今回は、11月17日に続いて神崎宣武さんの
「図説 日本のうつわ」の紹介 4回目です。


神崎さんは宮本常一さんとの関連の深い民俗学者であり宮司さんでもあります。
「旅の文化研究所」の所長さんも務められていました。
幅広い知識に裏打ちされた「うつわのこれまで流れ」、よくわかりました。


出版社の案内には、

「わん、はち、さら、ぜん。日本は、多種多様の食器をつくりだしてきた。
 食器の豊かなかたちと色彩を紹介し、縄文から現代までの食器の歴史をた
 どり、日本人の食器文化を探る。」
とあります。




今回紹介分より強く印象に残った言葉は‥

・「鍋釜は従来通り土器を重用。須恵器は熱伝導に過敏すぎて割れやすい」


・「塗りものとやきものの併用 = 『膳組文化』の走り」


・「平安末~鎌倉初期に須恵器が食器の主流に 」


・「ケの主食が粮飯である,或いは粥や雑炊であるゆえ食器としてのワンを
  生んだ」





もう一つ、再掲載になりますが、岩上薫さんの
「お母さんちょっと」⑦を載せます。
ここに出ている「お母さん」は現在「おばあさん」になっています。






<浜松のオリーブ園>

浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。






<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

  ものづくりのまちとも言われる浜松。
 山田卓司さんのすばらしい作品を 
 ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
 お近くにお寄りの時は ぜひ お訪ねください。







☆「図説・日本のうつわ」神崎宣武 河出書房新社 1998年 ④



◇うつわの展開 [古代・中世]
  
□須恵器の器種 

 大型 - 甕や壺  
   水や酒,食物の保存  
特に壺の発達 
     広口壺 ・細口壺・短頸壺・長頸壺
壺の変形 - 扁平な器体の提瓶や平瓶

◎ 酒の仕込みと貯蔵や運搬の機能,硬質な須恵器の出現をもって
      初めて可能となった。   


 調理用具 
   擂り鉢の本格的普及 
     擂り鉢
      ~ 頑丈さが必要 = 須恵器ならでは

   しかし,鍋釜は従来通り土器を重用
  須恵器は熱伝導に過敏すぎて割れやすい

煮沸容器分野
     鉄鍋・釜の普及をもって土器が後退


 食器 
   坏・埦・盤・皿  大小鉢類
| 中でも坏が多い 蓋付きの坏が多い
漆器も
    … 塗りものとやきものの併用 =「膳組文化」の走り
「伴大納言絵詞」「信貴山縁起」「餓鬼草子」

   食台(膳)として漆器の高坏
その上に須恵器であろう坏,あるいは埦 ,それに飯が高盛
汁気のないおかずは高坏の上に直に置いた?

