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「若者はなぜ就職できなくなったのか」 児美川 孝一郎 日本図書センター 2011年 ② /「人生のくくり方」 加藤秀俊 NHKブックス 1981年 ⑤【再掲載 2017.4】 [読書記録 一般]

今日は5月3日、金曜日です。


今回は、4月30日に続いて、児美川孝一郎さんの
「若者はなぜ就職できなくなったのか」の紹介 2回目です。


出版社の案内には、

「『就職内定率』悪化、下落率は過去最大、もはや勝ち組ではない、燃え
尽きる『正社員』、 技術を得る機会を与えられない『非正規労働者』、
『職業的レリバン』」の低い教育を続ける学校現場・・・。『日本的雇用』
『新規学卒就職モデル』の崩壊をきっかけに、就職できない若者があ
ふれるニッポン社会。いま、学校や親には何ができるのか?若者たち
は何を知るべきなのか?ルール無き時代を生き抜くための『リアルな
入門書』が遂に登場。」

とあります。



今回紹介分から強く印象に残った言葉は…

・「学校は学校のままであり続け、学校教育の固有の価値や論理に基づい
  て存続することができなかったのか?」


・「多くの学校がかなりいびつな格好で学生や生徒のキャリア支援やキャ
リア教育に取り組まざるを得ない状況下に」


・「雇用の変化は、労働力の流動化政策、労働法制の緩和政策等、政府の
労働力政策の転換によるもので政府の責任は大きいのではないだろう
か」


・「雇用問題が学校教育を直撃し、学校は、学校間競争というサバイバル
ゲーム下で、パイをめぐる熾烈な『生き残り競争』を強いられている
のではないか」



もう一つ、再掲載になりますが、加藤秀俊さんの
「人生のくくり方」⑤を載せます。
本を読み、わたしの頭の中のもやもやしたものを晴れました。



☆「若者はなぜ就職できなくなったのか」 児美川 孝一郎 日本図書センター 2011年 ②

1.jpg

◇なぜ若者の雇用問題は学校教育を直撃したのか

◎ 学校は学校のままであり続け、学校教育の固有の価値や論理に基
   づいて存続することができなかったのか?


  問題 
   ① 現在の大学や学校は「もっと子どもと若者のエンプロイアビリ
    ティ育成に力を入れよ」という要求の大合唱が強風のように吹き
    寄せている 
   ② 多くの学校がかなりいびつな格好で学生や生徒のキャリア支援
    やキャリア教育に取り組まざるを得ない状況下に


  高卒就職はどのように変わったのか
90年代以降激変
2009.7月末 
        - 191000人の求職者
↓ 20%減 = 進学へ
2010.3月末 
        - 153000人の求職者
= 大学や専門学校は潜在的失業人口をプールする場所に!


  大卒就職はどう変わったのか? 
    相当に不安定でぎくしゃくしたものへと変容


  何が変化を促進したのか?
  ① バブル崩壊後の日本経済の失速(所謂「失われた10年」)
バブル - 1980年代後半から1990年代初め
「地上げ」「財テク」「売り手市場」
失われた10年 ロストジェネレーション
<企業の雇用戦略の転換>
② グローバリゼーションの影響
③ 日本企業の雇用戦略の転換
厳しい国際的な経済競争 
         → 人件費削減と雇用戦略の転換
正社員の一部を非正規雇用に置き換えた
④ 政府の労働力政策の転換
「労働力の流動化」政策 労働法制の緩和政策
          ◎政府の責任は大


雇用問題が学校教育を直撃したわけ 
    システム論視点から


少子化というインパクト


学校間競争というサバイバルゲーム
パイをめぐる熾烈な「生き残り競争」
◎ 少子化を背景とする学校間競争の自己展開








☆「人生のくくり方」 加藤秀俊 NHKブックス 1981年 ⑤【再掲載 2017.4】

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◇親離れ・子離れ(1)

□古典的人類学者 マードック・リントン
  「家族とは永続性を以て婚姻関係を結んでいる男女と,その間に生ま
   れた子供によって営まれている生活共同体である」
    - 定義しにくい

□家族 
  ① 方向付けの家族   
      教え育てられる人間
  ② 生殖家族      
      子供を産み育てる
    → ①の「方向付け家族」の中で過ごす時間が長くなってきた
  親 = 上の世代の大人から指導・保護・監督を受ける時間が次第に
     長くなってきた

□明治時代 
  ○12歳で丁稚奉公 
      理由 
       ① 家が貧しい
    ② 子供を親が引き離す
  ○大学生 旧制高校・全寮制
     理由 
       ① 全国にナンバー校が6つ
   ② 独立心を養うことを目標
  - 親から離れて独立 先生が仮親
  ◎ かつては自立心が育てられ精神的な独立をせざるを得なかった

