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(1)「常民教育論」長浜功 新泉社 1982年 ② (2)「土のいろ」集成 第六巻 52~59号 昭和初期【再掲載 2011年11月】 [読書記録 民俗]

「『仰げば尊し』『蛍の光』は文部省のCMソング」


「官民一体キャンペーン(明治時代の教育) 
 学問すれば立身出世できる。だから国民は爪に灯ともしてせっせと学校に通いなさい」






今回は、3月28日に続いて長浜功さんの
「常民教育論」の紹介 2回目です。


わたしに民俗学と教育との大きなつながりを教えてくれた一冊です。


要約すると、再構成が難しく、誤解をうむことになりかねません。
興味をもたれた方は、ぜひ、本書をお読みください。
面白い本です。




出版社の案内には、


「柳田国男は戦後日本の混乱と低迷を憂い、監修者となって国語と社会の教科書をつくっ
 た。しかし教育界からは無視されて、この教科書は短命に終わった。この柳田の『常民
 教育』が教育に生かされていたならば今日の教育の混乱はなかった、と教育学から柳田
 に挑戦する。」



とあります。







今回紹介分より強く印象に残った言葉は…

・「家永の柳田批判、中井信彦『柳田の仕事は文学と芸術の間』」


・「柳田の公教育批判
  かくあるべしとするきまりと知識を前提とするのは間違い
生活の場面場面に必要に応じて身につけていく教育は自然で有効な教育」


・「ルソー『どこでも生き抜ける人間を育てる』」


・「福沢諭吉『学問ノススメ』
市民平等を装いながら職業の貴賤を規定した
  身分高くして貴き者「医者 学者 政府役人 大商店主 大百姓」
= 学問すれば立身出世できる」


・「柳田はエリート教育に批判的 『目に一丁字なき人々』を大切に考えた。
◎平凡人の歴史を専門に研究している
◎日本には殊に無学な智者、眼に一丁字なき賢人というものが多かった」




加えて、昭和初期、柳田氏の投げかけで地方に広がった研究雑誌の一つである、
「土のいろ」を 再掲載となりますが、紹介します。
紹介するのは、ひくまの出版から集成として出された「第六巻 52~59号」です。
「土のいろ」誌は、教員が中心となり取材し、遠州地方で広がったもので、
浜松においては大変価値のあるものだと考えます。
「八日神・神送り場」は疫病を村に入れず追い出す民俗行事、
現代のコロナ感染を思ってしまいました。





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(1)「常民教育論」長浜功 新泉社 1982年 ②

1.jpg

◇柳田教育学の方法

□家永の柳田批判

 理由
  ① 一般化できない方法論に過ぎない

  ② 補助程度であれば柳田史学は使えるがそれ以上は認められない。

    中井信彦 「柳田の仕事は文学と芸術の間」

    |

 家永の気力の激しさ
「批判的視点の弱い柳田論の洪水」に対する批判
 



□柳田学の継承

 柳田学は接ぎ木の台木(谷川健一)




