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「恵みあれば」 鈴木秀子  中央公論新社 1999年 ⑤ / 「師弟物語」佐高信 現代教養文庫 ② 1994年【再掲載 2012.9】 [読書記録 一般]

今回は、わたしの教育ノートから、9月23日に続いて、鈴木秀子さんの
「恵みあれば」5回目の紹介です。





出版社の案内には、


「自分だけが恵まれず、不幸だと感じたことはありますか? 満たされない、味気ない毎
 日だと思ったことはありますか? しかし、恵みはすべての人に訪れているのです。あ
 るがままの自分を見つめ、魂の奥深いところでの自分と他者とのあたたかいつながりに
 気づいたとき、新たな生がはじまる。」


とあります。



今回は、一房の葡萄(3)の紹介です。

・「こんなことをしてはいけない」とよくよくわかりながら、まるで強迫観念の虜になっ
  てしまったように、「してはいけないと、よくわかっていること」をしてしまった 0 少年の心の中は、厭な自分に対する不快感でいっばいです。

・「大人の私たちは、『私はそんなことは決してしない』と、他人を厳しくこき下ろした
直後、自分も同じことをしていることに気づいたりすることがよくあります。」





もう一つ、再掲載となりますが、佐高信さんの
「師弟物語」②を載せます。
師匠と弟子の強いつながりを感じます。





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文部科学省の
「子供の学び応援サイト(臨時休業期間における学習支援コンテンツポータルサイト)」




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☆「恵みあれば」 鈴木秀子  中央公論新社 1999年 ⑤

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◇一房の葡萄(3)

◎人の目が気になってしかたがない時



 ほしくてたまらないものを、両親に無心に頼むことができない少年は、自分自身をこう
見ています。


 ぼくはかわいい顔はしていたかもしれないが、からだも心も弱い子でした。その上おく
びょう者で、言いたいことも言わずにすますようなたちでした。


 だからあんまり人からは、かわいがられなかったし、友だちもないほうでした。


 空のおくのおくまで見すかされそうに晴れわたった日、みんなが運動場に出て走り回っ
ていた昼休み、教室に居残っていた「ぼく」は、授業の始まりを告げる鐘の大きな音にせ
かされるような気になります。


「ぼく」は急に頭の中が氷のように冷たくなるのを気味悪く思いながら、ふらふらとジム
の机の所に行って、半分夢のようにそこのふたをあげ、藍と洋紅の絵の具を盗んで、ポケ
ットに入れてしまいます。次の授業が始まりました。


 ぼくはジムがどんな顔をしているか見たくってたまらなかったけれども、どうしてもそ
っちの方をふり向くことができませんでした。でもぼくのしたことをだれも気のついた様
子がないので、気味が悪いような安心したような心持ちでいました。


 ぼくの大すきなわかい女の先生のおっしゃることなんかは耳にはいりははいっても、な
んのことだったか、ちっともわかりませんでした。先生も時々不思議そうにばくの方を見
ているようでした。



 ぼくはしかし先生の目を見るのがその日に限ってなんだかいやでした。


 そんなふうで一時間がたちました。


 なんだかみんな耳こすりでもしているようだと思いながら、一時間がたちました。




 横浜の英和学校に通っていた頃、「誘惑に堪えずして友の持てりし美しき西洋絵具を盗
みて発見せられ、我より年長けたりし其友の為に、痛くたしなめられしことあり」という
体験を持つ、武郎ならではの的確な心理描写です。



 「ぼく」という少年が絵の具を盗ったことは、誰も知りません。


 ここでは誰もまだ気づいてはいないのです。


 しかし少年はみんなが自分の悪口を言っていると感じはじめています。これは少年だけ
の問題ではなく、大人もよく、「こんなだと他人になにか言われはしまいか」と憶測をめ
ぐらして、不安にとらわれる時があります。


 そんな時、人の心はどんな動きをするのでしょうか。


 まだ誰ひとり知らないにしても、少年には自分が悪いことをしたという意識があります。


 「こんなことをしてはいけない」とよくよくわかりながら、まるで強迫観念の虜になっ
てしまったように、「してはいけないと、よくわかっていること」をしてしまった少年の
心の中は、厭な自分に対する不快感でいっばいです。



 「するべきでない」という声と、「しないではいられない自分の衝動」の、相反する動
きに引き裂かれています。


 分裂する2つの力のせめぎあいの中で、少年は、増幅する不快感に耐えられなくなって
いきます。



 そして自分で自分を責め、「おまえは悪いやつだ」と自分に言っています。


 自分を責めて、いたたまれない思いをしているのです。 


 不快感に耐えきれなくなり、厭な感情を自分の中から、取り除いてしまいたくなります。
自分の中の感情の動き、とくに不快な感情は認めたくありません。


 すると、鏡に映すように自分の中の厭なものを、他人の中に移してしまいます。そうす
ることで自分の中から、受け入れがたい不快なものを消し去ってしまったと思いこみます。


