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「今教育に貫くもの」 向山洋一・門川大作(京都市教育長) 『致知』2007-2  ② /「現代の世相⑥ 談合と贈与」 宮田登 小学館 1997年 後半 【再掲載 2012.2】 [読書記録 教育]

今回は、7月25日に続いて、月刊誌『致知』より、向山洋一さんと門川大作さんの対談、
「今教育に貫くもの」の紹介 2回目です。


およそ15年前の対談です。
向山さんが中心となり教育の法則化運動がいっとき広がりました。
現在もTOSSとして活動していますが、それに対してはいろいろな意見があります。
わたしには合いませんが、様々な考えを知ることは大切だと考えます。
「モンスターペアレント」という言葉は、向山さんがつくった言葉だと言われています。






もう一つ、再掲載となりますが、宮田登さんの
「現代の世相⑥ 談合と贈与」後半を載せます。
「談合」話し合い、寄り合い、本来はムラで大切なものとされていたはず。
それが悪いこととされるようになったことが分かり易く説明されています。
30ページしかまとめていませんが、たくさんの分量になりました。





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☆「今教育に貫くもの」 向山洋一・門川大作(京都市教育長) 『致知』2007-2  ②

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◇現場をサポートするのが教育行政の役割

門川 

 教育現場に目を移すと、いま気になるのは、全国のどの学校でも教育委員会等から、い
じめ対策等を強く求められ、そのたびに先生たちがパソコンの前で報告書づくりに貫重な
時間を剖かざるを得なくなっているのではないかという点です。
 


向山 

 それは言えますね。



門川 

 しかし素晴らしい教育活動を行っている学校に行ったら職員室は空っぽですよ。先生は
教室にいたり運動場にいたりする。それで私はよく先生方に「手は縛れ」と言うんです。
目と耳と口と足で仕事をしよう、細かい報告書を書く時間があったら一回でも家庭訪問を
しよう、少しでも深く子どもと関わろうと。

 我々も心せねばなりません。また現場が多忙すぎます。

 先ほどの向山さんのお話のように、校長先生が家庭にきちんとフォローしていくことこ
そ重要であって、報告書がいくら立派でも駄目です。だから私は「報告書は三行でもいい」
と言うんです。しかしマスコミも含めて世間がなかなか許してくれませんね。
 


向山 

 同感です。
 



門川 

 現場で肌と肌が触れ合う実践をしていかない限り、感情を揺さぶらない限り、子どもも
親も変わりません。そこをいかにサポートしていくかが教委の本来の役割ですね。
   
 また学校でいじめや何か問題が発生した時、学校だけで対応できない場合には、まず教
委が出ていって学校と一緒に考え、取り組まねばなりません。例えばマスコミに何百社と
押しかけられたら、それだけで学校の機能はストップですからね。
 


向山 

 まったくそのとおりで、教育委員会が支えなくては、校長先生はたったひとりで戦うこ
とになるんです。
   
 事件が起こるでしょう。すぐにマスコミが押しかけてきて、報告を聞いて飛んで帰って
きた校長先生に「いったいどういうことなのか」と質問する。でも校長先生は知らないわ
けですよ。だって知っていれば解決しているわけだから。仕方がないから「早急に事実を
調査して報告します」と応対する。すると「なんだその答えは」と怒鳴られるわけです。


 
門川 

 教委にも電話がかかるから校長に聞く、地域からも多くの人がくる。子どもや職員に対
しても正常な教育活動の維持を指導しなくてはならない。危機管理を担うのは校長先生、
せいぜい教頭先生の二人しかいません。
   
 6年前、京都で小学生が殺される事件が起きました。事件発生が12月21日、逃走中
の犯人と思われる男の自殺が翌年の2月5日。その間、私は年末年始も一日も休まずに出
勤し、教委の職員を常時5、6人、学校に張りつけて校長先生や学校体制を組織を挙げて
カバーしていきました。


