『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻) 静岡県女子師範学校郷土研究会編 1994年 ⑦ [読書記録 一般]
今回は、1月30日に続いて、静岡県女子師範学校郷土研究会編による
『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)7回目の紹介です。
静岡県、郷土の出版社、羽衣出版。
素晴らしい本を出しています。
今回は、「竜宮に行った神主様」の話です。
自分に都合よく考えるな、という戒めでしょうか。
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☆『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)静岡県女子師範学校郷土研究会編 1994年 ⑦
2 池、淵、泉・井戸などの話 続き
(9)竜宮に行った神主様 (磐田郡二俣町・現天竜市)
ある日の事、椎ケ脇神社の神主様は、神社の裏へ大鉈を持って柴刈りに行きました。
ところが、ふとしたことで、大鉈を大蛇が住んでいるという椎ケ脇の淵へ落としてしま
いました。
淵をのぞいて見ますと、幾千丈(千丈は約三千m)とも知れない淵に落ちた大鉈が、すぐ手が届きそうに水の上に浮いて見えます。
そこで神主様は、崖から下りて行ってその鉈を拾おうとしましたが、そのはずみに神主
様の体は、深い深い淵に引き込まれてしまいました。
そして、ふと目がさめて見ますと、そこは美しい竜宮でありました。乙姫は
「私は、鉄が嫌いですから、鉈を持って早くお帰りなさい。これからは決して、この椎ケ
脇の淵に鉄などを入れないようにして下さい。またこうして竜宮が椎ケ淵にあるなどと は、決して誰にも言ってはなりません。この事を守って下されば、お前の欲しいと思う
ものは入用の時、何でも貸して上げますから、この淵ぎわに来てお言いなさい」
と言いました。
そこで神主様は喜んで帰りました。二、三日たつと、神主様の家に、その国の殿様が4
0人の家来を連れて泊まりにおいでになりました。
珍客の事ですから、神主様は、たくさんのごちそうをして上げようと思いましたが、大切なお膳やおわんがないので困りました。
神主様は、さっそく淵へ行って「竜宮の乙姫様、なるべく上等のお勝とおわんを40人
分貸して下さい」と頼みました。そしてしばらくして行って見ますと、目のさめるような
きれいなお膳とおわんが、40人前並べてありました。その食器でごちそうを食べた殿様
は、非常に満足され、お帰りの時には、神主様に、おほめの言葉やたくさんのごほうびを
下さいました。
その後も、神主様は、絹の美しい夜具や、ある時は臼と杵、または重箱等も借りたこと
がありました。
でも、こうした喜ばしいことは人に知らせたいものですが、残念な事に口止めされていましたから、いろいろ考えた未に、
「言うなという事は、口に出して言うなということであるから、文字で知らせることは差
しつかえなかろう」
と、ついに友達を家に呼んでこのことを知らせてしまいした。
友達は、この不思議なことを聞いて非常に喜びました。しかし、約束を破った神主様は
その後、何にも借りる事が出来ず、その上に筆を使って人に知らせたため、文字を書くことが誰よりも下手になったといいます。
それで今でもこの淵を、お碗かせの淵といっているのです。
(鈴木とし子)
『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)7回目の紹介です。
静岡県、郷土の出版社、羽衣出版。
素晴らしい本を出しています。
今回は、「竜宮に行った神主様」の話です。
自分に都合よく考えるな、という戒めでしょうか。
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☆『新版 静岡県伝説昔話集』(上巻)静岡県女子師範学校郷土研究会編 1994年 ⑦
2 池、淵、泉・井戸などの話 続き
(9)竜宮に行った神主様 (磐田郡二俣町・現天竜市)
ある日の事、椎ケ脇神社の神主様は、神社の裏へ大鉈を持って柴刈りに行きました。
ところが、ふとしたことで、大鉈を大蛇が住んでいるという椎ケ脇の淵へ落としてしま
いました。
淵をのぞいて見ますと、幾千丈(千丈は約三千m)とも知れない淵に落ちた大鉈が、すぐ手が届きそうに水の上に浮いて見えます。
そこで神主様は、崖から下りて行ってその鉈を拾おうとしましたが、そのはずみに神主
様の体は、深い深い淵に引き込まれてしまいました。
そして、ふと目がさめて見ますと、そこは美しい竜宮でありました。乙姫は
「私は、鉄が嫌いですから、鉈を持って早くお帰りなさい。これからは決して、この椎ケ
脇の淵に鉄などを入れないようにして下さい。またこうして竜宮が椎ケ淵にあるなどと は、決して誰にも言ってはなりません。この事を守って下されば、お前の欲しいと思う
ものは入用の時、何でも貸して上げますから、この淵ぎわに来てお言いなさい」
と言いました。
そこで神主様は喜んで帰りました。二、三日たつと、神主様の家に、その国の殿様が4
0人の家来を連れて泊まりにおいでになりました。
珍客の事ですから、神主様は、たくさんのごちそうをして上げようと思いましたが、大切なお膳やおわんがないので困りました。
神主様は、さっそく淵へ行って「竜宮の乙姫様、なるべく上等のお勝とおわんを40人
分貸して下さい」と頼みました。そしてしばらくして行って見ますと、目のさめるような
きれいなお膳とおわんが、40人前並べてありました。その食器でごちそうを食べた殿様
は、非常に満足され、お帰りの時には、神主様に、おほめの言葉やたくさんのごほうびを
下さいました。
その後も、神主様は、絹の美しい夜具や、ある時は臼と杵、または重箱等も借りたこと
がありました。
でも、こうした喜ばしいことは人に知らせたいものですが、残念な事に口止めされていましたから、いろいろ考えた未に、
「言うなという事は、口に出して言うなということであるから、文字で知らせることは差
しつかえなかろう」
と、ついに友達を家に呼んでこのことを知らせてしまいした。
友達は、この不思議なことを聞いて非常に喜びました。しかし、約束を破った神主様は
その後、何にも借りる事が出来ず、その上に筆を使って人に知らせたため、文字を書くことが誰よりも下手になったといいます。
それで今でもこの淵を、お碗かせの淵といっているのです。
(鈴木とし子)