 しかしこれはたんに、自分の感情を抑圧して、自分の中の深いところにしまい込んだだ
けなのです。



 少年は、自分が自分に向けている感情を、他人の中に見てしまっています。



 そして実際には、自分で自分を責めているのに、まるで皆から責められているように感
じます。



 大人の私たちは、「私はそんなことは決してしない」と、他人を厳しくこき下ろした直
後、自分も同じことをしていることに気づいたりすることがよくあります。


「 自分の中には、もっとも嫌いな人の、もっとも嫌いな点が、抑圧されて隠されている。
 自分が一番嫌いな人が、自分と同じ点を持つ人だ」とよく言われます。



 これは、投影という、自分を守るための防衛本能で、人間だれでもが持つ傾向です。


 まず、人の目が気になりだしたら、この投影という形で、自分を守ろうとしていないか
どうか自分を観察してみます。


 ストレスが大きすぎる時は、この形で自分を守ることも必要でしょう。しかし、多くの
場合、この心の動きのメカニズムを知っておくと、違う選択がで
きるようになります。



 人の目が気になりだした途端、2つのことをします。まず、実際にだれが何と言ってい
るのか確認します。


 つづいて、自分の中で自分に何と言っているのか、耳を傾けます。自分を責めている言
葉に気づいたなら、「べき論」でないかを調べてみます。


 自分の本心を無視して、たてまえを自分自身に言いきかせているのかもしれません。「こ
 うあるべき」                                                                                                                                                                                                                                                                                             
と自分に言いきかせ、自分の弱さを認めまいとしているのかもしれません。


 また、完全主義に陥っていないかも気づかいます。


 その上で、最上の解決策にはいります。自分によく言い聞かせるのです。「これが私の
限界なんだよ。受け入れようね」とか 「あのやり方まずかったから、今度は、こうした
らどうかしら」とか自分と相談をするのです。



 人の目を気にするのは、「人に受容されなかったらどうしよう」という恐怖が根底にあ
ります。


 まず、自分で自分を受容する訓練からはじめてみること、これが幸せに生きる「秘訣」
とも言えそうです。つまり他人の目を気にしないで、自分らしく自由にのびのび生き
ていくこつは、自分自身と仲良しになることです。























☆「師弟物語」佐高信 現代教養文庫 ② 1994年【再掲載 2012.9】

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<芸の伝承>

◇末路哀れは覚悟の上
 
□桂米朝(1925満州生) 桂枝雀(1939生)



□初の内弟子 
  米朝の長男 桂小米朝



□香川登志雄 米朝を吉田松陰になぞらえている

「芸人は米一粒釘一粒もようつくらんくせに酒が良えの悪いのと言うて好きな芸やって一
 生送るもんやさかいにむさぼってはいかん。ねうちは世間が決めてくれる。ただ一生懸
 命に芸を磨く以外に世間へお返しの途はない。また芸人になった以上、末路哀れは覚悟
 の上やで」





◇女のドラマを歌でつづれ

□古賀政男(1904福岡生 1978没) 大川栄作(1948福岡生 歌手)



□古賀メロディ 
 「母を恋うる歌」



□TBS「新妻鏡」挿入歌 
 「目ン無い千鳥」でデビュー 1969.6



□古賀メロディ 

 戦前ベスト5
  ①「誰か故郷を思わざる」

②「酒は泪か溜息か」

③「影を慕いて」

④「人生劇場」

⑤「ああそれなのに」

        
 戦後ベスト3
  ①「柔」

②「悲しい酒」

③「湯の町エレジー」



□古賀自身は

 「古賀メロディよ消えていけ。そしてもっと幸せになれ」






◇「泣くやつがあるかッ」

□宝井馬琴(1903生 1985没) 宝井琴桜(1949秋田生 夫・琴梅)



□「ひたむきな一生」 

 - 栗原イネ伝「大同毛織創始者」



 馬琴
 「講談の講は歴史、談は分かりやすく話すという意味で、埋もれた人物の歴史を取材し
  て掘り起こすのが講釈師のつとめだ」



□宝井琴桜 
 田辺一鶴門下に(当時一鶴は二つ目)

築地の魚河岸で肉体労働

1968年34歳の男と19歳の女性が荒川の土手でけいこ

1968年春 田辺一鶴の弟子

 → 先輩の宝井琴時(現琴梅)に一目惚れ



宝井馬琴に弟子入り 1969.5~1970.1 内弟子

師匠は弟子に無償の愛



□夫婦そろって真打ちに

殿様の気概を失わずに反骨精神をもって庶民に語りかける

 江戸時代
   馬場文耕が幕府を批判し打ち首に



□ビジネス講談

 ビジネス講談「プレジデント」





◇足十年左十年

□吉田玉男(1919年大阪生) 吉田玉女(1953生)



□人形浄瑠璃「文楽」 文楽軒という役者の名前に由来

 「玉遣い」 首と右腕をつかう   顔を見せて袴

 「左遣い」 左腕を操る      黒子姿 10年

 「足遣い」 足          黒子姿 10年



  20年にしてようやく玉遣い
  


□文楽 = 三味線 + 語り + 人形遣い  



□玉女 

 アルバイト(中学生)から出発

早く男になるようにと「玉女」



最も辛い足遣いの十年をどう過ごしたかでその後の舞台人生が決まる
前屈みで中腰 - 辛抱は並大抵ではない

やつれを防ぐのは「よく寝ること」+「歩くこと」



□「一番大切なのは素直さと欲」

 人形は人形遣いの手により感情を吹き込まれ命を甦らす



 「おなかの中で感情を絞って人形をつかう」ことが必要



□玉女夫人はエリザベス  

 アメリカ人記者が文楽に魅せられて






◇「このウスバカヤロー」

□遠藤実(1932東京生) 千昌夫(1947岩手生)



□千昌夫 

 本名・阿部健太郎 父は出稼ぎ左官工

 強引に内弟子に
「星影のワルツ」「北国の春」



□演歌は 縁歌 遠歌 怨歌


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