今回は、12月29日に続いて、わたしの読書ノートから、
「草柳大蔵さんはこんなことを」44回目の紹介です。





今回も、「続午前8時のメッセージ」(静岡新聞社)からの紹介です。




出版社の案内には、


「評論家・草柳大蔵が送る待望の第2弾。家庭、学校、社会、さまざまな角度から子ども
 の心を見つめ、輝く未来のために祈りを込めて語る珠玉の99話。」


とあります。



無駄は無駄でない、そう感じることが確かにあるようにわたしは思います。





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☆草柳大蔵さんはこんなことを44



☆「続午前8時のメッセージ」草柳大蔵 静岡新聞社 2002年(10)


◇無駄があるのが本当

 夏野菜が八百屋さんの店頭に売り出され始めました。


 私は、やはりハウス園芸の野菜と露地で育った野菜というのは、何か顔つきが違うよう
に思うんです。


「顔つき」って変でしょうか? 


 ナスを見て思ったのですが、皆さんもご存知のように、昔から

「親の意見となすびの花は、千に一つの無駄もない」

という都々逸がありますね。


 これが本当はうそで、実は無駄があるのだそうです。


 しかし、もともと自然というのは無駄があるのが本当なんですね。


 というよりも、自然ぐらい大きな無駄をして、そして良いものをつくっている、そのス
ケールの大きな命の連関とは大変なものですね。



 例えば私たちの脳神経の回路を考えてみますと、これは実は、85%が消えていき、残
った15%の回路が働いているそうです。


 それから免疫細胞。この免疫のシステムも、実は生まれたときから90%以上が消えて
いって、残った10%の免疫システムが、いきいきと私たちに免疫の機能を与えてくれて
いるのだそうです。



 お母さんのお腹の中にいる胎児のころ、赤ちゃんは握りこぶしをしています。


 この握りこぶしは、一つの肉塊なんですよ。

 一本一本離れていないんです。

 そしてお腹の中で育っていくにつれて、いよいよ出産、世の中に出る直前に、指と指の
間の細胞が

「では、私はこの辺でおさらば致します」

といって、細胞が消えていき、五本の指は隙間ができて、人間の手になって出てくるんで
すね。



 これはちゃんとそのように遺伝のプログラムの中に、細胞自身が自然死(アポトーシス)
をしていくということが書き込まれているんですね。


 それで赤ちゃんというのは、握りこぶしからちゃんと指が五本揃った手になって出てく
るということなんです。


 本当に驚きました。


 世間一般には「無駄の効用」という言葉で語られていますが、もう少し丁寧にいうと、
「効用」を考えての「無駄」ということじゃないかと思います。


 ですから、人のしている仕事とか使い勝手の品物によく目を近づけてご覧になってみれ
ば分かるように、はじめから品物のメカニズムに「ゆるみ」や「あそび」があるのです。


 この部分があるので落ちたときのショックが吸収されたり、カが逃げたりして、品物は
ゆがんだりしないのです。


 ああ、そうそう。


 若い女の人は着物をきゅうきゅうに着るので、歩きはじめると着くずれがしはじめます。


 着物の中の身体の動きの計算をしていないからです。


 着慣れた人の着付けは身動きがゆっくりとできるように、そのぶんだけ着物と身体の間
に「あそび」のある着付けをする。


 人生、知恵です。


 知恵はゆとりです。


 この際、ゆとりはあそびではないことを、ぜひ子どもたちに伝えてやりたいと思います。