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「京都のおねだん」 大野裕之 講談社現代新書 2017年 ① /『子どもから大人になれない日本人』深谷昌志 リヨン社 2005年 ②(後半)【再掲載 2016.8】 [読書記録 一般]

今日は11月3日、日曜日です。


今回は、大野裕之さんの
「京都のおねだん」1回目の紹介です。


大野さんは、劇作家、日本チャップリン協会会長として知られます。



出版社の案内には、

「お地蔵さんの貸出料は3000円、史上初の抹茶パフェは1080円、では花
 代は?謎めく『おねだん』に京都人の思考を解読する快著なぜこれがこ
 んな高いのか、あんな安いのか、なんで無料なのか、そもそもあんなも
 のになんでおねだんがつくのか――
 大学進学以来、京都住まい二十余年。往々にしてそんな局面に出くわし
 た著者が、そんな「京都のおねだん」の秘密に迫る。
 そもそも『おねだん』の表示がされていない料理屋さん、おねだん『上
 限なし』という貸しビデオ屋、お地蔵さんに生ずる『借用料』。
 そして究極の謎、花街遊びにはいくらかかる?
 京都人が何にどれだけ支払うのかという価値基準は、もしかしたら京都
 を京都たらしめているゆえんかもしれない。
 京都の『おねだん』を知ることは、京都人の思考や人生観を知ることに
 つながるはず。2015年サントリー学芸賞芸術・文学部門を受賞、気鋭
 のチャップリン研究者にして『京都人見習い』を自称する著者による、
 初エッセイ。」

とあります。


7年前の「お値段」。今はどれくらい上がっていることでしょうか。


今回紹介分から強く印象に残った言葉は…

・「おもてなしとは単なる『サービス』ではなくて、もてなす方ともて
  なされる方との、心と心の通い合いだろう」


・「大体料理というのは関西料理のことをいうのである。関東のは料理
  ではなくおかず、つまり飯のおかずなんだ‥」 古屋徳兵衛氏


・「抹茶パフェの発明者は大徳寺の近くの紫野生まれの長竹俊三さん」



もう一つ、再掲載になりますが、深谷昌志さんの
「子どもから大人になれない日本人」②を載せます。



☆「京都のおねだん」 大野裕之 講談社現代新書 2017年 ①

1.jpg

◇プロローグ
<チャップリンの定番>
  1936年と1961年の2回京都に
    1936年 麩屋町御池の柊家旅館 1818年創業
          質実な品格 「万事控目」
  
  70年前の生け花 
    2006~2009 チャップリン○○シンポジウム
      娘のジョゼフィン息子のユージーンら柊家に宿泊
      ジョゼフィン
「…柊家は他とは比べものにならない。再考です。」
チャップリンの秘書 
      高野虎市 日系人 フランク・ヨネモリ
    柊家旅館
     ※一泊2食付き 32000~90000円(以下、値段は初版当時)

  ◎ おもてなしとは単なる「サービス」ではなくて、もてなす方と
   もてなされる方との、心と心の通い合いだろう。



◇食のおねだん(1)

<料理のおねだん 2万5千円から>

  文豪の書  
  大阪市立茨木高校  
      川端康成の母校(著者も) 正門脇に石碑
   
  京都のあちこちに文人、芸術家の筆による店の看板
 
  浜作のこと
    祇園下河原、板前割烹「浜作」 看板は川端康成  
 初代:森川栄
       カウンター割烹のパイオニア
    写真
   -母校の揮毫 浜作 古美術「柳」 佐々木酒造「古都」のラベル

  チャップリンの大好物 
  チャップリンも浜作の味を愛した
     三代目は孫のチャーリー・シストヴァリスを招待しウズラを
    調理
 
  料理とおかず 
  古屋徳兵衛(デパート松屋社長)
「大体料理というのは関西料理のことをいうのである。関東の
     は料理ではなくおかず、つまり飯のおかずなんだ。天ぷら、
     ウナギ、そばのだし汁、江戸の食べ物の代表のことを考えて
     み給え」(『京の路地裏』)
      - ◎ 料理とは京・大坂のものらしい 
 
