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「児童相談所に思うこと-多くの児童相談所やその周辺関係者から聞いた話は、本当に驚きの連続だった-」 八木谷勝美(日本経済新聞社会部記者)『月刊少年育成』 2005年2月号より [読書記録 教育]

妻と大阪への日帰り旅行に行きました
朝早くから夜おそくまで 新幹線で…

新大阪駅で「おおさか周遊券」を購入し
一日楽しみました
「おおさか周遊券」はJRを除く大阪市内の鉄道乗り放題、
バス乗り放題、入場可能な施設多数、割引多数のお得なクーポン付き

大阪城、大阪歴史博物館、旧WTCタワー、海遊館観覧車、海遊館観光船
をクーポン券(無料)で楽しみました
海遊館にも寄りましたが 大変な人混みでした

梅田の空中遊園もたのしもうと思ったのですが 道に迷い…
いつの間にか駅ビルが立派になっていて驚きました
仕方なく阪神百貨店に寄り タイガースグッズを購入してきました

貧乏性なのかあわただしい大阪観光でした
帰りの新幹線の中 妻に 何が楽しかったかと問うと
「豚まんがおいしかった」
との言葉 とにかく満足できてホッとしています

大阪と言えば「大阪少年補導協会」
今回も「大阪少年補導協会」が出している雑誌「月刊少年育成」
(現在休刊中)より 指導相談所についての記事を紹介します

叩かれることの多い児童相談所、児童相談所の大変さが伝わってきます







☆「児童相談所に思うこと-多くの児童相談所やその周辺関係者から聞いた話は、本当に驚きの連続だった-」 八木谷勝美(日本経済新聞社会部記者)『月刊少年育成』 2005年2月号より

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 2004年は児童が虐待されたり、無残に命を奪われる事件が特に目立った
ように思う。

 年初には大阪・岸和田で中学生が実父とその内妻に長期にわたって虐待を受
けていたことが判明、9月には栃木・小山で父親の知人によって幼い兄弟の命
が絶たれた。

 まさに、「子ども受難」の年であった。相次いだ児童虐待事件の発生を振り返
る度に、必ずと言っていいほど集中砲火を浴びたのが児童相談所だ。


◇ないないづくし

 これまで事件や行政の取材を一通り経験したつもりだったが、児童相談所に
は余り縁もなく、業務内容もよく知らなかった。

 正直言って、少年非行や家庭内暴力などの解決に当たる組織、という程度の
認識だった。
 児童虐待事件の頻発とともに、昨年10月に児童虐待発見の通告義務を強化
した改正児童虐待防止法が施行され、4月からは児童相談業務を市町村レベル
に拡大する改正児童福祉法が施行されるのに当たって、本格的に取材を始めて
みた。
 その過程で多くの児童相談所やその周辺関係者から聞いた話は、本当に驚き
の連続だった。

「ネグレクト(養育放棄)って何ですか?」
「エル・デイー(LD=学習障害)は?」-。

 児童相談所の所長クラスを集めた研修会の一幕だ。どれも少し興味を持って
新聞を読んだり、テレビを見ていれば分かるはず。

 「そんな言葉の説明からしなければならないです」

と研修担当の職員は嘆いた。

 なぜこんなことになるのか。欧米では児童虐待を担当する組織の職員は専門
的に勉強してきた者のみこの仕事に就ける。これに対し、都道府県が所管する
日本の児童相談所の職員は多くが一般行政職からの任用だ。
 ある児童相談所に配属された職員が

「先日までは土木工事の担当で砂利を運んでいたが、これからはガキを運びます」

とあいさつしたなどという笑うに笑えない詰もある。
 また、ある自治体から聞いた話では、一昔前まで児童相談所は一つの地域を
職員一人が受け持っていたこともあり、いわゆる「組織になじめない人材」が
起用されることもあったという。

 児童相談所の主たる業務を受け持っているのは「児童福祉司」という専門職
だ。国の資格ではないが、福祉施設職員の養成学校を卒業するなど要件を満た
した人が任用される。

 彼らのほとんどは日夜、虐待や非行、いじめなど子どもに関する様々な相談
を受け、入所措置などを検討、「役所の中でも心身ともにハードな業種の一つ」
とも言われている。

 多忙をきわめているのは、児童福祉司の絶対数が足りないという問題がある。
厚生労働省は児童福祉司を人口68000人に1人配置するように求めている
が、全体の6割に当たる37都道府県・政令市がこの基準を満たしていない。

 自治体によっては、国からの交付金に県費を上乗せする県があるのに、一方
では交付金を別の形で使っているところもあるのが実態だ。

 昨今話題の「三位一体改革」で、地方自治体の裁量が増せば、その格差はま
すます広がる可能性もある。

「質量ともに慢性的な人手不足状態に、厳しい財政状況が追い打ちをかける」
(同)という、ないないづくしの状況に置かれているのが現在の児童相談所だ。


◇無力感抱きつつ頑張る職員

 相次ぐ児童虐待事件で、社会的認知が広がったこともあり、虐待相談件数は
この10年間で16倍に急増している。

 こうした事態に対応するため、厚労省は改正児童福祉法で、これまで児童相
談所に集中していた児童相談業務について、区市町村が「一義的に対応する」
ことを義務づけた。

 全国的にみれば、東京・三鷹市や大阪・泉大津市などでは児童相談所や学校、
保健所など関係機関のネットワークを早い段階で構築し、一定の効果を上げて
いる自治体もある。ただ、こうした動きは一部に過ぎない。厚労省は以前から
市町村に児童相談業務を巡る関係機関とのネットワーク作りを指導しているが、
自治体の動きは鈍い。