 
向山 

 問題が大きいほど正常な判断ができないし、状況もすぐに揺れ動きます。そこをきちん
と理解して支援してあげないと、さらに悪い事態が生じることもあります。最近でも教育
委員会がうまくサポートできなかったために、マスコミから袋叩きにあって自殺してしま
った福岡の校長先生がいらっしゃいます。だから事故があったら教育委員会はとりあえず
学校に入って校長先生を支えることからスタ‐トしなくてはならないんです。





◇増え続けるモンスターペアレント

向山 

 青少年の問題行動が増えているのと同様に、この5、6年の間に確実に増えているのが、
われわれが「モンスターペアレント」と呼んでいる怪物のような保護者の存在です。見た
ことのないような親がいます。
   
 どのくらいすごいかというと、小学校の授業中に母親が毎日乗り込んできて「こんな教
師の言うことは聞くな」と延々20分、30分と演説するんです。しまいには「土下座し
て謝れ」と。こんなことが続いてごらんなさい。学校は壊れてしまいます。


 
門川 

 担任を替えない眼りは子どもを学校に行かせないという人もいますからね。我が「子ど
もを人質に」自己主張ですね。一つには昭和50年代に荒れる学校ということが言われ始
めました。その頃の世代がいま親になって二世代で問題が起こっているようにも思えます。


 
向山 

 そう、2世代なんですよ。そのモンスターペアレントによって壊されてしまった管理職
や教師は全国に数多くいます。


 
門川 

 昔もなかなか理解していただけない親はいました。だがその周囲に「そんなことまで言
ったらあかん」というおじいちゃん、親戚、近所の人がいたんですね。いまはひとり我家
庭が増えたり、核家族化や地域力低下によって親が孤立しています。自分の子どもがいや
がることは全部相手が悪いと認識して、自己主張される。
 


向山 

 問題となっている給食費の未払いにしてもそうでしょう。どこかのテレビで「お金がな
くて困っているから」と報じられていましたが、私に言わせたら冗談じやないですよ。そ
ういう家庭には生活保護や準要保護という形で給食費相当分の補助金が出ているんです。
結食費をもらっているのに払っていないのです。それなら最初から補助をもらうべきでは
ないんです。それに経済的に余裕がありながら「払う必要はない」という家庭もたくさん
あり日本中に利己主義が蔓延している表れ以外の何物でもありません。
 


門川 

 ただ、ありかたいことに京都市の場合は年間通して払っていない給食費滞納者は30人く
らいです。



向山 

 素晴らしいですね。誤差の範囲じゃないですか。それもまた地域挙げての取り組みの成
果でしょう。


 
門川 

 結局そのへんも含めて、京都市では学校、家庭、地域社会の連携を強めるために、PT
Aの活性化、学校評議員、学校運営協議会を機能させています。要するに学校のサポート
チーム、学校の応接団ですね。サポートチームは学校に対して厳しい注文をつける。と同
時に学校のために一緒に汗を流して協力する。通学区域の自由化をせず、モンスターペア
レントのような存在に対しては親同士の立場から、あるいは地域の立場から説得していく。
   
 そういう作業を困難ですが地道にやっていく以外にはないと思います。
 


向山 

 大賛成ですね。成功しているところはどこもそうなんです。小さな問題でも親全体で相
談してもらって、具体的な行動として示していく。最初から大きなことに取り組もうとす
るのではなく、小さな話でも親同士で相談するような仕組みをつくると、モンスターペア
レントのような人たちは滅っていくことでしょう。少なくともいま私が知っている手段と
して京都市のような取り組みは最も有効だと思います。
 


門川 

 学校評議員や学校運営協議会は京都市独自のものではありません。聞かれた学校づくり
を推進する国の方針で全国で取り組まれつつあります。親や地域の代表が校長の学校運営
方針を承認したり意見を言っています。学校を評価し注文をつける制度です。うちが最も
多く、また他自治休と違うのボランティア活動への参画などで学校と一緒に汗をかく「共
汗関係」を築き上げることに重点を置いていることなんですね。



