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「ツツジ花咲くころ」『フレッシュマンのための読むクスリ』 上前淳一郎 文藝春秋 1999年 より [読書記録 教育]

「たいへん。お母さん,お店のおじさんと喧嘩してる。」
- 何だろうとドキドキしてしまいます 



今回は 上前淳一郎さんの 『フレッシュマンのための読むクスリ』より
「ツツジ花咲くころ」を紹介します


上前淳一郎さん ルポライター エッセイストとしてよく知られています
『週刊文春』に連載されていた『読むクスリ』をおもしろく読んでいたものでした
その選りすぐりの傑作選
授業に生かせるものが多々あります



「ツツジ花咲くころ」の授業 参観会でしばしば行いました
(資料を参考にしたのだと思いますが原資料を思い出せません)




出版社の案内には

「『読むクスリ』全30巻、2000編の中から著者自身が若きビジネスマンのために選んだ
 傑作篇。企業社会で生き残る知恵とプラス思考の宝庫。この一冊でライバルに差がつく」

とあります

ライバルに差をつける必要があるのかと思ってしまうのですが
フレッシュマンには特に参考になる本です





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☆「ツツジ花咲くころ」『フレッシュマンのための読むクスリ』 上前淳一郎 文藝春秋 1999年 より

1.JPG

<1>
 
 花は散り,ツツジが咲き始めた行楽日和の日曜日。


 奈良県桜井市にある大和信用金庫に勤める森川武司さん一家四人は,兵庫県宝塚市へ遊
びに出掛けた。


歌劇を見たあと,小五と小一のお嬢ちゃんたちは,遊園地でメリーゴーランドや観覧車
に乗って大喜び。日暮れが近くなるまではしゃぎまわって,両親の方が振り回されるほど
だった。


さあ帰ろうと遊園地を出て阪急宝塚駅近くまで来たころ,お嬢ちゃんたちが言い出した。


「おなか空いた。」


 お昼のあと,アイスクリームを食べただけだ。あんなによく遊んだのだからペコペコに
なっても無理はない。


「家に帰るまでに二時間ぐらいかかるよ。それから夕食の支度をするんじゃ,お母さんも
 大変だろう。」


「ここで食べて帰りましょうか。」


子供たちに振り回されてやっぱりお腹が空いてきているお父さんお母さんの相談もまと
まって,駅前商店街の店に入ることにした。


 レストランと言うより昔ながらの小食堂だった。四人がけのテーブルが,五つ六つ。す
ぐ奥の調理場に主人が白い割烹着に白いコック帽で働いているのが見える。


「あたしオムライス。」


「あたしも」


両親はカツ丼を注文してしばらく待つうち,オムライスが先に運ばれてきた。


すぐスプーンを手にしようとする子供たちをお父さんは目でたしなめた。


 どんなにお腹が空いていても全員の前に料理が揃うまで手をつけてはいけないというの
が森川家の厳しいしつけなのである。


 やがてカツ丼も来て,じゃ,とお父さんが言うと四人はテーブルに向かって軽く一礼し
て声をそろえた。


「いただきます。」


 これも森川家のしきたりで,この挨拶が済んで初めて箸やスプーンを持つことができる。


「おいしいね。」


と,空腹が手伝って舌鼓を打つ。


 済むと,また,全員が一礼して声を合わせる。


「ごちそうさまでした。」


 家でもこれが終わるまでは勝手にテーブルを立ってはいけないことになっている。


「それでは行くよ。」


と,森川さんはお嬢さんを連れて店の外に出た。


 お勘定を払うのはお母さんだ。


 ところが,いつまで待ってもお母さんが出てこない。どうしたんだろう。お釣りを渡し
た貰わないトラブルでも起きているのではないだろうか。


「ちょっとお母さんを見てきなさい。」 


心配になって,長女に様子を見に行かせるとびっくりした顔で戻ってきた。


「たいへん。お母さん,お店のおじさんと喧嘩してる。」






<2>

 そこへ二人がまだ何やら押し問答をしながら出てきた。白い割烹着の主人は森川さんを
認めると,コック帽をとって深々とお辞儀をした。





<3>

「これは旦那様。うちで食事をして下さいまして誠にありがとうございました。私はここ
 で二十年店をやっております。何とかおいしいものを安くと苦労してきまして,おかげ
 でひいきにして下さる方も多くなりました。」


「・・・・・・・」


「それが,今日のように,四人揃っていただきます,ごちそうさまでしたと,私がつくっ
 たものに頭を下げていただいたのは初めてでございます。何という果報。苦労してきた
 甲斐がありました。ありがとうございました。
<4>せめてお礼にお勘定はいりません。」


 喧嘩の理由が分かってきた。要りません,払いますでやり合っていたのだ。


森川さんは何とか半額払うことで事を納めたが,やはりあのとき全額払うべきだったと
今後悔している。







◇道徳授業で(参観会でも楽しい)

<1>を範読
 
発問 「お母さんとお店の人はなぜ喧嘩をしているのだと思いますか。」


(指示)「ノートに一言で書きなさい」
     (机間巡視 - 書いたか確認 支援)


(指示)「列指名」
     (順番に立たせて言わせる-できるだけ大勢)




<2>を範読
 
発問 「なぜ喧嘩をしている相手の御主人にお辞儀をしたのでしょう。」

(指示)「ノートに一言で書きなさい」
     (机間巡視-書いたか確認 支援)


(指示)・挙手-指名




<4>を範読(<3>はあとで読む)

発問 「どうしてただでいいとお店の人は言ったのでしょうか。」

    どのように指名しようか(参観会の場合 お母さん方にも指名)



<3>を読む



□教師の経験等を話す


・挨拶されるのがとてもうれしい


・きもちのいいあいさつはみんなを明るくする

  ↓

「実はこの前あるお店でこれをやったのだがやはりただにはならなかった。ただになった
 ら困ったのだけれど。」(笑)で終わり


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侘び助

読ませていただいて胸が一杯になりました。
私もレジを済ませた後ご馳走様とは言いますが
心を込めて言っていたかなと・・・食品・造った人
全てが有ってこそのご馳走ですものね。
by 侘び助 (2017-02-01 10:40) 

ハマコウ

侘び助さん ありがとうございます
上前さんの文章は大変読みやすく 感動させられます
あいさつ マナーの大切さを自然に学んでしまいます
我が家もこうでありたいと思いました
by ハマコウ (2017-02-01 20:40) 

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