  「古都の味 日本の味 浜作」 
     ※ カウンターで2万5千円から


<抹茶パフェのおねだん 1080円>
  先斗町の「茶香坊」
  「茶香坊 長竹」の抹茶大福のおいしさ
 抹茶パフェの発明者
    長竹俊三さん 大徳寺の近くの紫野生まれ
     呉服屋 
      → 木屋町「ワインリバー」バーテンダー2年間 
        茶商との出会い
    茶商の思い 
      バーテンダーの経験を生かして若者も親しめる「茶の世界」
     をつくってほしい  
→ 長竹さんがさまざまなアイデア
     「抹茶ミルク」「抹茶ゼリー」「抹茶わらび餅」「抹茶あんみつ」 
 ◎ 最大のヒットが1972(昭和47)年「抹茶パフェ」

  抹茶あれこれの今
  茶商と二人で抹茶パフェを生み出した店は茶商の子どものうち
   の一人が経営権
   → 長竹さんは独立 1999年 「長竹」  
  長竹さんはあくまでお茶会で使える宇治の最高級の抹茶
      だけを使う
      ※ 抹茶パフェ 1080円  抹茶大福(予約)6個で1300円






☆『子どもから大人になれない日本人』深谷昌志 リヨン社 2005年 ②(後半)【再掲載 2016.8】

[出版社の案内]

子ども問題研究の第一人者である著者が膨大なデータを元に、現代の子
どもと親との関わりを検証。育児に関わらない父親、子どもを過剰に庇
護する母親、親に依存する子ども … 社会秩序の崩壊と大人が消失し
てしまった現代日本のこれからの新しい大人像を考える!

1.JPG

◇大人世代の生き方

 これまでふれてきたように、大都市を中心に伝統的な社会構造が崩壊
しているので、大人が成立する基盤が失われている。


 そして、これからの社会では、長幼の序もなく、大人だからといって、
尊敬されることはないように思われる。


 したがって、大人を目指すことはできない。


 とりあえず、「大人らしく」を意識からのぞくことが大事になる。そ
うだとしたら、大人世代はどうしたらよいのか。



① 年齢を忘れよう

 - これまでの社会では、長幼の序をふまえ、その年齢らしさという
  コンセプトがあった。「40歳で惑わず」とか 「還暦」がその代表
  例である。


  しかし、これからは年齢を忘れよう。


  いくつになっても、思い立ったらチャレンジすればよい。


  チャレンジしている人は、何歳でも青春の真っ只中にいる。

 

② 「らしさ」を忘れよう  

 - 忘れるのは年齢だけではない。

   男女差もそうだが、銀行員らしく、教師らしくも世界を狭くして
  いる。

  「らしい」世界に入ってしまうと、それ以上の発展はない。職場を
 離れたら、「らしさ」の衣を脱ぐ。それだけで、柔軟な思考が生まれる。


 
③ 好奇心を持って

 - 何でもよいから、疑問を持とう。そして、子どものような好奇心
  を大事にしよう。


  知りたいと思えば、さきへ進もうとする。さきへ進む内に、道が大
 きく広がり、そこから、新しい人生が始まる可能性がある。



④ 自分の個性を作る

 - 情報化社会になると、メディアの流れのままに好奇心を移してし
  まう人が少なくない。
 

  マイノリティーの世界でよいから、自分のスタンスを大事にしてい
 こう。


  それが、個性を作る可能性を強くする。



⑤ 柔軟なネットワークを作ろう 

 - これからの社会では、人とのつながりが大事になる。 

 
  年齢や性別、職業を超えて、さまざまな人とのネットワークを大事
 にしよう。

 
  そうしたネットワークが大きな財産になる。



⑥ 未来を信じよう 

 - 年齢を重ねるとさきが見えてしまう。そのため、努力することを
  やめてしまう。

 
  未来を信じて、明日に向かい、一歩進む。そして、次の日もまた一
 歩進む。そうした蓄積の上に、明るい未来が開けてくる。


  こうした感じで、一人一人が、「らしさ」の殻を捨てて、意欲的に
 自分の生き方を探る。

 
  そして、自分の世界を築く。そうした成熟した人たちが増えれば、
 市民型の社会が成立する。


  これまでのような長幼の序的な秩序に支えられた大人ではなく、年
 齢や性別、地域性などを超えて、柔軟なネットワークで社会が構築さ
 れ、そうした社会をリードする多様な新しい大人像が誕生しよう。


  これは、日本の社会が年功序列型の固定された秩序から、それぞれ
 が自由に生き方を模索する柔軟な市民型の社会へ変革することを意味
 する。


  そうした市民型の社会に脱皮できるかどうかで、これからの日本社
 会に希望を持てるかが決まってくる。


  それだけに、大人たちがそれぞれの個性をどう育てていくのか。そ
 して、そうした個性を社会的にどう認め合っていくのかが重要になる
 と考えられる。
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