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月刊「少年育成」より ⑮-「おれは金をかせぐんだ…」(執筆者、年号数不明) /「どこ吹く風」丸谷才一 講談社 1997年【再掲載 2017.3】 [読書記録 教育]

今回は、6月20日に続いて、
キーワード「月刊『少年育成』」より15回目の紹介です。

執筆者等詳細は分かりません。、
冨田富士也さんの連載『せめぎあっておりあっておたがいさま』
かもしれません。


文章を読んでいると、先輩、後輩の気持ちに共感し、
涙が出そうになりました。



もう一つ、再掲載となりますが、丸谷才一さんの
「どこ吹く風」を載せます。
軽妙洒脱な丸谷さんの文章に憧れています。



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☆月刊「少年育成」より ⑮-「おれは金をかせぐんだ…」(執筆者、年号数不明)
 
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 渦中に身をおくとしがらみを抱え冷静さを失い腹を立てたり相手の真意
を誤解して受けとったりしがちである。


 表現は不適切かもしれないがそんなとき外野席からそのやり取りをみて
いると一人ひとりの優しさや心意気が感じられてくる


 かつては水産の町として一世を風びした地域に講演にうかがった。


 その翌朝移動をいそいでいた私は早目にその地域の海岸線を走る電車に
乗った。


 電車にはすでに男子高校生が何人か乗っていた。


 どの子どもも試験中なのかウォークマンと参考書で早朝から勉強に必死
の様子だった。


 しかし、都会のラッシュでかい間みる悲そう感はない。


 研ぎ澄まされた雰囲気なら私の心も冷えきっていくがけっしてそんなこ
とはない。


 見ると次々と乗車してくる高校生の学校は違っていても軽く声は掛け合
っている。


 同じ幼馴染みでも高校へ進学するとだんだん付き合いも他人行儀になり
がちだが、それほどの極端さは感じられない。


 私は彼ら、また彼女らがいじらしく″外野席″からキョロキョロとみて
いた。


 電車はガタゴトと音をたてて秋のさわやかな風を切り走っていた。


 気がついたら私の関心はかつて中学で先輩と後輩の関係にあったような
二人の高校生のやり取りに向いていた。


 大柄な先輩格の高校生が勉強中の後輩らしき少年にやたらと話しかけて
いた。


 その大柄な高校生はけっして勉強を邪魔しようとしているわけではない
が、話し掛けてはやめ、そしてまた話し掛けるので後輩格の少年はウォー
クマンと参考書に集中できず苦慮しているようだった。


 だが意地悪ではなくかまってほしいというメッセージが先輩格から伝わ
ってくるのかその少年は苦慮している姿をみせまいと余裕ある仕草で相手
していた。


「おっ、そうだよ、おれはさっ、おまえたちが食べるまぐろを獲りにいく
 んだよ」
 

 大柄な少年は片手を電車の窓ぎわにあずけ足を組み胸を張ると″先輩風″
をふかせたいような言い方で勉強を一時中断しつつあったその後輩格の少
年に言った。


 まわりにいる勉強中の高校生も一見、他人事のような表情はしているが
後輩格の少年の集中したい気持ちにいくぶん同情しているようでもあった。


 後輩格の少年が意を決するかのように参考書を閉じて先輩の話を開く体
勢に入ったときだった。


 その向かいにいたやはり後輩らしき男子高校生がその先輩格の高校生に
声を掛けた。


「その魚、俺にください」


 私はこのときこの少年の″友情”をまさに″堪能″させてもらえた気が
した。


 後輩格の少年には「勉強をしたいだろうけど無視しないで立派だな」と
いうメッセージを流しているように思えた。


 また先輩には「がんばっていますね」という激励である。


 大柄な少年は参考書を開いて勉強に集中しているまわりのなかで、自分
に自ら親しく声を掛けてくれたこの少年に嬉しそうな顔をして返事した。


「おっ、おれはさっ、金をかせぐんだ」


 すると彼の隣りで聞く体勢に″完全″に入っていた後輩格の少年が、そ
の強気な言い方に共感したように何度もうなずいた。


 すると先輩格の少年はその場全体を見わたし、また隣りでうなずく少年
を論すようにこう言った。


「人生は金だ。金が大切だ。おれは、おまえたちとは違って…」


 電車の音もあって正確には言い切れないが、このような表現であったと
思う。


 この「…」に私はいろいろな思いを浮かべてしまった。


 子どもたちは中学を卒業し、いろいろな状況を抱え、それぞれの高校へ
進学したのだろう。


 そこには悔しさや、また不安もあったはずである。


 そんな子どもたちがこうして毎朝、同じ電車に乗って決められた駅で途
中下車していくのである。


 しがらみを抱え生活していくとき、たまには強がったりすることもある
だろうが互いの存在を無視しないで認め合っていく姿は尊い。


 この電車に集うここの子どもたちは毎朝、ガタゴト揺れながら、それし
か「優しく生きる」道はないことを学んでいるのではないだろうか。


 しかしそれは参考書を閉じウォークマンをはずしても、けっして人間的
に「遅れをとらない」ことを知っているからであるはずだ。


 原稿〆切に焦っていたが、高校生の会話に車内で執筆することを「一時
中断」し、″外野席″についたおかげで学んだことだった。


 私は水産高校のある駅で下車する大柄な先輩格の彼に唐突にも

「がんばってね」

と言って太目のズボンに手を添えていた。










☆「どこ吹く風」丸谷才一 講談社 1997年【再掲載 2017.3】

<出版社の案内> 
藝もあります学もある、御存知丸谷エッセイ。黙って読めばクスリと笑え
る。天丼の諸問題から孔子伝まで、時には政治家をからかい、時にはスポ
ーツ選手を褒めちぎる、縦横無尽、痛快無比。挿画は勿論、和田誠。


◇日本史再考
政治家は公約を踏みにじる
  → 日本の政治は公約を破ってかまわない

明治維新以来 薩長土肥
  ~ 攘夷をやらず、開国に転じた
 

◇イギリス人得意のもの
  ① スパイ小説 
  ② スパイ 
  ③ 製薬 
  ④ 陸上中距離 
  ⑤ 演技
 

◇四大編集長
①「文藝春秋」    池島信平
②「週刊朝日」    扇谷正造
③「暮らしの手帖」 花森安治
④「ミセス」 今井田勲
 

◇都市的風景
電柱と電線を日本の街から追放しよう
 

◇昔の日本人
二木謙一(國學院大學)史学者
  「昔の日本人は戦争の後で敵味方双方の戦死者の供養をした」

◎ 敵に礼節を尽くした
  近代に入ると弔うことをしなくなった

◎ 昔の日本人に比べて低級になった

  御霊信仰
   = 放っておいたのでは,恨みを呑んで死んだ者の霊が祟る

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