向山 

 なるほど。「共汗関係」ですか。
 


門川 

 いまよく連携、連携と言うでしょう。その時は必ず相手に何かを求めようとする。だけ
ど相手に求めるだけではなかなか物事は実現しません。実現させようと恩ったらまず自分
が変わらなくてはいけないんです。学校が閉鎖的な体質を変えないといけない。教師は信
頼されなくてはならない。
   
 私は「過去と相手は変えられないが、自分と未来は変えられる」という話をよくするん
です。教師の意識と行動を改革して、学校が本当に聞かれたものにしていく責任を果たそ
うと。それでこそ「あなたは子どもたちのために何かできますか」という形で家庭や地域
に行動を求め互いに高まっていくことができます。
 


向山 

 それだけ教師の責任は重大だということですね。





◇道徳とルールをごちゃ混ぜにしてはいけない
 
門川 

 子どもたちに、いかに道徳心を育むかという点でも、親とともに教師の役割は重要にな
ってきます。
 


向山 

 先ほど私はいじめの発見システム、対処システムについてお話をしましたが、実際に子
どもたちに教えるに当たってば座標軸が必要だと思うんです。
 


門川 

 座標軸ですか。
 


向山 

 いま日本全国で心の教育が叫ばれています。だけど私はルールこそ大事だと思うんです。
心の教育とルールの教育はまた別なんですね。例えば、自動車学校では他のドライバーや
歩行者のことを考えながら運転しなさいという指導を受けます。これは心の指導です。そ
の一方で車は左側を走行しないといけない、信号を守らないといけないというように、き
ちんとルールを教わります。そのいずれかが欠けても正しい運転はできません。
   
 いじめ問題にしてもしかりです。ルールはルールとして教えないといけない。当然法的
な問題も踏まえて、いじめは犯罪なのだとしっかり認識させる必要があります。
 


門川 

 確かに。
 


向山 

 警察に問い合わせをして、いじめがいくつの犯罪に該当するか調べてみましたら、20項
目くらいに当てはまると分かりました。借りてもいないのに「この前の金を返してくれ」
と脅す。これは恐喝罪であり詐欺罪です。ここを押さえるだけでも、子どもたちは随分達ってきます。
   
 もちろん、心のことを教えるのも大事です。「自分の友達じゃないか」とか「誰かがい
じめられそうになったらみんなで止めよう」とか。だけど、心というのはどうもつかみよ
うがないんです。
   
 これは元文部省の役人で政策研究大学院教授の岡本薫さんが強く主張されたことなので
すが、心に焦点を当てる前に、明確につかめるルールを教えることが大事ではないかと。
だけど、いまの教育現場はどうしても心だけで終わっている感じがしてなりません。


 
門川 

 そのことについてですが、京都市では河合隼雄先生を座長に道徳教育振興市民会議をつ
くって三年間にわたりいろいろな議論を重ねる中で、内面から湧いてくる道徳と、形から
はめなくてはならないルールをごちや混ぜにしてはいけないという話になったんですね。


 
向山

 そうなんです。



門川 

 市民会議では、白分たちが共有できる価値観は何かを探るために一万人のアンケートを
実施しまして、なんと2万2300人の方から回答をいただきました。そのアンケートを
するに当たって、予備調査として400人を超える方に、「生きていく上で、あなたは何
か一番大事と考えられますか、10項目まで書いてください」、そんな事前調査も行いま
した。これらをもとに道徳教育の指針を、「はっきり教える、伝える」「しっかり見せる、
示す」「じっくり語り合い、考える」「たっぷり体験させ、共に活動する」、この4つに分
けて、それを軸に建前を推進していったんです。



