SSブログ

「小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」適菜収 講談社α文庫 2018年 ③(最終) /「倒れないでくれ!教え子たちよ」  『普通の教師が“普通に"生きる学校―モンスター・ペアレント論を超えて』小野田正利 時事通信社 2013年 より【再掲載 2013.7】 [読書記録 一般]

今回は、2月8日に続いて、適菜収さんの
「小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」3回目の紹介 最終です。



出版社の紹介には

「小林秀雄といえば、最初に来るのは難解な批評家という印象だろう。食わず
 嫌いの人もいるかもしれない。だとしたら、あまりにももったいない。いま
 読めば、現代日本社会の混乱の原因を小林がどれほど鋭く、正確無比に見通
 し、警告していたかを知って驚嘆するにちがいないからだ。半世紀も前から
 小林は、大衆化が招く悪を予言していた-「改革」という名の破壊を企む勢
 力の乱立に今こそ投げかける、真の保守=小林秀雄の明察。」
 
とあります。


今回紹介分から強く印象に残った言葉は…

・「自由の暴徒はアナーキズムに行き着くし、平等の暴徒は全体主義に行き着
  く。こうした理解の上イデオロギーを警戒するのが保守である。必要なの
は『人間のさまざまな生態』に準じた、節度ある自由と節度ある平等だ。
政治は計算ではない。政治は『動いているもの』をそのまま扱う職人の手
つきである。小林は、固定化した思考、つまりイデオロギーを批判した。」


・「政治家は文化の管理人、ないしは整理家であって、決して文化の生産者で
  はない」


・「学問を身に付けているかどうかで賢者と愚者の違い。ここでいう学問とは
  『現実に即したもの、世の中に対する姿勢がきちんとしているかどうか』
  ということ。」


・「政治家には信念はいらない。必要なのは常識である」







もう一つ、再掲載になりますが、小野田正利さんの
「倒れないでくれ!教え子たちよ」を載せます。
先日、保護者からの電話への対応をしている担任の代わりに
その学級の朝指導をしました。
わたしが若い頃は、子どもたちが朝の会をしている裏で、
教員の打合せの時間が毎日あったことを思い出しました。
担任がいなくても、特に問題は起こりませんでした。
それが、学年で一人、子どもたちの様子を見るようになり、
打合せの回数が週に3回になり、
週に1回になり、
ついには夕方に行われるようになりました。
夕方の打合せも毎日から、週に3回、今では週に1回となっています。
打合せの時間は勤務前、勤務後の時間に。
数年前、定年退職するM先輩の言葉を忘れません。
「いつの間にか学校が学びの場から社会福祉の場になってしまった」



<浜松のオリーブ園>

浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。
2.jpg





<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

  ものづくりのまちとも言われる浜松。
 山田卓司さんのすばらしい作品を 
 ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
 お近くにお寄りの時は ぜひ お訪ねください。





☆「小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」適菜収 講談社α文庫 2018年 ③(最終)

1.jpg

◇保守にとって政治とは何か(2)

□政治について
   小林「ぼくは政治が嫌いです」

  ◎ 自由の暴徒はアナーキズムに行き着くし、平等の暴徒は全体主義に行
   き着く。こうした理解の上イデオロギーを警戒するのが保守である。必
   要なのは「人間のさまざまな生態」に準じた、節度ある自由と節度ある
   平等だ。
             |
  ◎ 政治は計算ではない
    政治は「動いているもの」をそのまま扱う職人の手つきである。小林
   は、固定化した思考、つまりイデオロギーを批判した。
 

□マイケル・オークショット
   安倍政権
    「この道しかない」といった安倍政権のスローガンも含めて、保守の
   対極にある発想
   |
   保守主義者は人間理性を疑う
    自分自身の判断すら確信することはない
   |
    保守主義の代表的理論家であるオークショットは、政治とは己の夢を
   かなえる手段ではないという
   |
   保守思想
     統治者の職務は規則を維持するだけのこと
    = レフェリー   節度を保つ

  ◎「政治家は文化の管理人、ないしは整理家であって、決して文化の生産者
    ではない」


□スローガンとしての思想
   近代は二つのタイプの人間を生み出した(オークショット)  
     ① 判断の責任を引き受ける「個人」であり
② そこから派生した「出来損ないの個人」
     |
     浮遊し、自己欺瞞と逃避を続け、自分たちをあたたかく包み込んで
    くれる「世襲?」、正しい道に導いてくれるはずの強力なリーダーを求
    める〇になった。 
        |
     そこでは、統治者の個人的な夢や思想が国民に押し付けられる

