎 岩崎書店 1980年


28日 「ころんでおきてざぶとん十枚」 林家木久蔵 ポプラ社 1992年


29日 「ルソン助左衛門」 森下研 さ・え・ら書房 1983年


31日 「がんばれ おとうさん」 古世香和子 金の星社 1992年

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コメント 4

tai-yama

父親と話すようになったのは母親が死んでからだったりします。
そして自分の知らない夫婦間の問題とか色々聞いてびっくり
したと言う(笑)。
by tai-yama (2022-05-16 23:13) 

ハマコウ

tai-yamaさん ありがとうございます。
そうですね。両親の関係については知らないことばかりです。
by ハマコウ (2022-05-17 05:36) 

yokomi

「そんな話....」は、とてもいい話ですね。昔の人はよく働きました。我が父、その昔は小山のてっぺんに有る畑で5~7月頃までは午後9時頃まで働いていました。勿論照明は有りませんが、薄暮や月明かりで。なので夕食は父親が戻ってからの午後9時を過ぎることが多く、息子の私は「夕ご飯は喰う時だ(「夕ご飯は9時だ」の意)」とぼやいていました(^_^;)
by yokomi (2022-05-18 23:38) 

ハマコウ

yokomiさん ありがとうございます。
昔の人はよく働きましたね。
畑作業をするようになり、父親の働きの大きさを感じるようになりました。母親が特養に入ってから庭の草が増え、なかなか追いつきません。当たり前だと思っていたことが当たり前でなかったと知る毎日です。
by ハマコウ (2022-05-19 04:04) 

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