 同省が昨年6月時点でまとめた調査によると、「児童虐待ネットワーク」を
構築している自治体は全国で4割に過ぎない。未設置の理由としては「市町村
合併を控えている」「人材確保が困難」といった答えを挙げる自治体が目立っ
た。
 また、同省が児童虐待予防策として、育児ストレスを抱えた母親に対する家
庭訪問事業を今年度から開始したが、市町村の実施率は想定の2割弱にすぎな
い。厚労省の担当者は

「いろいろと理由はあるだろうが、児童虐待は喫緊の課題。やる気がないとし
 か思えない」

と憤る。やる気はあっても、虐待予防そのものの難しさに直面しているケース
もある。

 保健師資格者を活用して児童虐待を初期段階で発見しようと西日本のある県
は昨年4月から、虐待リスクの高い家庭を見守るチームを発足させた。数十人
の人員を確保し、研修も済ませた。が、なかなか本格的に派遣することができ
ないでいる。

「どういう基準で家庭訪問を実雄するのかを決めるのに手間取った」。

 今後ともチームは存続し、今後児童相談所内で育児指導などを手がける予定
だという。

 栃木・小山で幼い兄弟が虐待を受け、殺害された事件で、地元の児童相談所
は警察から兄弟を引き渡されながら、翌日には兄弟を帰宅させ、結果として事
件をくい止めることができなかった。

 専門家の多くが「初歩の初歩ができていない」などと強く批判。県や児童相
談所には市民からの抗議が相次いだ。ところが、その経緯を詳しくたどってみ
ると、当の児童相談所だけを責められない面もある。地元の児童福祉関係者に
よると、兄弟を保護した児童福祉司は相当粘って、引き渡しを拒否したのだと
いう。しかし、父親がそれにも増して強い調子で引き渡しを迫った。

「今の態勢では、強硬手段にはどうしても折れてしまいがち。その結果が最も
 悪い形で出た」。

 その関係者はため息混じりに語る。

 児童相談所やそれを取り巻く市町村の動きはなぜこんなにぎごちなく見える
のだろう。児童相談所はこれまで、貧困家庭の少年育成から学校の荒れ(校内
暴力やいじめ)などに柔軟に対応してきた。今の児童虐待などの社会が求める
問題解決もできないわけがない。なのに、どうして…。

 従来、児童相談所が担ってきたのは、学校や社会と家庭をつなぐ調整弁とし
ての役割だ。それは、地域力や家庭力が機能して始めて成り立っていたのでは
ないだろうか。
 もし、その仮定が正しいのであれば、すべてを児童相談所のせいにするのは
無理というものだ。その一方で、児童相談所自身もこのような社会情勢を前提
として、何をやるべきか、考え直す時期にきている。少なくとも児童福祉司個
人の資質によるものが大きかったやり方を組織的に変えるべきではないだろう
か。

 ベストセラー小説「家族狩り」では、無理解な上司や親に囲まれ、戸惑い悩
みながらも子どもを懸命に保護する児童福祉司の女性が描かれている。

 かなり現状を踏まえた作品だと思う。私が取材した児童福祉司も事なかれ主
義の校長先生と戦い、子どもを保護した親から罵声を浴びて、無力感を抱きな
がらも子どものことだけを考えて歯を食いしばって頑張っていた。社会のため
に、子どもたちのためにも、こうした人々をこれ以上失望させてはならない。


◇危機管理は災害だけではない

 この状況を打開する処方箋はあるのか。東京都は児童相談所に民間の福祉施
設などで虐待問題などを担当した経験者の任用を始めた。児童福祉司のプロ化
を進めようという戦略だ。

 昨年春採用された、倉重裕子さんは米国ジョージア州の大学でソーシャルワ
ークを学び、実際に地元の児童虐待防止機関(DFCS)で勤務した経験もある。

 倉重さんによると、ジョージア州には159の郡があり、最低1つのDFCS
が設置されている。児童数245万人にのぼる同州の2003年度の虐待通報
数は92612件で、児童数174万人で少ない東京都と比べ40倍近い。

 職員も東京の7倍もいる。処遇をはじめ様々なケースに24時間態勢で対応。
虐待に関する調査が決まった場合には、「レスボンスタイム」という期限が設
定され、6歳以下の子どもに外傷があった際など緊急を要するケースには24
時間以内、それ以外は5日以内に当事者である子どもに直接会って事情聴取を
しなければならない。

 現場のケースワーカーはケースの最終判断として、十数問のアセスメントシ
ートに状況を記入し、その点数を判断基準にして、認知から一か月以内には結
論を出すのだという。

 倉重さんのレクチャーを受けて、私が感じたのは、複雑に入り組んだ個々の
ケースを警察との連携などでスピーディーに調査すること、そして親権のはく
奪などについてもしっかりと規定してある米国のシステムのすごさだった。

 親のしつけと虐待の認定を巡って、小難しい議論ばかりしている日本は数十
年遅れていると思った。

 さらに深刻なのは、日本の児童福祉について危機管理という考えが依然希薄
であることだ。
 本来児童相談所は都道府県の所管で、知事の考え一つでどうにでもなるもの
である。公共事業に比べれば、票にはつながりづらいかも知れないが、この現
状を放置し続ければ、国家の存続すら困難になりかねない。

 大震災のように目に見える破壊に備えるだけでなく、家庭という社会の基礎
が揺さぶられているという認識を首長にはもってもらいたい。

 倉重さんにとって、日本のシステムはさぞかし融通が利かずに大変だろうと
勝手に推察して尋ねてみたが、

「配属された児童相談所は所内のサポートがしっかりしていて心強い」

と思いの外に明るい答えが返ってきた。一日も早く児童相談所が倉重さんらの
専門知識が無駄にならないような組織になって欲しいと思う。

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