  ◎ 保守主義者は変革を否定するわけではない。急進的な改革を否定する。
     ~ 政治からは、スピードを除外しなければならない


□政治もフォームである


□福沢諭吉の視力
   学問を身に付けているかどうかで賢者と愚者の違い
   学問
   「現実に即したもの、世の中に対する姿勢がきちんとしているかどうか」
 

□全体主義の構造
 「この驚くべき独断の書から感じられるものは、一種の邪悪な天才だ。ナチ
  ズムとは、組織や制度ではない。むしろ燃え上がる欲望だ。その中核は、
  ヒットラアという人物の憎悪にある」ヒットラアと悪魔

  近代人の「徹底した自己喪失」という現象  ハンナ・アレント
    全体主義は、先導する側と先導される側が一体となり、拡大していく
   純粋な大衆運動である。
          |
  ◎ 全体主義は大衆の感情に火をつけることで発生する
 

□現実主義について
  ◎ 国や社会の崩壊は言葉の乱れから始まる。
            |
  ◎ 大衆社会の腐敗の成れの果てに登場した愚かな総理大臣が「政治も外
   交もリアリズムが大切だ」と言っていた。バカなんですかね。リアリズ
   ムが欠如しているから、政治も外交も失敗しているのに。
     
    刻々と変化する現実を注意深く観察する
   
  ◎ 政治家には信念はいらない。必要なのは常識である
 

□失われた歴史
   歴史とは何か   
     歴史がヘーゲルのシステムの中にあるのではない
 

□歴史は鏡である
   シュペングラー 
    「血の通った魂の告白」 ~ 共通のファーム
 

□古典とは「最新の書」である
   偉大なものは時代が生み出すものである    
      | 
   古典とはもともと半歴史的な概念なのである
 

□人生の謎
   大人になるにつれ意識は変容する
     言葉や概念で構築された世界のもろさを知る
 

□科学の悪用



◇適菜収
 1975年山梨県生 早稲田大学 ニーチェ専攻







☆「倒れないでくれ!教え子たちよ」  『普通の教師が“普通に"生きる学校―モンスター・ペアレント論を超えて』小野田正利 時事通信社 2013年 より【再掲載 2013.7】

1.jpg

◇倒れないでくれ!教え子たちよ

□教師の労働の「質」

 教有学者として齢を重ね、数十年にわたって学校の実情に触れてきた立場か
ら、特に最近感じることは、教職員が疲れはてているという「表情」だ。


 子どもたちの置かれた状況もしんどくなり、相次ぐ無茶な「教育改革」のオ
ンパレードで教職員にも「ゆとり」と「のりしろ」がなくなっている。


 苦虫をかみつぶしたような顔と、いつもせかされているという圧迫感は、も
う一押しあれば雪崩を打って倒れていくような、そんな臨界点に達しているよ
うな気がする。


 教員を経験し、大学院を私の下で学んだ者が教育委員会で働いている。


 その教え子が、休暇をもらってゼミに参加してくれた際に「労働の質」につ
いて語ってくれた。


 仕事は毎晩11時すぎまでしているが(このこと自体が異常)、

「ゆっくり昼ご飯が食べられる」

「お茶は仕事をしながら飲めるし、トイレに行くことだって難しくはない」

「家に帰れば、開放された気分にもなれる」

ことがうれしいという。


 教員だったときには、昼ご飯は5分でかき込み、トイレに行くこともままな
らず、いつ生徒指導の問題で呼び出されるか分からない緊張状態がずっとあっ
たという。


 2006年に行われた40年ぶりの「教員勤務実態調査」は、大いに意味あるも
のではあったが、世間の教職員に対する目はやはり厳しいままである。


 始発や最終電車が満員という、もともと無茶な労働実態が横行する中では、
教職員の平均勤務時問が「11時間」と言われても、

「それで? 自分の父ちやんたちはもっとひどい」

という感覚があり、教員の実情に対する理解は阻まれたままかもしれない。


「小野田先生、教員の労働の質をきちんと訴えないと、世間は理解してくれま
 せん。一日中緊張状態が続くことの意味を、分かるデータできちんと示すこ
 とが必要です」


「なるほど」

と私も思った。


 労働の中身をきちんと示しながら、正しい改善の道筋と展望を示していくこ
とが大切だろう。


 一般企業の他の職種との比較でも、公務員一般職との間でも、なぜ教員の病
気休識率が図抜けて高く、理由も精神性疾患が63%に達しているのか? 