平安末期 
     塗りもの高坏の上に焼き物の坏や皿を置く仏事の形式
  


□酒宴と器

「餓鬼草子」酒宴の様子
高坏  -  脚 その上に須恵器の小皿が5~7枚

   高坏の両脇に白木地折敷 
     一方に果物,一方に高坏つき坏

   別に平底の坏が直に畳の上に
     宴会では主客はひとつ 
      → 回し飲み


 鎌倉初期「一遍聖絵」「絵師草子」
 「一遍聖絵」筑前武士の酒宴
折敷きの上に肴が直に乗っており銘々用でない
= 乾き物を適宜つまみ合う

   「絵師草子」
      銘々に折敷き それに肴を盛った小皿が3枚
巡り酒杯が一つ

◎ 平安末~鎌倉初期 
        須恵器が食器の主流に
        
    ※ 坏と皿については貴族も武士も下級官吏も
  


□漆器の椀 

 ワンの分野では漆器の椀が出回っていた
「一遍聖絵」
      漆器椀 - 乞食の食事風景

      主食 
        ケ(日常)は「飯」(粮飯)雑穀や根菜類を混ぜたもの
ハレ(非日常)は「御飯」(白米) 飯と御飯

◎ ケの主食が粮飯である,或いは粥や雑炊であるゆえ食器と
        してのワンを生んだ  

何やかにやら混ぜ込んだかて飯が全て = 副食はない
黒塗り漆器椀 - 浅鉢 
    テッパツ(鉄鉢)-托鉢用

◎ 遊行の僧や道行きの乞食たちの必需品の一つが漆器椀と箸

◎ 食器分野での漆器の普及は膳組の中よりもむしろ移動生活の中で
     の「一椀」から始まった
  


□漆器の膳 

 漆器膳組み  鎌倉時代~

      接着剤として 細工物かためる→武具塗装

塗り
      仏具・仏事の器
禅宗系の精進料理から  
        道元が宗から永平寺
宇治万福寺系の普茶料理
  


□料理人と膳の形式  

 料理人 = 庖丁人

 結解(けっけ)料理  
   寺の倉が豊かになった祝い

式三献
    「式献」 
       原型は酒一盃と肴一品

武家社会
    「固めの盃」「契りの盃」
      -「盃事」「三三九度」
  


□本膳料理の発展 

 室町時代
   四条流,山陰流,大草流,生間流

主流は京包丁  
 
    
 朝廷,幕府,公家,武家
三膳をもっての本膳料理の完成
     = ハレの日本料理の完成
  本膳料理略式 
     ~ 会席料理(=一つの膳に盛り込んだ形式の宴会料理)
句会席~懐石料理(腹つなぎ 元は質素)


  安土桃山時代  
    金縁や蒔絵などの華美な漆器で本膳構成
あくまで黒と朱を基調とした無文
土もの  
      土師器・須恵器・陶器


  中世  
    常滑焼き,信楽焼,備前焼  
    ※ 赤褐色・無釉

小型食器より甕や壺,擂り鉢など大型
本格的釉薬掛けは文禄慶長の役(1592-1598)以後

庶民  階層差  質素

     「一汁一菜」一椀か二椀  塗りもの
須恵器か陶器の坏や皿
それが白木地の折敷か粗末な塗りものの膳にのる
  ↓
古代末から近世・近代を通じて同じ







☆「お母さんちょっと」岩上薫 学陽書房 1985年  ⑦【再掲載 2012.8】

◇原点生活

 私が初めて教師になったとき、校長先生が次のような意味のことばを述べら
れました。


「私たち夫婦は共に教員であるから買い物などの時間がなかなかとれない。だ
 から、ついタクシーを使って時間の短縮をはかっている。けれども、子ども
 たちを連れて買い物に行くときは決してタクシーを使わない。子どもにはお
 金のありがたさを知ってもらうためだ」


 このことばは、いわれた当時は何も感じませんでしたが、しばらくしてから、
記録ノートをめくってみてしみじみ味わいました。


 まったくその通りだということを。


 と同時にこのことばから、子どもには、いつも原点にかえって教えなければ
いけないということを悟ったのです。


 タクシーで行けば早いのに、歩きやバスで行くことによって、お金のありが
たさを知らせるのと同じように、今、私たちが使用している物のありがたさを
知らせる必要があります。


 電気洗たく機があるから、それにほうりこめば洗える便利さ、ミシンを踏め
ばすぐにでき上がる効率のよさしか知らない子どもたちに、手で下着を洗わせ、
手でぞうきんを縫わせることによって、その大変さ、親や祖先の苦労を知らせ
るというものです。


 こうした原点にもどった生活を通すことによって、今の生活の豊かさをしみ
じみと味わわせると同時に、体験を通して新しいイメージやアイデアを生む能
力や態度を身につけていくのです。


 したがって、私は、子どもにはなるべく不便な生活をさせた方がよいと考え
ます。


 子供部屋などもシンプルな学習机と整理ダンスなどの最低必要なものだけで
いいのです。


 あとは自分でダンボールの箱や廃乗物を利用してつくらせればよいのです。


 彼らは頼れば工夫します。困り、悩む環境の中にほうりこんでやるのです。


「原点生活」を大人がつくってやるよう、今すぐ行動に移しましょう。