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月刊「少年育成」より ⑬-「そんな話、まだ聞いていなかったよ」冨田富士也 子供教育フォーラム代表(連載記事『せめぎあっておりあっておたがいさま』より /「共同浴の世界-東三河の入浴文化」印南敏秀 あるむ 2003年【再々掲載 2011.9】 [読書記録 教育]

今回は、6月7日に続いて、
キーワード「月刊『少年育成』」より13回目の紹介です。


今回は冨田富士也さんの、
連載『せめぎあっておりあっておたがいさま』からです。




わたしの父母、祖父母のこと、わたしたち夫婦のこと、親類のこと等、
二人の子どもに伝えていないことがたくさんあります。
今回「そんな話、まだ聞いていなかったよ」を読み直し、
それらのことを何らかのかたちで伝えていかなければと思いました。


もう一つ、再々掲載となりますが、印南敏秀さんの
「共同浴の世界-東三河の入浴文化」を載せます。
わたしが幼児の頃、家のすぐ近くの道路に沿った畑に、
組の共同風呂があったと聞きます。
隣の組の共同風呂は、小学生の頃まであり、
園児の頃風呂に入れてもらった記憶があります。
寄り合いで集まると、昔はよく共同風呂の昔話を聞きました。
・輪番で沸かし当番があった
・男女混浴で、新婚の女の人はしまいの頃に入った
・遅く入ると、湯がどろどろだった
        など
図書館で本書を見つけ、急いで読んだ記憶があります。
三河から天竜川にかけてのものだったことが分かりました。
わたしのまちも、かつては農漁村地域でした。



<浜松のオリーブ園>

浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。
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<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

  ものづくりのまちとも言われる浜松。
 山田卓司さんのすばらしい作品を 
 ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
 お近くにお寄りの時は ぜひ お訪ねください。




☆月刊「少年育成」より ⑬-「そんな話、まだ聞いていなかったよ」冨田富士也 子供教育フォーラム代表(連載記事『せめぎあっておりあっておたがいさま』より
    
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 聞いているようで聞いていない話があるものである。


 また、こちらが積極的に聞き出そうと構えてしまうと、相手も緊張して、
意識するまでもないような話は思い浮かんでこない。


 なにげない会話のなかでこそ聞くことのなかった、ふっと思いついたよ
うな話と出合えるものである。


 話す本人にとってはたわいない話かもしれないが、聞くその立場によって
は落ち着ける話であったりする。



 夕食のときに母親と食卓についたときの話である。


 その夜は妻も娘たちも外出していて不在だった。


 私はひさしぶりに母親と二人で食事をとることになった。


 とかく日銭をかせぐために働くだけで戦後ずっと生きてきた母親は手料理
も「ろくにできない」身である。


「わしの料理じゃ、お母さんや子どもたちと違ってうまくもないだろうから、
 なにか帰りに店で好きなおかずでも買ってこい。わしは味噌汁といもの煮
 っころがししか用意していないからな。ビールは冷蔵庫に入れて冷やして
 あるからな」
 

 こんな言葉を帰りぎわに相談室の電話口で言われてしまうと、なんとなく
わざわざ店に寄ってまでおかずを買う気にはなれない。


 「うまくないいもの煮っころがし」があればこそ、私は家庭の経済的破綻
も経験することなく子ども時代を過ごすことができたわけである。


 母親はぶっきらぼうに缶ビールとグラスを私の目の前に置いて、いもを小
鉢にもった。


「自分で缶を開けて飲めよ。わしはお母さん(妻)のように注ぐなんってこ
 とはできないからな。おじいさん(夫であり私の父親)にも注ぐことはな
 かったな。稼ぎが悪いから仕方がなかったけど、とにかく働きづめだった。
 だからおじいさんには時間がきたら(夕刻)酒だけ出しておいて、わしは
 明日の朝の仕事に出掛ける(行商)準備だった。おじいさんも酒と菜っ葉
 漬けさえ出しておけばそれでよかった。いまの人みたいにあれもこれも用
 意するなんってことはなかったな」


