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「医者が教える正しい病院のかかり方」山本健人 幻冬舎新書 2019年 / 「一人恐怖に強迫される若者たち-彼らは,ケータイを介して常時接続しあい,互いの存在を確認しあっている」 土井隆義 筑波大学大学院人文社会科学研突科教授 『月刊少年育成』2009.2③【再掲載 2016.7】 [読書記録 一般]

今日は10月28日月曜日です。


今回は、山本健人さんの
「医者が教える正しい病院のかかり方」を紹介します。


出版社の案内には、


「世の中には様々な医療情報があふれているが、その中身は玉石混淆。
 命の危機につながる間違った情報も少なくない。そして病院に行った
 ら行ったで、何時間も待って診療は数分、医者に聞きたいことがあっ
 ても聞けない、説明されても意味が分からない等々、患者側の悩みは
 尽きない。私たちはどうしたらベストな治療を受け、命を守ることが
 できるのか?
 正しい医療情報をわかりやすく発信することで、多くの人から信頼さ
 れる現役医師が、風邪からガンまで、知っておくと得する60の基本
 知識を解説した、医者と病院のトリセツ。」


とあります。


今回紹介分から強く印象に残った言葉は…

・「病院に行く前に既往歴をできるだけ正確に答えられるようにして
おく」


・「『同じ症状が続いて困っているなら同じ医療機関に行く』のがよい。
医者には前との変化が分かるから。例外は『どうしても担当医師が信
用できない』場合」


・「『がんになったらどんな治療を選べばいい?』かには標準治療。保
険診療であり、現時点で考えられる最も有効な治療だといえるから。
『あの時点では世界中で一番勝てる確率の高い治療をわたしは選んだ
のだ』と納得できる患者さんが多いと考えられる。」


・「『救急車を呼ぶべきか迷ったらどうする?』には次の3点。①市町
村の救急相談窓口『♯7119』 ②消防庁『全国版 救急受診アプ
リ-Q助』 ③消防庁『救急車利用リーフレット』」



もう一つ、再掲載になりますが、 土居隆義さんの
「一人恐怖に強迫される若者たち」③を載せます。




☆「医者が教える正しい病院のかかり方」山本健人 幻冬舎新書 2019年

1.jpg

◇はじめに
  「後医は名医」より正確に診断しやすいから


◇病院に行く前に
  お薬手帳を持参するのはなぜ
 「その患者さんが、普段どういう病気で通院しているのか」か
    なり正確に分かる

病院に行く前に準備しておくことは?
既往歴をできるだけ正確に答えられるようにしておく

どのくらい痛いときに病院に行くべき?
① 突然痛みが発生した
       → 受診を検討
② これまで経験したことのない痛みが発生した 
       → 受診を検討

クリニックと病院、どちらに行くのがいい?
初診時はクリニック

何科に行ったらいいか分からない!どうすればいい?
近所のクリニックの医師に判断してもらうこともあり

  治療しても同じ症状が続くときは病院を替える方がいい? 
原則「同じ症状が続いて困っているなら同じ医療機関に行く」
~ 医者には前との変化が分かる
例外 「どうしても担当医師が信用できない」場合

病院に行く前にネットで検索してもいい?
学会、公的機関からの情報を 
       例 筆者「外科医の視点」

病気で困ったらまずは友達に相談するのがいい?
迷ったときは医師
     ~ たった一人より

受けたい検査があるときはどうすればいい?
必要かどうかは専門家でないと判断できない

病院に行くときは普段のかっこうでいい?
症状がある部分を医師が診察しやすい格好で病院に行く



◇医師との関係に悩んだら
症状の原因を突き止められないこともある

紹介状を書くポイント
    医師2点
     ①専門領域
     ②患者さんの自宅からのアクセス

セカンドオピニオン 
    保険診療ではない 1~4万円

医学博士(PhD)と医師(MD)は全く別の存在

出身大学と臨床力はあまり関連しない



◇がんについて知っておくべきこと
病院はどうやって選べばいい?
① まずは近くのクリニック  相談 
    ② アクセスのいい病院 
③ がん治療専門的、症例豊富な病院

