非行の予防学(3)「予防的な家族支援」 佐々木光郎 静岡英和学院大学教授 月刊『少年育成』より ① /「日本の歴史を読み直す」網野善彦 筑摩書房 1991年 ⑤【再掲載 2015.10】 [読書記録 教育]
今日は9月21日土曜日です。
今回は、月刊『少年育成』誌(年・号数不明)より、佐々木光郎さんの
「非行の予防学(3) 予防的な家族支援」の紹介 1回目です。
『少年育成』誌が休刊となったのは2011年。
執筆されていた方々は、教育界でよく知られた方が多く、
たくさんの情報をいただくことができただけに、今でも惜しく思っています。
もう一つ、再掲載になりますが、網野善彦さんの
「日本の歴史を読み直す」⑤を載せます。
☆非行の予防学(3)「予防的な家族支援」 佐々木光郎 静岡英和学院大学教授 月刊『少年育成』より ①
前号までは,子どもが問題行動(非行)に陥る可能性を減少し,かりに困った
行動があったとしても程度が軽く回復が容易となるように,幼児からの子育て
のプロセスにおいて,予防的な家族支援の大切さを述べた。そこで,今号では
非行のリスクを少しでも和らげる家族への支援について触れる。
◇家族支援の理由
幼少の時から,いつも親に叱られ,食事や衛生面の世話など養育のネグレク
トがある時,子どもの心とからだへの影響は大きい。
長じて,思春期になると,子どもは親(大人)に対して抱く不信感が根強く
「どうせオレはいらない子だ。だめな人間だ」
と自分を見下す。心も落ち着かない。
「家が面白くない」などと家出を行ったり,暴力や性的な逸脱などの問題行
動の大きな背景となっている。
虐待と少年非行の相関関係はきわめて高いのである。
親に目を転じると,生活の困窮家族問の不和など多問題を抱えており子ども
のことに構う余裕がない。
次の事例は私のかつての非行臨床(試験観察)のケースである。
<事例1>
中学2年生の洋介くん(仮名)は,1年生の2学期から,「あそび・非行」型の
不登校が続いている。
父母は小学校1年生の時に離婚したので,今は父と暮らしている。
父は失職の状態が長く続く。父は朝食を摂らない。
洋介君も不規則な生活をしており,昼頃起きてはいつでも好きな物を勝手放
題に食べる。
この家族は近隣だけではなく,親族からも呆れられている。
父は母と別れてからは酔うと,
「お前(洋介くん)のために苦労している。お前はいらない子だ」
と怒鳴ったり殴ったりしてきた。
洋介くんは小学生の時から,自分の意に合わないと乱暴するので,周りの子
どもたちとのトラブルが絶えなかった。
面接では,「僕には心配する人(親)はいないよ」と寂しく言う。
この家族を見ていると,保育園の園児から小学生の時期に非行を生み出す
危険性をはらんでいる。
この時,親がいろいろな人々とつながりを持てる柔軟さがあれば,「閉ざされ
た家族」にならなかったように思う。
一般に,親から無条件の愛情を受けた子どもは,自分を大切にして自尊感
情も高く他者の尊厳も尊重する。逆に,そうでなかった子どもの場合は,将来,
結婚し子どもが生まれたとしても,「わが子の愛し方が分からない」という。
今の子どもはいずれ大人になって自分の家庭を持つ存在である。
ということは,現在,親から子育ての知恵やスキルを学習している。
理不尽な虐待を受け続けたら,「自分もそのように育ってきた」からと言って
自分の暴力を肯定するだろう。世代間の「負の伝播」を防ぐためにも,子育て
家族へのサポートは必要なのである。
☆「日本の歴史を読み直す」網野善彦 筑摩書房 1991年 ⑤【再掲載 2015.10】
◇非人
11世紀末
身よりのない人や重病人が,ケガレを清めることを職能にする人々の集
団として非人と呼ばれるようになっていった
- 西日本広範囲に
非人 京都・清水坂が拠点
「宿」 → 戦国時代に「夙」
本宿 … 興福寺・春日神社と結ぶ大権威
末宿 … 各地域に散在
長吏 … 長者
清水寺 犬神人(いぬじにん) 比叡山・祇園社
○ 葬送(死体を乗せる輿の管理)
死者と共に葬られる様々な物品を収入としてとる権利
○ 罪を犯した人の住宅の破却
罪穢の清め
○ 胞衣(えな)の処理
◎ 様々な形のケガレ清めるのが集団の職能
◇特異な力への畏れ
非人 … 何らかの理由で平民の共同体の中で住めなくなった人々
(身よりのない人・捨て子・身障者・らい者)
病や障害が重くてあまり動けない人
= 乞食に
乞庭(乞食の縄張り)
芸能(犬神人の職能)
祇園祭 - 鉾を持って先頭に
◎ 芸能により世の中を清め千秋万歳を祈る
ケガレへの恐怖 ← 非人が清める特異な力
非人は神人・寄人・神仏の直属民
乞食もケガレを清める特異な能力を持っていたとされる
◎ 非人・犬神人は他の職能民と同じく神人・寄人であった
◇神仏に直属する「非人」
非人は職能に誇りを持っていた
= 清めの仕事
非人・犬神人も他の神人と同じだという意識を持っており主張した
14世紀までの非人
平民とは区別されていた
下人(奴婢)とも違う
◎ 神仏の奴婢として聖別された聖なる方向に区別された存在で
あり,時に畏怖,畏敬される一面もあった
◎ ケガレを清める力を持つ聖別された職能民
