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「教えることの復権」大村はま・苅谷剛彦・苅谷夏子 ちくま新書 2003年 ③(最終) /「人の縁」(宮本常一『見聞巷談』八坂書房 2013年より⑥)【再掲載 2014.2】 [読書記録 教育]

今回は、9月25日に続き大村はまさん、苅谷剛彦さん、苅谷夏子さんの
「教えることの復権」3回目の紹介 最終です。



出版社の案内には、

「今、日本の教育界では、子どもの自主性を大切にしようと、『教える』
 ことよりも『学ぶ』ことに重点を置きはじめたように見える。これまで
 の『詰め込み』への反動であろう。だが一方で、教師の役割を軽視しす
 ぎてはいないだろうか?本書では、教師が『教えるということ』をもう
 一度正面から見つめ直し、今もっとも必要なことは何かということを、
 すぐれた教師とその教え子、教育社会学者の間で徹底的に考える。」

とあります。




今回紹介分より強く印象に残った言葉は‥

・「教えること以外に忙しすぎる教師。教育をよくしていくことは、教師
の仕事にどんどん新しい役割を付け加える足し算の発想でしか考えら
れていない教師の多忙化の中で授業の準備や研究の時間が削られてい
く」


・「社会が教師に求める多様な役割の前に教えない教師が増えていく」


・「『個性』がよい意味でしか使われていない。なぜか?」


・「失敗を許しつつ『分からないことを分からせる場、できなかったこ
  とをできるようにさせる』場が学校である」





もう一つ、再掲載になりますが、宮本常一さんの
「人の縁」を載せます。
ここに描かれている市井の人が戦後の日本を支えていたと思わされます。
目立つことはないけれども誠実に努めることの大切さを感じました。




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ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
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☆「教えることの復権」大村はま・苅谷剛彦・苅谷夏子 ちくま新書 2003年 ③(最終)

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◇教えることの復権を  苅谷剛彦

1 徹底したリアリズム
・教師の仕事とは「教えること」 
      教えることの責任
      職業倫理

   ・授業の具体性
      目的-手段を明確にする 
      教科書に頼りすぎない

   ・身を以て教える 
      自分がモデルになることで教える
全体的であり具体的でありリアルである


2 教えない教師たち
  ・多忙な教師
教えること以外に忙しすぎる教師
      教育をよくしていくことは、教師の仕事にどんどん新しい役割を
     付け加える足し算の発想でしか考えられていない
      教師の多忙化の中で授業の準備や研究の時間が削られていく 

  「忙しすぎるときに時間を削るのは授業準備だ。子どもには分から
      ないと誰からも文句を言われないから」
  |
社会が教師に求める多様な役割の前に教えない教師が増えていく

   ・教育目標と学習活動の曖昧なあるいはのんきな関係

   ・「考える」ところで「教えること」をしない誤解
      手段であったはずの活動や体験の価値が強調されるあまり、活動
     を促すこと、体験の場を与えること自体が教育の目標になってきて
     いる

   ・意欲や関心は「学力」なのだろうか?
「意欲関心態度」を「学力」の一部に組み込んだことで目的と手段
     との関係は曖昧になってしまった
= 「教えること」と「教え込み」の混同
※ 授業の自動化が進み教師は教えなくなる

   ・身を以て教えることのできない教師
「プロセスを具体的に示す」ことができない教師
目の付け所 が一番の問題
目の付け方

   ・頭の働かせ方を示す

   ・教えることを教える

   ・中教審が使う「個性」という言葉の意味は?
「個性」を別の言葉に置き換えてみる
       → 個性がよい意味でしか使われていない なぜか? 

   ・「考える力」の教育の難しさ


3 教えることの復権を目指して
・なぜ教えるのですか

・社会的な役割としての「教えること」

・知性によってしか解決できない社会的困難
      教えることのリアリズム

   ・練習の場としての学校

   ・失敗を組み込んだ練習の場
失敗を許しつつ「分からないことを分からせる場、できなかった
     ことをできるようにさせる」場が学校である

   ・もう一度教師になる
「明日もまた教室に立って教えたい」
教師は教室で強大な特権を与えられている
           ∥
        ◎ その特権をどう使うのか? 