がんになったらどんな治療を選べばいい?
 「標準治療」
      - 現時点で考えられる最も有効な治療 保険診療
        「あの時点では世界中で一番勝てる確率の高い治療を
         わたしは選んだのだ」  

  がんは切るべきか切らざるべきか?
標準治療  シンプルには語れないほど複雑

手術を受ける前にはどんな準備が必要?
禁煙 肥満の解消(時間・出血リスク)

余命
生存期間中央値を余命と呼ぶのが一般的 
     ~ 傾向に過ぎない

がんは予防できるのか
 自ら意識して発症リスクを下げられるものとそうでないもの
    とがある

人間ドックと自治体健診 どちらを受けるのがいい?
人間ドックは
     「結果的に不要な検査や治療を受けるリスクがある」

胃カメラとバリウム どちらをうけるのがいい?
どちらでも 
    筆者は胃カメラ 一度で済み、悔やむことがない

健診で腫瘍マーカー検査を受けた方がいい?
欠点
     - 初期の段階で異常値になることはほとんどない
腫瘍マーカー
     「専門家の指示に従って必要なシチュエーションのみ測定す
      べきもの」

膵臓がんはなぜたちが悪いのか?
見つけるのが難しい
      - 他のサインに比べて「症状が出にくい」
再発が多い
      - 手術時に目に見えないレベルのがんの転移が起こって
       いるケースが多い
 ~ 血流に乗りやすい リンパ節に転移しやすい

  免疫療法はがんに効く魔法の治療?
本庶佑 2018ノーベル生理学医学賞
      PD-1 →「ニホルマブ(オブジーボ)」
  がん細胞がわたしたちの免疫にブレーキを掛け自らが排
      除されるのを防いでいる
ポイント 
      ① 名前に注意
② まだ効果が期待できない癌腫は多い(限られる)
③ 効く人と効かない人がいる15~25%
④ 特有の副作用がある



◇いざというとき
救急車を呼ぶべきか迷ったらどうする?
軽症での救急車の利用が多い(約半数)
      ① 市町村の救急相談窓口 「♯7119」
② 消防庁「全国版 救急受診アプリ『Q助』」
③ 消防庁「救急車利用リーフレット」



◇薬の知識
先発品とジェネリック どちらがいい?
ジェネリックは安いが全く同じというわけではない

生活習慣病の薬は一度飲み始めるとやめられないのか?
恐ろしさ 「特に症状がないまま徐々に蝕まれていく」
    「中止できる可能性もある」


<以下略> 







☆「一人恐怖に強迫される若者たち-彼らは,ケータイを介して常時接続しあい,互いの存在を確認しあっている」 土井隆義 筑波大学大学院人文社会科学研突科教授 『月刊少年育成』2009.2③【再掲載 2016.7】

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3.同質的な仲間で閉じた世界

 多様性の時代には、あらゆる価値項目が等価に並び、従来のような序
列性が失われる。



 知識や能力にも明確な優劣の基準が見出せないから、自己に評価を下
す相手は、超越的な他者ではなく、自分と対等な他者になる。


 仲間集団からは階層性が失われ、若者たちは互いに対等な立場で評価
を下しあおうとする。


 「上から目線」を彼らが極端に嫌悪するのもそのためだろう。


 また、仲間内の評価だけではなく、大人から受ける評価についても、
メンタルには対等な他者からのものと感受されるようになる。


 こうして、たとえば学校においても、教師と生徒は対等だという意識
が広まっていく。


 この地平に、抑圧的な大人という敵はもはや存在しえない。




 若者たちのあいだに共通の敵が想定されていれば、彼らの関心の眼差
しはみな一様にそちらへ向けられるから、自分たちの人間関係のあり方
それ自体がクローズアップされることはさほど多くない。