□現在は…
<理由>
 ① 国民生活水準の向上    
       家計が楽になった
   ② 社会全体の高学歴化    
       親がかり 月額10万円以上親が負担
   ③ 平均寿命が長くなった  
       経済的保護期間長く
   ④ 出生率低下 
       1944年 一夫婦で1.46人(=マイナス)
○ 男女ともに働く家庭 高学歴化 一人っ子
   - 自宅通学・個室を望む

□母子密着家庭の深刻化  
  過保護問題 
    マザコン  
   親心は7~8歳くらいまで
母子密着家庭 
   小此木敬吾「モラトリアム人間の世代」
 自己確立が遅れる

□フリーター 
  気楽さ 
   - モラトリアム人間の大集団の出現
 ○「アイデンティティ・クライシス」
  エリック・エリクソン
   自己同一性
 ○モラトリアム人間
 ・ 自分が何者であるか証明できない
  ・ いろいろやってみて自分が何であるかだんだん分かってくるだろ
   うという幻想はもっているが,現在の自我がどのようなものである
   かについての認識は極めて曖昧
  → ◎自己証明ができなくなる危機的状態
 ○アイデンティティ問題
  ① 親子(母子)心理的同一視
    母親の一部だという感覚から抜け出せない
    - 自らを母親から断ち切ることができない
      母も子に投入 
        子のアイデンティティは母にある
    = 母のアイデンティティは子にある
   ② かつては個人と同時に村落社会の一員
      自らのアイデンティティを村落に求めることができた
                           (会社人間)
 ○モラトリアム人間 
  ・幼児性の持続
   自分がまだ大人になっていないと自らに言い聞かせながら時間
    の経過に身を委ねている
  ・ディズニーランド
    遊園地,テレビゲーム熱中,ミッキーマウス時計
  - 一人前の社会的存在としての大人の行為にふさわしくない
  ・幼児性を残しながらアダルト感覚に憧れる
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「若者はなぜ就職できなくなったのか」 児美川 孝一郎 日本図書センター 2011年 ① /「日本子育て物語-育児の社会史」 上笙一郎 筑摩書房 1991年 ③ 【再掲載 2017.1】 [読書記録 一般]

今日は4月30日、火曜日です。

今回は、児美川孝一郎さんの
「若者はなぜ就職できなくなったのか」の紹介 1回目です。


出版社の案内には、

「『就職内定率』悪化、下落率は過去最大、もはや勝ち組ではない、燃え
尽きる『正社員』、 技術を得る機会を与えられない『非正規労働者』、
『職業的レリバン』」の低い教育を続ける学校現場・・・。『日本的雇用』
『新規学卒就職モデル』の崩壊をきっかけに、就職できない若者があ
ふれるニッポン社会。いま、学校や親には何ができるのか?若者たち
は何を知るべきなのか?ルール無き時代を生き抜くための『リアルな
入門書』が遂に登場。」

とあります。


キャリア教育が小学校にも取り入れられてしばらく経ちます。
十分な時間と予算がなければ効果は期待できず、ただ多忙感が…




今回紹介分から強く印象に残った言葉は…

・「今日の学校は、将来の『職業人』へと育てていくための準備教育の役
  割を強化し、促成栽培の場所となっている?」


・「1990年代以後、企業の採用方針の変化し、『正規雇用から非正規雇用』
『正規雇用を即戦力として求める』傾向となっている。企業は、従来
より育成のための時間と労力を掛けなくてすむ人材を求め、役所は企
業の意向を汲んで考えるようになっている。『エンプロイアビリティ』
の大合唱の状況にある」


・「一匹の妖怪が学校教育の世界を徘徊している。キャリア教育という妖
  怪が」
- 小学生のうちから将来を見定める必要があるのだろうかとわたしは
思ってしまいます。


・「学校は促成栽培の『職業人養成所』ではない。教育を担うための施設
である」



もう一つ、再掲載になりますが、上笙一郎さんの
「日本子育て物語-育児の社会史」③を載せます。
わたしが多くのことを教わった本です。





☆「若者はなぜ就職できなくなったのか」 児美川 孝一郎 日本図書センター 2011年 ①

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◇学校はいつから「職業人育成所」になったのか
  今日の学校
   → 将来の「職業人」へと育てていくための準備教育の役割強化
促成栽培?

  社会人になるための能力って何だ?
経産省 「社会人基礎力に関する研究会」2006.1

就職できる能力を証明する?
職業基礎能力習得証明書

「エンプロイアビリティ(雇用され得る能力)」の大合唱
1990年代以後の企業の採用方針の変化
1 正規雇用 → 非正規雇用
      2 正規雇用を「即戦力」として求める
→ 従来より育成のための時間と労力を掛けなくてすむ人材
→ 役所は企業の意向を汲んで考える
= 「エンプロイアビリティ」の大合唱

  対応を迫られた大学の行方
    「YESプログラム」厚労省

  大学はキャリア教育花盛り

  そもそも大学は何のためにあるのか?