向山 

 なるほど。ルールの部分をしっかり考えられているわけですね。
 


門川 

 私はボーイスカウトにも関わらせてもらっていますが、そこでのルールは「誠実である」
とか「礼儀正しい」とか「勇敢」「感謝の心」「質素」「いたわり」等、端的で具体的です。
ところが、学校に行きますとね、「美しい心を育てます」「個性豊かな人づくり」と非常に
漠然としているんです。


 
向山 

 重要なご指摘です。
 


門川 

 少し話はそれますが、学習指導要領には「恩」という言葉がありません。それから「忍
耐」「我慢」という言葉もそうです。
 


向山 

 どうしても「個性を大事に」というほうに流れてしまいますからね。
 


門川 

 優しさ、確かに大切ですよ。私は全市の小中学生が集まる会で「優秀という字は優れて
秀でると書く。知識に秀でる、技術に秀でる。それも大事やけど、一番大事なのは優しさ
に秀でることだ」と説明したんです。そうしたら校長会長が締めの挨拶で「優秀の優とい
う字は憂える人のそばに人が寄り添うという宇だ」と。これには一本とられました(笑)。
   
 この優しさというのも本来は厳しさ、忍耐力とIつなんですね。子どもたちに教える時
は、その大事なことをきちっと押さえることが大事だと思います。










☆「現代の世相⑥ 談合と贈与」 宮田登 小学館 1997年 後半 【再掲載 2012.2】

<出版社の案内>
日米経済交渉でも話題になった“ダンゴウ”、本来は衆知を集めて一致点を見い出す庶民
の知恵であった。それがなぜ悪しき慣習に変わったのか。独特の贈答習慣、タテマエとホ
ンネなど日本人の行動様式の過去・現在を解明する。

日本的人間関係の深層に迫る!独特の贈答習慣、タテマエとホンネなど日本人の行動様式
の過去・現在を解明する。
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◇談合の意味 

 熊本県宇土郡西
  「談合島」



団子  
  ハレの食物 



 坂迎え 
  遠方に出掛けた村人を迎える儀礼

  村の内の世間に帰る時空間が坂 = 境



◎ その場所で宴会 協同飲食をする点が重要

  ◎ 神供として団子 - 団子坂 - 談合坂



川崎市丸子の民俗
一日・半日休んで寄合をする際、一日正月とか半日正月と呼んだ
                             (=盆、正月)



◎談合の時間 = 神霊との交流

 

「オゴル」 = 本来は共同飲食をする意味にもとづいていた



 ※「長者伝説」 
    特徴 = 長者が必ず没落する

    → 長者が没落するのは大勢の奉公人にオゴル事から

オゴル長者とモラウ奉公人

    

 共食 = 無主の原理

神と人が一緒に飲食することが基本

食べることにより神の力が人間に与えられると言う信仰



 オゴルとモラウは対の表現

「モラウことは霊力を付加されることで積極的にもらうことが必要だったし、オゴル事
も神霊の代行者を一時的につとめようという長者の美点の一つ




 ◎田主(たろうじ) = 共同体のリーダー

   皆に絶えず分配 → 日本には大金持ちが少ない



 長者譚
   ◎ひとたび私有財化すると没落してしまうからである

   ◎人々に分かち与える限りでは尊敬される





◇贈答の慣習 

 供物を皆で分け合って食べる共同飲食が重要



◎直会(なおらい)  贈答は祭りで直会に参加することと同じ



※ のし  熨斗鮑 最も貴重な贈答品



非日常の民俗 
   病気見舞い・留守見舞い



◎葬儀に限っては金品授受公然と

   葬儀出席 = 義理を果たす

  義理堅い人がはじめて「世間」の交際も成り立つ



※しかし、この義理は世俗性の枠組みに入ってしまった



◎香典が金銭化したことがその要因 
        → 政治文化の悪習





◇日本的慣習としての談合と贈与  

~P30まで

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