 しかし、そのような共通の敵を見失った世界では、その抑圧に対する
反動形成として共有された対抗文化もまた衰退していく。


 かくして、若者たちのあいだに共通の関心事は成立しづらくなり、そ
の眼差しが注がれる対象も外部には見出せなくなっていく。


 共有された眼差しの対象として最後に残されるのは、互いの関係性そ
れ自体である。


 ところが、そこで営まれる関係性とは、自らの肯定感を維持していく
ために唯一の基盤となってくれるものである。


 もはや一人で立つことが困難になった自分にとって唯一の支えとなっ
てくれるものである。


 だから、そこでは、できるだけ自己承認を得やすい同質的な他者が求
められがちになってしまう。



 前回も指摘したように、あらかじめ客観的な評価の物差しがそこに存
在するわけではなく、他者がどのような反応を示すかは前もって予想し
づらいから、人間関係にも安全パイが求められ、できるだけ同質の人間
だけと結びつこうとするのである。



 他方、異質な人間とは、適度な距離をもって付き合ったり、あるいは
対決を試みたりするのではなく、そもそも最初から認識対象の圏外へと
押し出してしまおうとする。


 自分の内部に確固たる肯定感の基盤があって自己が安定していれば、
異質な人間とも接触を保ちつづけ、場合によっては対立を表明すること
もできよう。


 しかし、いまはその基盤を自分の内部にもちえず、入閣関係に対して
依存的になっているために、そこに立ち現われる異質な他者は、自己肯
定感の基盤を根底から揺さぶってしまうのである。


 このような事情を鑑みれば、自分にとって異質な人間を認識の圏外へ
と追いやり、同質な相手だけと接続しあおうとする今日の若者たちの心
性は、一般によく言われるようなケータイの普及によって広まった現象
ではない。


 しかし、そのような志向を示す人たちにとって、ケータイを端末とす
るネット環境が、きわめて好都合な世界であることは事実だろう。


 ケータイのおかげで、いまや私たちは、いつどこにいても、自分が繋
がりたい相手だけと即座に繋がりあうことができるようになっているか
らである。



 現在のようなネット環境がととのう以前は、時間と空間を隔てた相手
とコミュニケーションをとるための手段がかなり限られていた。


 理想の相手と繋がりあうためには、自分にとって不都合な人間とのコ
ミュニケーションも途中で経由しなければならなかった。

 たとえば、中学時代の私などは、ガールフレンドの自宅へ電話をかけ
るとき、


「あの怖そうな父親が出たらどうしよう」


と緊張しながらダイヤルを回したものである。


 自分にとって心地よい人間関係を築くためには、同時に不都合な人間
とも否応なく付き合わざるをえなかった。



 しかし、近年は、異質な人びとが時間と空間の制約を超えて、互いに
繋がりあうことを技術的に可能にしたネットという革新的なシステムが、
逆に、同質な人びとが時間と空間の制約を超えて、互いに繋がりあうこ
とを容易にする手段として、実質的には機能するようになっている。


 ネット空間へと聞かれたケータイの小さな窓を覗き込むことで、面倒
で不都合な人間とはいっさい触れ合うことなく、自分にとって心地よい
相手だけと即座に人間関係を築くことができるようになっている。


 たとえば、近年の若者たちのあいだでは、地元つながりによる人間関
係への依存が強まっている。


 高校へ進学したり就職したりして生活圏が拡大し、雑多な人間と付き
合わざるをえなくなった場合でも、中学時代までの人間関係をそのまま
ずっと緊密に保ち、その地元つながりを中心に日常生活を営もうとする
傾向が強まっている。


 時間や場所や相手の都合を気にせずに互いに繋がりあえるケータイ・
メールを駆使することで、それが実際に容易になっているのである。



 では、ケータイという文明の利器を駆使することで、今日の若者たち
は一人恐怖から解放されているのだろうか。


 前回も述べたように、けっしてそうではない。


 同質な人間との常時接続を可能にしてくれるケータイは、一人恐怖を
解消してくれる便利なツールのように見えて、じつはそのように機能し
てはいない。


 ケータイ自体はニュートラルな装置だから、使われ方しだいで、逆に
一人恐怖を煽るツールとしても機能しうる。


 じっさい、秋葉原で事件を起こした青年にとって、ケータイは自己の
疎外感を強めるツールヘと変貌してしまっていた。

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