  「キャリア支援」流行りの弊害

  すべてが正社員の枠に入らない
    「なんちゃって正社員」「周辺的正社員」 

  小中高への影響は?
高卒者の就職難 
      ① 高卒主要行き先の製造業が大幅に求人減
② かつての高校生採用に大学生が採用 
         = 学歴代替

「キャリア教育」という妖怪
「一匹の妖怪が学校教育の世界を徘徊している。キャリア教育と
    いう妖怪が」
2004年はキャリア教育元年
2003年 
    経産省・厚労省・文科省・内閣府の「若者自立挑戦プラン」
→ 文科省 
        ・小中高現場にキャリア教育普及に腐心
・職場体験 - フリーター・ニート対策

  大混乱の学校現場
上からの強引な導入 
      「初めにキャリア教育ありき」
- 経済界における「エンプロイアビリティ」の大合唱の周辺

  大学と学校の変化の行方
◎学校は促成栽培の「職業人養成所」ではない 
     教育を担うための施設








☆「日本子育て物語-育児の社会史」 上笙一郎 筑摩書房 1991年 ③ 【再掲載 2017.1】 

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≪原始時代≫③

◇「埋甕」と「胞衣納め」の語るもの - 縄文人の子産みのエートス
□住居の入り口に埋められた謎の甕
「埋甕」説 
    - 貯蔵穴・水甕・トイレ・墓?
木下忠『埋甕』1981
    ~ 日本の産育民俗 

□家の入り口に胎盤を埋める習俗
昭和8(1933)年
  天皇 = 明仁が生まれた時 昭和天皇多額な寄付
      「子供と母親の保護のために使うように」
 - 恩賜財団母子愛育会 
        柳田国男の指導で日本の産育民俗の調査
昭和51(1975)年ようやく上梓
  恩賜財団母子愛育会編『日本産育習俗資料集成』第一法規
 「胞衣」 = 胎盤(後産)
  ① 近郷の山腹に埋める
   ② 日が暮れてから海岸の砂地に埋める
 ③ 子供を産んだところの縁の下に埋ける
④ 「ヨナオサメ」と称する土焼きの蓋のある器に入れ,家の
     戸口の人の良く踏むところに埋める
埋める理由
   ① 子供が丈夫になると言われた 
        男は敷居の内,女は外
  ② 最初に踏んだものを畏れる
        = 父を畏れる(一生)
   ③ 願掛け
    -  「つながり」= フレイザーの言う類感呪術
「踏みつける」
    =働けば働くほど手足が逞しくなり体が丈夫になっていく

□「血への畏怖」に発した子育てのエートス
「埋甕」の意図 = 生まれた子供を丈夫に育てる
  ① 血に関わる
        血に対する畏れと恐れ
 ② 受胎のプロセスの無知
  → 精確に把握できない分,神秘的・畏敬的
  - 臍帯についても「へその緒」
   ◎ 遠い縄文の世からの民族的な子育てのエートスの発露


◇「豊女(とよめ)」と「屎麻呂(くそまろ)」
   - 弥生文化に見る子供の名前
□事実は小説より奇なり 
 「命名法」奈良時代の戸籍
     3世紀末 中国史書 日本の一少女の名前

□中国の史書に残っていた日本の一少女の名前
3世紀半ば『魏志倭人伝』
   卑弥呼
     ~ 姫の命(みこと) = 女性の天皇の意味
卑弥呼の姪 
    台与(とよ)か壱与(いよ)か?
  トヨに相違ない
奈良時代の戸籍に「トヨ」という名をたくさん見る
  「トヨ」田畑の実りの豊かさを表す
  - 豊穣にちなんだ名前が男女ともに多い

□最愛の我が子に排泄物の名前を
7世紀 
    屎売(くそめ)小屎麻呂(おぐそまろ)全屎(またくそ)
  玉門売(くぼめ)米比留売(めひるめ)由波里売(ゆばりめ)
    麻里売(まりめ)
(由波里=小水 玉門=女性器 米比留=目くそ 麻里=大小便)
  - 人間の名前というものに対する原始の人の心性
≪実名敬遠の習俗≫  
    名実一如の心情
 - 悪しき神や聖霊が人間の名を知りその名に悪意の働きかけ
      をしたら,その名の持ち主はどのような不幸な目に遭うか分
      からない
    - 神や聖霊の嫌うものを名前に!
    = 親心の表れ

□名前は移り変わる世の中を示す
江戸時代
    男子 <兵衛・平・衛門・作・助>杢兵衛・田子作式
= 奈良・平安時代の官職が落ちぶれた
  女子 動植物名をひらがなで書いた二文字名前
まつ・たけ式
  近代   
    抽象的思考を表す文字
<英・正・美・雅>
工業生産に基づく社会
     = 個人主義
現代
    欧米風の名の万葉仮名書きの氾濫
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