☆「人の縁」(宮本常一『見聞巷談』八坂書房 2013年より⑥)【再掲載 2014.2】

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 70年あまりも生きてくると実にいろいろの人におうた。

 そしてあうことによって私の人生のかえられてしまった例もある。



 昭和6年頃であったと思う。


 私はからだを悪くしていて郷里で療養していたのであるが、退屈しのぎに
購読していた「旅と伝説」という雑誌で昔話を募集していたので、母や祖父
からかいた話をかきためて投稿してみた。


 期日はすぎていた。


 ところが募集者の柳田国男先生から手紙をいただいて、そういう話をもっ
と集めるように、さらに古老からいろいろ聞き取りをするようにとすすめら
れた。


 その後先生からたびたび手紙やハガキをいただき、次第に民俗学という学
問へのめりこんでいき、先生には特別に可愛がっていただいた印象がつよい。



 先生にお目にかかったのは昭和9年であったが、学問の重要性を説かれて、
本気になって民俗調査にあるくようになった。


 そして仲間の友だちと大阪民俗談話会を作って毎月集まりを持った。


 その会へ昭和10年4月に渋沢敬三先生がおいでになり、やがて渋沢先生
のすすめでその主宰しておられる研究所アチック・ミューゼアムに入所した
のは昭和14年10月であった。


 私には青雲の志というようなものもなかったし、また特別の才能もなかっ
た。


 きわめて平凡な農家の子であったのだが、そのおかげで骨おしみをするよ
うなことはなかった。


ただそれだけの人間でしかなかったのだが、そしてまた一つの学問を追いか
けるようになって実に多くの人にあう機会を持った。


 そして教えられることが多かった。



 その人たちの中で特に印象に残ることのある人びとのことを考えてみると、
それぞれ生きている世界で、一つのことを熱心に追いつづけ、きずきあげて
いきつつある人であった。


 学校の先生であったり、役場の職員であったり、農民であったり、漁民で
あったり、いろいろであるが、それぞれの世界にじっくりと根をおろし、実
に誠実に生きていた。



 兵庫県の山中で出逢った村長さんは時の農商務大臣が

「あなたのような人を大臣にしてみたい」

といったというが、まさに大臣の器であったと思う。


 この家を訪れるといつも「いらっしゃい」とは言わず「おかえりなさい」
と挨拶された。


 するとこちらも「ただいま」と言って訪れねばならぬ。

 
 その家を立ち去るときも「いってまいります」でないと調子がわるい。


 実はそういう人たちが日本を支え育ててきたのだと思う。



 昭和20年に日本が戦敗れたときも、私は多くのすぐれた野の人たちのこ
とを思いうかべて日本はかならず立ち直ることができるであろうと思った。


 そうした人たちに対する信頼が私をここまで歩きつづけきせたことにも
なっている。


 実に多くのすぐれた人たちにあうことができたのを私は何よりもありがた
く思っているが、私白身は周囲の人びとに対してどれほどのことをしてきた
のであろうかと反省させられることが多い。

(「国立社研通信」41号、社会教育研修所、昭和54年10月)

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鷲田小彌太さんはこんなことを ⑯-「新学問のすすめ」マガジンハウス 1997年 (4) /「『見物』の精神」 加藤秀俊 昭和58年 『自分の著作について語る21人の大家』より【再掲載 2017.1】 [読書記録 一般]


今回は、9月21日に続いてわたしの読書ノートから、
「鷲田小彌太さんはこんなことを」16回目、
「新学問のすすめ」4回目の紹介です。




出版社の案内には

「楽しく生きるために、何をどう学び活かしていくか。仕事と生活に役立
 つ『新・学問』の快楽的修得法。」

とあります。



今回紹介分より強く印象に残った言葉は…

・「本居宣長は34歳で賀茂真淵門下になる。直接でなく在野独学。
  急ぐが急ごうとしない良き教師」


・「…博識は必ずしもよくない 言葉の詮索に拘泥しなくてよい…」


・「合理主義は虚学である。
『人間は理性だけでなく感情を基本とする存在だ』」





もう一つ、再掲載になりますが、加藤秀俊さんの
「『見物』の精神」を載せます。
昨年出版された『九十歳のラブレター』には静かに心を震わされました。




<浜松のオリーブ園>

浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。
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<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

