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「忘れないでおくこと 随筆集あなたの暮らしを教えてください2」暮しの手帖社 2023年 ⑥ /「児童生徒に聞かせたいさわやか1分話」柴山一郎 学陽書房 1993年 ⑤【再掲載 2017.5】 [読書記録 一般]

今日は6月22日、土曜日です。


今回は、6月15日に続いて暮しの手帖社から出されている
「忘れないでおくこと 随筆集あなたの暮らしを教えてください2」
の紹介 6回目です。


出版社の案内には、

「豪華執筆陣で贈る珠玉の随筆集『あなたの暮らしを教えてください』
は、『暮しの手帖』の本誌と別冊に寄せられた『暮らし』がテーマの随
筆作品を選りすぐり、全4冊にまとめたシリーズです。
 第2集は、日々の気付きにまつわるお話を集めています。当時の話題に
触れて感じたこと、近所の猫やお店のこと、仕事や家事を通しての発見
や、趣味や学びのなかで思うことなど、小さな日常をいつくしみたくな
る一冊です。」

とあります。


「わからない」、「だれがわかるのだろう」などと思う本、
わたしにはたくさんあります。



もう一つ、再掲載になりますが、柴山一郎さんの
「児童生徒に聞かせたいさわやか1分話」⑤を載せます。




☆「忘れないでおくこと 随筆集あなたの暮らしを教えてください2」暮しの手帖社 2023年 ⑥

◇「わからない」を語りたい 花田菜々子
 
 最近「わからなかった」本の話を誰かとすることにハマっている。


 書店員として働くようになってから20年弱。書店員というのは職業上、本
のことを「わかっている」ていで話をしなければならない仕事だ。


 あれは名作ですよね、話題のあの本が売れているのはこういう理由でしょ
う、この本の素晴らしいところはこんなところなんです、などなど。


 噓は言わないが、わざわざネガティブな感想を表に出すことはほとんどな
い。


「わからなかった」は、本来はネガティブな感想ではないのだが、「読む価値
がなかった」の婉曲表現だと思われてしまうし、何より書店員としての見栄も
ある。


 そう感じていた私が「わからない」に目を向けたきっかけは、最近文学賞
を受賞したある小説を読んだときに全然面白いと感じられなかったことだっ
た。

 う一ん。

 よさがわからない。

 だが、たくさんの書店員が、心から絶賛しているようだ。

 駄作ということではなさそう。

 隣で仕事をしている文芸好きの同僚にふと尋ねてみた。

「〇〇って読んだ私、実はよくわからなかったんだけど」

 すると意外なことに、同僚の目はパッと見開かれ、輝いていた。

「実は私もわからなかった」


 だが、賞の批判や作品の悪口に話がそれてしまってはつまらない。私はそ
の作品を面白いと感じる人がなぜそう感じられたのかを、純粋に知りたいだ
けだからだ。


 仕事中にもかかわらず、ああでもないこうでもないと意見を交わす。


 話してみると、「わからない」を語る言葉には意外な豊かさがあることに
気づく。


 まず、自分が一応その本を読めていて、「わからなさ」を言語化できていな
いと話すことはできない。


 そして話すことができても、今度は、よい小説の基準、マイナスに思えた
表現方法、結末への懐疑…ロに出してみてはじめて、自分の意見の不確かさ
がはっきりと輪郭を持つ。


 たかが本の話なのに、自分の恥ずかしい内面を吐露せずに「わからなさ」
を語ることは、難しいのだった。


 「わかる」を語るとき、私たちは自分の弱さをさらさぬまま、自信を持っ
て語ることができる。


 本を読んでいて「わかる」と思うとき、私たちは幸せに満ちているし、心
強さをもらう。


 読書のいちばんの醍醐味とも言えるだろう。


 わかる本への言葉は、究極的には「とにかくいい」「すごい」という簡単で
足りてしまう。


 作品が心に飛び込んでいるので自分から近づく必要がないからだ。


 だが「わからない」は自分から近づかなければ、向こうから歩み寄ってき
てはくれない。


 そこに辿り着こうとして届かない言葉や想いはいつも不格好で、その人ら
しさがにじみ出ていて惹かれる。


 と言うわけで最近の私は、誰かのわからなかった本の話を採取することに
夢中なのだ。


 つまりそれは、本の話をするふりをして誰かの心の奥底に触れてみたいだ
けなのかもしれない。          
                             2021年1月






☆「児童生徒に聞かせたいさわやか1分話」柴山一郎 学陽書房 1993年 ⑤【再掲載 2017.5】

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[出版社の案内]
学活、「道徳」、朝会、学年集会、父母会、地域の集会、職場の話材・例
話に最適120話。『教育新聞』の「ちょっといい話」欄に連載したものを
まとめた。


◇柳生宗矩  1571~1646 武道家
人は人のために生きる。勝負は人を滅ぼす。


◇日本の諺  
  親しき仲にも礼儀あり  
   - 人間距離が必要


◇徳川光圀  1628~1700
苦は楽の種,楽は苦の種。  
   - 尊皇精神


◇カント   1724~1804 フランス哲学者
 ああ,如何に感嘆しても感嘆しきれぬものは,天上の星の輝きと,
  わが内なる道徳律


◇ペスタロッチ 1747~1827 スイス教育者
一切合財他人のために。自分のためには何物も。
- 自発性・直観・労作の教育方法


◇ゲーテ   1749~1832
涙とともにパンを食べたものでなければ人生の味は分からない。


◇二宮尊徳  1787~1856
大事をなさんと欲すれば小さな事を怠らず勤むべし


◇井伊直弼  1815~1860
一期一会
-「茶湯一会集」に
会った時が別れの時 
   ~ 積極的に豊かな人生を送ろう


◇ホイットマン 1819~1892 詩人
寒さに震えた者ほど太陽の暖かさを感じる。
人生の悩みをくぐった者ほど生命の尊さを知る。


◇トルストイ 1829~1910
何を為すべきか  
   - 嘘をつかぬ 自分も有罪 命を守るため自然と闘う


◇福沢諭吉  1835~1901
独立自尊


◇内村鑑三  1861~1930
自己に頼るべし,他人に頼るべからず。


◇夏目漱石  
  智に働けば角が立つ
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