 やはり、ここでも母親と二人で向きあい、気を散らすことなくその話を聞
いていると私の目頭が熱くなってくる。


 両親のその「つつましさ」があればこそ、私は家を出ても送金の心配をし
ないですんでいたのだ。


 中学を卒業して一緒に就職した友人たちのほとんどは親に給料をわたして
こづかいをもらっていた。


 私は全部一人で管理し、自分の名前で貯金もできる身分であった。


 食事を終わろうとする母親にまだ酒を楽しんでいる私はその立ちあがる足
をとめようとして話しかけた。


「昔の人は働いたな」


 母親の話のフタをあけるにはこの青菜をかけるのが一番の ″効果″があ
る。

 
 ただ唐突に言うと、「今の若いものは…」と比較から説教になってしまい、
こちらの心は閉じていく。


 ところが話す相手も二人しかいないようなインターバルのとりやすいこん
な日は母親も気負いがなく安心して自分と向きあう話ができる。


「そうだな、働いて死んだ。そういえばおじさんも(母親の弟で私にとって
 叔父)働きづめで、死ぬときは脳いっ血であっけなかったな。わしらん家
 はわしの父親も脳いっ血で海で死んでしまったなり沖から伝馬船で父親が
 海端につれてこられたときに母親が海んなかに向かって泣き叫けんで行っ
 たのをわしは今もおぼえているな。父親は三十代で、小さかったわしは母
 親に『おじいさん(曾祖父)が代わってくれていたら』と泣きついた」
 わしの父親と母親は昔の人にはめずらしい大恋愛だった。長男、長女で、
 母親の方が積極的で、婿にきてもらったんだ。でも子どもがなかなかでき
 なくて、やっとわしが長女として生まれたんだ。だからわしは可愛いがっ
 て大事に大事に育てられた」


 私にとって初めて聞く話だった。


 母親と四十数年にわたって親子関係をしていながら新たな「命の継承」だ
った。


 そしてその話を開いて私は母親が八十数歳になる今でも、恋歌が好きで、
それを歌いたくて老人会の旅行に行く理由がわかった気がした。


「そうか、そうするとわしも脳いっ血でぽっくりいってしまうかもしれん
 な。長く世話になって生きているより、その方がいいかもしれんな」


 私はうなずきながらこう話す母親をみて、


「ダメだよ、死んじゃ、まだ聞いておかなければならないことがいっぱいある
 んだから…」


と心のなかで叫んでいた。


 親戚の人の名をあげ死因をたずね始めると


「あとはよく分からん」


と腰をあげる老いたる母親だった。


 いつまでたっても父親でいることよりも息子でいたい私がふがいない。
      (2003.1月号)








☆「共同浴の世界-東三河の入浴文化」印南敏秀 あるむ 2003年【再々掲載 2011.9】

◇印南敏秀
1952年生 
1974年武蔵美大 - 近畿日本ツーリスト - 日本観光文化研究所
 現愛知大学経済学部教授(出版当時) 
   民具学・民俗学
共同浴~銭湯,もらい風呂,共同浴場



◇共同浴場
 … 「仲間意識」 + 「海での共業(顔が見える相手と入る)」

  ① 身体観
   
  ② 折り合い方



◇駒形共同浴場を訪ねて

□共同浴場の組合員
明治41年 
    元銭湯 → 大正6年共同浴場に 磯部村内の駒形組

昭和30年再建


□共同浴場組合員と善光寺講員


□共同浴場での観察



◇共同浴場の発見

□共同浴場を巡る人の輪
  
  ◎ 静岡県側-小杉達氏の調査

  共同浴場のよく見られた地域
    ◎ 東海地方 
        東三河 ~ 天竜川



◇二つの入浴文化の展開

□「フロ」と「ユ」の系譜

   ① フロ ムロ(室) 
      窟あるいは岩屋 - 風呂(石風呂か)

   ② ユ  ユ(斎)  
      潔斎のための沐浴


□入浴文化の地域差 

 宮本常一
    西日本 「風呂に行く」フロ
東日本 「湯に行く」 ユ


□「フロ」周縁の籠風呂



◇入浴文化とエネルギー

□共同浴とエネルギー  
  1/15のエネルギー
江戸時代の湯銭は蕎麦の「もり・かけ」とほぼ同額

□個人浴のエネルギー
鉄砲風呂,子持ち風呂,五右衛門風呂,籠風呂,へそ風呂,長州風呂


□もらい風呂と共同浴場
共同浴場
    明治・大正・昭和前期
       ~ 昭和30・40年代



◇共同風呂成立

□辻風呂から共同浴場
辻風呂 - 辻辻で営業しながら移動する小規模銭湯


□シマと共同浴場
「静岡県史資料編25 民族三」 小杉達氏論文

  東三河 
    「シマ」中心に
シマヤ同士の競争意識 ~ 共同浴場ブーム


□沿海文化と共同浴場


□銭湯から共同浴場



◇共同浴場が衰退した理由

□だれと入るのか
  混浴のところも<経費・手間の軽減>
混浴だと女性特有の陰口や告げ口がなかった

内風呂の普及 =  嫁の力,女性の社会的地位の向上

□共同浴場のエネルギー
   地域開発と共同浴場



◇共同浴場の魅力

□共同浴場と情報  
   情報伝達の場


□顔が見える交流


□子供の頃の記憶

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