□学問と方法論

 柳田学は彼の長命によるもの 
   全体を通してみるとはっきりする

 柳田における緒論の合成を通してみる
 



□重出立証の方法

 螺旋状の旅・学問
  - 「連ねる論理」梅棹忠夫


 貫く論理と連ねる論理
  → 膨大なデータを積み重ね、その集積の結果から最小の部分を結論とする 

 = 結論の小ささ



    重出立証法
 



□前代の教育とその継承

 ~1872  「前代の教育」自然の教育

1872~ 「公教育」 制度化された教育


 明治の日本 明治以前の教育力の賜物

  ∥

柳田の公教育批判
   かくあるべしとするきまりと知識を前提とするのは間違い

   生活の場面場面に必要に応じて身につけていく教育は自然で有効な教育


 小学校  
   大きくなってから何に生活するかもしれない人たちに、時と場合に応じて必要なる
  物言いを自由にさせるように育てるのが唯一の役目



ルソー「どこでも生き抜ける人間を育てる」
 



□人間学 

 人間観への接近
 



□平凡人教育論
   
 明治政府「学問は身を立てるの財本」



  最初からゆがめられた学問観によって新日本人を形成しようとした


 福沢諭吉『学問ノススメ』
  市民平等を装いながら職業の貴賤を規定した

賢い人間を愚かなる人間は学問をするかしないかの違い



頭脳労働を一段上に位置づけ肉体労働をやすき仕事としている


   身分高くして貴き者
「医者 学者 政府役人 大商店主 大百姓」



  学問すれば立身出世できる



 官民一体キャンペーン 
  学問すれば立身出世できる。だから国民は爪に灯ともしてせっせと学校に通いなさい



「仰げば尊し」「蛍の光」は文部省のCMソング


『学問ノススメ』340万冊
とてつもない偏見を日本人に植え付けた



大学にさえ行けばよい暮らしが…



 柳田
   エリート教育に批判的 

  ~◎「目に一丁字なき人々」

◎平凡人の歴史を専門に研究している

◎日本には殊に無学な智者、眼に一丁字なき賢人というものが多かった



 平凡な人々に対する前代の教育がそういう賢者を生んだのであり、平凡人の教育をない
がしろにすれば國の教育は滅びてしまうかもしれない

前代の教育 - 職業教育


時代の変革 - 出世教育 = 優秀者を抜擢するために残りを踏み台にするやり方 


 水準にいる普通農民の…智力と言っては狭すぎますが、心の働きです、キャパシティを
比較したら日本人程進んでいるものは世界中で少ないと思う



前代教育の理想 どこまでも十人並み、世間並み



 柳田 
   教育を人間の精神的側面によってしか見ようとしない
 はみ出しをつくるまいとする社会心理の所産



島国における共同生活の論理の絶対条件

↑↓

  出る釘は打たれる式の奇妙な調和説
     ~ 悪しき平等主義















(2)「土のいろ」集成 第六巻 52~59号 昭和初期【再掲載 2011年11月】

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※写真は「古書百寿堂店主お薦めの古書・骨董品」より



◇月報6

□教育者・民俗学者 中道朔爾先生のこと 鈴木波男

 児童個性への配慮





◇第9巻第5号 通刊52号 昭和9年9月
 
□遠州の方言地域 佐々木清治





◇第10巻第1号 通刊53号 昭和8年1月
 
□遠州引佐の「普請講」に就いて 新田勇次

 

□還魂志料遠州雑記 横田大一     

 ①大井川川越人足の話   谷川関

 ②見付宿スッポン屋の話   泥亀屋

 ③隠語「小夜の中山」の話

 ④森繁子墓誌の写し

 ⑤八木美穂の話



□村櫛村酒専売所の概況

 創設 安政元年大地震  → 倹約 酒専売禁止 5か年倹約の儀

    次第に緩む  ← 専売で節酒勤倹の美風を


 消防組で経営

 

□祭狂言のことども 飯尾哲爾





◇第10巻第2号 通刊54号 昭和8年3月  国文学号

□類題和歌 近藤用一(紺屋町に宝林堂=古書) 

 

□内山真龍の浜松歌附引馬地名考 岡部壌 

 印波 → 引馬(インバ) 稲葉(イナンバ)  西伊場北方の高丘一帯 縁故有り

 

□広告「遠江積志村民俗誌」郷土研究者 中道朔爾





◇第10巻第3号 通刊55号 昭和8年5月
 
□遠江郷土歌集 鈴木覚馬 平松東城 中道朔爾 飯尾哲爾 近藤用一  


□遠江国 
「和名抄」止保太阿不三

「万葉集」等保都安布美,等保多保美,遠淡海の義





◇第10巻通刊4号 通刊57号 昭和8年10月  遠江郷土歌集






◇第10巻第6号 通刊58号 昭和8年8月
□郷土伝説植物考 原田和

 1 七つ森の片葉の葦 磐田郡久努村国本
 

 2 京丸の牡丹    周智郡気多村小俣京丸


 3 大谷の三度栗   磐田郡三川村大谷幕ヶ谷


 4 菊川の月の輪   榛原郡金谷町菊川付近


 5 熊野寺の座論梅(ザロンバイ) 
     磐田郡池田村行興寺境内

     花一輪に五つ六つ実がなる


 6 巨松と名松 

    遠江三松 
     ① 浜松の蛇松(浜松篠原・南浜辺付近)

     ② 美園の松

     ③諸井の産松
  

 7 見名の蛇銀杏 豊田郡見付町 


 8 大見寺の梅  磐田郡見付町


 9 興禅寺の白牡丹 小笠郡国安村
  
 

□おんべ  伊藤茂市 五島村松島
   
 旧12月8日と2月8日の2回,夜中12時から夜明け前


 尋常4年~高等1年くらいまでの男子

          
 準備 
  ① 鐘を担う棒   打つ槌
      
  ② 打つ棒は神社内の樹の枝

  ③ 女竹で堤防かちとり1本に二三条の七五三縄

   ↓
神社数軒前の渡辺斧三郎宅に


 お願い 
 ○大きい者は鐘太鼓を打ち,会計をしたり年下の世話をする
    
  他の者2,3本 拝殿を祓う


「おんべとやいと,とうととやいと」太鼓

  ↓

 3日祓い三周回って神社のお払い → 各家へ

 地についた竹ではお祓いしない

 お礼 2~3銭 多い家は5銭
 


※ 全部お祓いが終わると竹・棒・土等は下方の井堀に流してしまう。もらった金は  会計・平等に分けてから家に帰る。



余白 八日神・神送り場
 
八日神は浜松市南の農村
2月8日,12月8日

    悪神を村から追い出す行事

   → 子供が未明に家々を巡り鉦を叩き村境まで送り出した



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