  ものづくりのまちとも言われる浜松。
 山田卓司さんのすばらしい作品を 
 ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
 お近くにお寄りの時は ぜひ お訪ねください。







☆鷲田小彌太さんはこんなことを ⑯-「新学問のすすめ」マガジンハウス 1997年 (4) 

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◇人はなぜ学問をするのか(2)

□学問論「三態」
学問は野にある
①富永仲基(とみながなかもと 1715~1746 )
最初のイデオロギー批判の原理
「加上」の論理
        前の説を批判 自説を
弁舌の術 ~ 大衆化・俗流化
早熟で「異端」の運命
     仲基は若すぎた
       ゆっくり熟成することに耐えられなかった

  ②本居宣長(もとおりのりなが 1730~1801)
初学者向けの熟成した学問論
木綿問屋
       → 医師  
         京都へ留学23~28歳 町医者に
34歳で賀茂真淵門下 
         直接でなく在野独学
      急ぐが急ごうとしない良き教師
『古事記伝』
         - 初学者用『宇比山踏』
『宇比山踏』
① 持続が大切
② 奥まで極めようとする主専攻を決める
③ 本を読む時ざっと目を通し大意をつかむ
別の本を読むと分からなかったことが分かってくる
④ 古典の註釈を作ることを心がけたい
註釈は学問の基本だ
⑤ 初学者は真の書,声価の定まった書から始めるのがよい
⑥ 博識は必ずしもよくない
⑦ 言葉の詮索に拘泥しなくてよい
⑧ 著述を前提として読むのと読まないのとでは理解が大い
        に違う
      ◎実証学を開いた本居宣長
 『古事記』は事実と主張
         → 万世一系の国体論者 
             戦後落ちた偶像に
◎「神」は「実物」であり現れるものと解している
= スピノザ「神は自然である」
◎「もののあはれ」論
  自然の感情 素直な心の学の基本 過度な感情を排した

信念と信仰(過度な信念)を区別
◎イデオロギー(虚学)批判
合理主義に対抗したスピノザ,ヒュームの流れ
「人間は理性だけでなく感情を基本とする存在だ」

    合理主義は虚学である

  ③福沢諭吉(1834~1901)
一身立つ 実証精神の典型 福沢諭吉・高橋亀吉・石橋泰山
「一身立って一国立つ」
一身=心と身
言動の自由を獲得する手段が学問
学問こそが「私立活計」の道
一国立つ 政治と学問
政治からの独立のために官学の私学への転換を要求

◎大学の学問の「私立活計」
 自由競争の必要








☆「『見物』の精神」 加藤秀俊 昭和58年 『自分の著作について語る21人の大家』より【再掲載 2017.1

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□近代化はまず物から


□日本人は実物を見ると納得する 
  = 物見遊山


□博覧会の好きな日本人


□パック旅行は日本の先進性
 近世以降これほど安全に交通ができた国は他にあまりない
  東海道は親切  
    二里おきに宿場
  団体旅行が多い
    ← 講集団の旅行


□2・3年で全国に広がった人力車
 明治の発明 
    人力車 和泉要助 文明開化のシンボル
日本の対大陸貿易の輸出品目の上位に
  東南アジア盛んに「リキシャ」「リキショウ」


□勘で物をつくる
  直感力 
   - 宇和島の軍艦・種子島の銃 
日本人は世界一勘のいい民族


□アナログ型とデジタル型 
  日本人の直接体験主義
  経験と体験の違い


□明治  
  制度は流動的だが物質文化は確実に地歩を固める

  ◎進取・オッチョコチョイ
  明治初期
 個別的な物質文化が次々に入ってきて,それを思想や制度が後から
   息せき切って追いかける
   = 実在の世界に直接ふれることを好む

    ◎近代化の推進力 → 見る機会が次々に
「見物」見世物=見物産業
博覧会,展覧会
修学旅行
    … 講集団の旅が原形 
    = 物見遊山
「遊覧本位」柳田国男
     |
    「実物」を通して諸々の新発明が刺激された

   近代化の奇跡
庶民レベルの発明心 = 日本人の好奇心
  「仕掛け」への好奇心
  ◎ 日本人は徹底的な好奇心を動員してブラックボックスと見えるものを分析
   して応用した


□日本人 - 日本文化  
  ① 推論的シンボルよりも提示的シンボル
② デジタルよりもアナログ

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