 労働場面での裁量が比較的自由に行われるはずの教職で、それが機能せずに、
倒れたり、危険水準にある予備軍が増え続けているのか?


 もちろん元気に頑張っている教員もたくさんいる。

 とりわけ、大都市部を抱える都府県では、4ケタの教員採用数が、ここ数年
続いているため、若い先生からの存在が学校を明るくし、子どもたちを活気づ
けている。


 しかし、独身で、自宅から通い、炊事・洗濯・掃除の心配がない教職員には、
多少の頑張りがきくだろうが、一人暮らしで自活しなければいけない者にとっ
ては、食事は外食中心、洗濯ものは1週間分をまとめて洗って部屋干し、とい
う日々を送っているように見える。


 努力や頑張りにも限界がある。




□教師となった教え子からのメール

《今日は金曜なので、早めに仕事を切り上げて(とは言っても8時ですが…そ
 して仕事は土日に持ち越し)帰宅したところ、先生が郵送してくださった冊
 子が届いていましたので、 さっそく読ませていただきました。

   (一部略)

 今日で言えば、7時15分に出勤。7時30分から8時まで部活動の朝練指導。

 学年の先生と簡単な打ち合わせをして、8時10分に教室に行く。8時18分
 から朝の合唱練習を始めるために、時間ぎりぎりにやってくる生徒をせかし
 て大きな声をあげ、時計とにらめっこで、慌ただしく時間が過ぎていきます。

 授業と授業の10分の合間は、時間ぎりぎりまで自分の担任するクラスの生
 徒たちが、ちゃんと教室にはいるのを確認してから、自分自身の担当授業の
 ために教室に移動します。

 午前中に3時間の授業を行い、残りの秋の一時間は生徒が提出した生活ノー
 トの点検をして使い切ってしまいます。午後の授業の2時間のうち、空き時
 間の1時間は、生徒が提出してたまりにたまった社会科のレポートをチェッ
 クして終わり。

   (一部略)


 掃除時間は、なかなかまじめにやらない生徒よりも一生懸命すみずみまで掃
 除をし、帰りの会を終えて、教室から生徒を追い出し、生徒の下校を校門で
 確認して5時。

 今日は部活がなかったので、生徒との関わりはこの時刻まで。これが、普通
 に部活がある日だと6時下校になります。その後、生徒の提出したノートに
 コメントを書き終え、ようやく8時すぎに学校をあとにします、しめて5時
 間の勤務外労働でした。

 明日は土曜日で授業がない日なのでこの程度ですが、翌日に授業があればそ
 の準備でさらに遅くなることのほうが多いです。

 最近は個人情報の問題もあるので、仕事も持ち帰りづらくなっています。

  (一部略)

 しかし、娘たちをお風呂に入れる時間には間に合わず、寝顔しか見ることの
 できない日ばかりです。妻には迷惑かけています。

 話変わって、○○県には研修校制度というものがあり、指定された研修校と
 もなると、毎日の勤務は夜12時を超えて当然という学校もあります。

  (一部略)

 …実際そのような研修校勤務を乗り切った先生方は、確かに力のある先生ば
 かりのように思います。けれど、時間外勤務を前提として日々の余裕がまっ
 たくない生活を5年も強いられるのは…。
 
  (一部略)

 今年、家庭訪問で生徒宅を回った折は、今までになく「先生も大変ですねえ」
 という言葉をかけてもらいました。これも、小野田先生が各地でがんばって
 くださっているおかげだと、本当にありがたく思っています。(一部略) 》




 教え子からのメールの発信は夜の11時だった。私は次のような返信をした。




「たっぶりのメールありがとう。状況を彷彿とさせる内容ですね。私たち教育
 学者が、きちんと社会全体に向かって、今の学校をめぐる状況を、分かるよ
 うな形で伝え切れていないもどかしさがあります。

 大学教師27年間の中で、教師になった教え子をうつ病による自死でなくし
 たこともあります。

 うつ病で数回休職して不安状態の中でこの春から再び教壇に戻ったものの、
 残念なことに退職した者もいます。

 あなたへのお願いなのですが『どうか自分の心と身体を大切に』ということ
 です。

 それはあなただけのものではなく、奥さんや愛娘のものでもあるのです」

<ポイント>

① 教師となった教え子に「頑張り過ぎるな!」と言わなければいけないほど
 状況が悪化している。


② 教師たちの過酷な労働実態を、どうすれば世間に伝えられるか。教育学者
 たちがその使命の一部を負う必要かある。


③ 教師労働の「質」に焦点を当てる研究が必要がある。

nice!(129)  コメント(0) 
共通テーマ:学校