今回は、月刊『少年育成』誌(年・号数不明)より、佐々木光郎さんの
「非行の予防学(3) 予防的な家族支援」の紹介 1回目です。
『少年育成』誌が休刊となったのは2011年。
執筆されていた方々は、教育界でよく知られた方が多く、
たくさんの情報をいただくことができただけに、今でも惜しく思っています。
もう一つ、再掲載になりますが、網野善彦さんの
「日本の歴史を読み直す」⑤を載せます。
☆非行の予防学(3)「予防的な家族支援」 佐々木光郎 静岡英和学院大学教授 月刊『少年育成』より ①
前号までは,子どもが問題行動(非行)に陥る可能性を減少し,かりに困った
行動があったとしても程度が軽く回復が容易となるように,幼児からの子育て
のプロセスにおいて,予防的な家族支援の大切さを述べた。そこで,今号では
非行のリスクを少しでも和らげる家族への支援について触れる。
◇家族支援の理由
幼少の時から,いつも親に叱られ,食事や衛生面の世話など養育のネグレク
トがある時,子どもの心とからだへの影響は大きい。
長じて,思春期になると,子どもは親(大人)に対して抱く不信感が根強く
「どうせオレはいらない子だ。だめな人間だ」
と自分を見下す。心も落ち着かない。
「家が面白くない」などと家出を行ったり,暴力や性的な逸脱などの問題行
動の大きな背景となっている。
虐待と少年非行の相関関係はきわめて高いのである。
親に目を転じると,生活の困窮家族問の不和など多問題を抱えており子ども
のことに構う余裕がない。
次の事例は私のかつての非行臨床(試験観察)のケースである。
<事例1>
中学2年生の洋介くん(仮名)は,1年生の2学期から,「あそび・非行」型の
不登校が続いている。
父母は小学校1年生の時に離婚したので,今は父と暮らしている。
父は失職の状態が長く続く。父は朝食を摂らない。
洋介君も不規則な生活をしており,昼頃起きてはいつでも好きな物を勝手放
題に食べる。
この家族は近隣だけではなく,親族からも呆れられている。
父は母と別れてからは酔うと,
「お前(洋介くん)のために苦労している。お前はいらない子だ」
と怒鳴ったり殴ったりしてきた。
洋介くんは小学生の時から,自分の意に合わないと乱暴するので,周りの子
どもたちとのトラブルが絶えなかった。
面接では,「僕には心配する人(親)はいないよ」と寂しく言う。
この家族を見ていると,保育園の園児から小学生の時期に非行を生み出す
危険性をはらんでいる。
この時,親がいろいろな人々とつながりを持てる柔軟さがあれば,「閉ざされ
た家族」にならなかったように思う。
一般に,親から無条件の愛情を受けた子どもは,自分を大切にして自尊感
情も高く他者の尊厳も尊重する。逆に,そうでなかった子どもの場合は,将来,
結婚し子どもが生まれたとしても,「わが子の愛し方が分からない」という。
今の子どもはいずれ大人になって自分の家庭を持つ存在である。
ということは,現在,親から子育ての知恵やスキルを学習している。
理不尽な虐待を受け続けたら,「自分もそのように育ってきた」からと言って
自分の暴力を肯定するだろう。世代間の「負の伝播」を防ぐためにも,子育て
家族へのサポートは必要なのである。
☆「日本の歴史を読み直す」網野善彦 筑摩書房 1991年 ⑤【再掲載 2015.10】
◇非人
11世紀末
身よりのない人や重病人が,ケガレを清めることを職能にする人々の集
団として非人と呼ばれるようになっていった
- 西日本広範囲に
非人 京都・清水坂が拠点
「宿」 → 戦国時代に「夙」
本宿 … 興福寺・春日神社と結ぶ大権威
末宿 … 各地域に散在
長吏 … 長者
清水寺 犬神人(いぬじにん) 比叡山・祇園社
○ 葬送(死体を乗せる輿の管理)
死者と共に葬られる様々な物品を収入としてとる権利
○ 罪を犯した人の住宅の破却
罪穢の清め
○ 胞衣(えな)の処理
◎ 様々な形のケガレ清めるのが集団の職能
◇特異な力への畏れ
非人 … 何らかの理由で平民の共同体の中で住めなくなった人々
(身よりのない人・捨て子・身障者・らい者)
病や障害が重くてあまり動けない人
= 乞食に
乞庭(乞食の縄張り)
芸能(犬神人の職能)
祇園祭 - 鉾を持って先頭に
◎ 芸能により世の中を清め千秋万歳を祈る
ケガレへの恐怖 ← 非人が清める特異な力
非人は神人・寄人・神仏の直属民
乞食もケガレを清める特異な能力を持っていたとされる
◎ 非人・犬神人は他の職能民と同じく神人・寄人であった
◇神仏に直属する「非人」
非人は職能に誇りを持っていた
= 清めの仕事
非人・犬神人も他の神人と同じだという意識を持っており主張した
14世紀までの非人
平民とは区別されていた
下人(奴婢)とも違う
◎ 神仏の奴婢として聖別された聖なる方向に区別された存在で
あり,時に畏怖,畏敬される一面もあった
◎ ケガレを清める力を持つ聖別された職能民
網野善彦の本は何度も読み直す価値がありますね。
by 駄洒落好きな庭師 (2024-09-22 16:09)
駄洒落好きな庭師さん ありがとうございます。
網野さん独自の視点からの中世史、
大変おもしろくわたしは読むことができました。
by ハマコウ (2024-09-22 21:31)