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「月刊少年育成」2003年11月号 / 時を超える「おばさん、ありがとう!」(上)  河合敦 2019年1月15日『中日新聞』朝刊より 【再掲載 2019】 [読書記録 教育]

今回は、かつて大阪少年補導協会より出されていた月刊誌
「少年育成」2003年11月号を紹介します。


このような素晴らしい雑誌を出していた大阪少年補導協会、
そして大阪府、大阪市、大阪商工会議所を立派だと思っていました。
負担も大きかったのでしょう、休刊されてずいぶんの時間がたちました。
子どもの健やかな成長のための大きな努力をこの雑誌から感じます。


少年法改正が大きな話題となってからもう20年以上となるのですね。



もう一つ、再掲載になりますが、河合敦さんの
「時を超える『おばさん、ありがとう!』」を載せます。
「NHK歴史探偵」など、歴史番組で優しそうな姿を拝見するたびに、
この話を思い出します。

わたしも定年退職までの10年間特別支援教室担任をしましたが、
子どもたちの素直さから多くのことを学びました。



<浜松のオリーブ園>
浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。
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<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

  ものづくりのまちとも言われる浜松。
 山田卓司さんのすばらしい作品を 
 ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
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☆「月刊少年育成」2003年11月号

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◇少年法改正一年半を振り返って 細谷泰暢(最高裁事務総局家庭局付)

 H12.12.6「少年法等の一部を改正する法律」交付 → H13.4.1施行
3本柱 
   ① 少年事件等の処分等の在り方の見直し

   ② 事実認定手続きの一層の適正化

   ③被害者への配慮の充実


① 少年事件等の処分等の在り方の見直し
ア 刑事処分可能年齢の引き下げ(少年法第20条1項)
  ・14,15歳の少年につしいても検察官に送致できるようになった

 イ いわゆる原則検察官送致(少年法第20条2項)
・被害者死亡事件は検察官送致決定

 ウ 保護者に関する措置(少年法第25条2項)


② 事実認定手続きの一層の適正化
ア 裁定合合議制度(裁判所法第31条の4第2項)

イ 検察官及び弁護士である付添人が関与する審理(少年法第22条の2,3)
  ・重い罪の場合 公告受理の申し立て

 ウ 観護措置期間の延長等(少年法第17条3,4,9)
    ・4週間 →  8週間  「特別更新」相当な理由有る場合
・異議申し立て
    
 エ 保護処分終了後における救済手続きの整備


③ 被害者への配慮の充実 
ア 事件記録の閲覧及び謄写

イ 被害者からの意見の聴取

ウ 審判結果等の通知



◇大沢孝征

 少年被害者支援組織作りのきっかけ  
   少年法改正論者

 改正少年法実施についての周囲の反応 
   検察庁に少年部を 
   送致率 20%台→40%超







☆時を超える「おばさん、ありがとう!」(上)  河合敦 2019年1月15日『中日新聞』朝刊より 【再掲載 2019】

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 私は今、歴史作家、歴史研究家として活動しているが、もともとは高校の日
本史の教員になるのが夢で、1988年、念願かなって東京都の教員採用試験に
合格した。


 翌年4月に配属されたのは町田養護学校(現町田の丘学園)。


 ただ、期待とは裏腹に、そこでは授業で日本史を教えることはかなわなかっ
た。


 それどころか、いきなり高校1年生を受け持った。


 クラスの生徒は全員で10人、担任は3人のチームティーチングだった。


 摂食補助や排泄補助など初めてづくしでとまどうことばかりの毎日が始まっ
た。



 2年目の春、クラスで小田原(神奈川県)へ遠足に出かけた。この時、私は忘
れられない経験をした。


 昼食に、混み合っている食堂に入ったときのこと。


 年輩の女性店員が注文を取りに来たが、字の読めない生徒が多く、メニュー
に写真が付いていないので、なかなか決まらない。


 業を煮やしたのか、店員はプイと向こうへ行ってしまった。


 忙しいのはわかるが、その態度に腹が立った。


 ようやく注文が決まり、別の店員に頼んだ。


 待っている間、押し入れの奥に座布団があったので、生徒に配り始めたとこ
ろ、先刻の年輩の店員が血相を変えてやってきて

「これは使わないでください!」

と私からひったくり、別の場所から持ってきた座布団を投げつけるような乱暴
さで生徒たちに渡したのだ。



 さすがに頭に来て、一言いってやろうと口を開きかけたその時、座布団を受
け取った勇太(仮名)が、にっこりと店員に笑いかけて

「おばさん、ありがとう!」

と言ったのだ。


 
 一瞬、私は体が動かなくなった。


 すると、ほかの生徒たちも「ありがとう!」と言い、言葉を発することがで
きない生徒は感謝の気持ちを込めて手を合わせている。



 「だれかに、なにかを、してもらったら、ありがとうと、いいなさい」



 それは、私がいつも生徒たちに教えていることだった。


 われに返った私は、自分の短気を深く恥じた。


 それまで乱暴な態度をとっていたあの店員も、この言葉を聞いて人が変わっ
たように、よく世話をしてくれ、生徒たちといろいろと話し、帰り際には見送
りにまで出てくれたのだ。



 勇太の一言が、帰りの列車の発車時間が迫って焦る私や忙しさで苛立ってい
る店員の心を、一瞬にして正気に立ち返らせてくれたのだ。


 何とこの子たちから学ぶことが多いことか。


 この子たちとともに生きている自分が幸福だと思った。


 そして、この子たちが、心から好きになったのだ。


 この体験を、多くの人に知ってもらいたくて91年、「NTTふれあいトーク
大賞」というエッセーの公募に、「おばさん、ありがとう!」と題して出した
ところ、優秀賞をいただいた。


 24歳の時に書いた文章なので拙いものだが、鮮烈な感動は今でもよく覚え
ており、私の中では作家活動の出発点となる記念碑的受賞だった。


 しばらく前、民放の「ぶっちゃけ寺」というお坊さんのバラエティー番組
に、歴史解説者として出演させていただいた。


 司会は爆笑問題と阿川佐和子さんだが、実は「NTTふれあいトーク大賞」
の選考委員に、阿川佐和子さんがいた。


 阿川さんに

「あなたのおかげで作家になることができました」

と告白したところ、はじめは奇妙な顔をされていた阿川さんだったが、事情を
説明すると、大変喜んでくださった。



 30年後にこうした日が来るとは、人生というのはつくづく「縁」だなと思う。



◇河合敦(かわいあつし)
 歴史作家、多摩大客員教授。1965年生まれ、東京都出身。
 早稲田大大学院博士課程取得満期退学(日本史専攻)。
 91年郷土史研究賞優秀賞(人物往来社)、2018年雑学文庫大賞(啓文堂書店)
を受賞。
 主な著書に『逆転した日本史』(扶桑社新書)、『日本史は逆から学べ』(光文
社知恵の森文庫)など。
 「世界一受けたい授業」などテレビ出演も多数。

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