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「死者の民主主義」畑中章宏 トランスビュー 2019年 ①(前) /「わかりあえないことから」平田オリザ 講談社現代新書 2012年 ②【再掲載 12016.1】 [読書記録 一般]

今回は畑中章宏さんの、
「死者の民主主義」の紹介 1回目です。


出版社の案内には、

「人ならざるものたちの声を聴け
 20世紀初めのほぼ同じ時期に、イギリス人作家チェスタトンと、当
 時はまだ官僚だった民俗学者の柳田国男は、ほぼ同じことを主張し
 た。
 それが「『死者の民主主義』である。
 その意味するところは、世の中のあり方を決める選挙への投票権を生
 きている者だけが独占するべきではない、すなわち『死者にも選挙権
 を与えよ』ということである。
 精霊や妖怪、小さな神々といったものは、単なる迷信にすぎないのだ
 ろうか。
 それらを素朴に信じてきた人びとこそが、社会の担い手だったのでは
 なかったか。
 いま私たちは、近代化のなかで見過ごされてきたものに目を向け、伝
 統にもとづく古くて新しい民主主義を考えなければならない。
 死者、妖怪、幽霊、動物、神、そしてAI……
 人は『見えない世界』とどのようにつながってきたのか。
 古今の現象を民俗学の視点で読み解く論考集。」

とあります。


今回紹介分から強く印象に残った言葉は…

・「柳田國男は『今の人間』だけが社会を構成し社会の参加者として意
  見するだけではなく死者の希望や、これから生まれてくる人間の利
  益を考慮すべきだと民俗学者になる以前に語っていたのである。」


・「国家は現在生活する国民のみをもって構成すといい難し。死し去り
たる我々の祖先も国民なり。その希望も容れざるべからず。また国
家は永遠のものなれば、将来生まれい出すべき我々の子孫も国民な
り。その利益も保護させるべからず。」


・「過去に蓄積してきた苦難の歴史の遺物が憲法であり、死者の経験の
  総体が現在の権力をもっている」


もう一つ、再掲載になりますが、平田オリザさんの
「わかりあえないことから」②を載せます。



☆「死者の民主主義」畑中章宏 トランスビュー 2019年 ①(前)

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◇死者の民主主義
□いまこの国には「死者のための民主主義」が必要である
 「死者を会議に招かねばならない」  
草の根民主主義 20世紀初頭
イギリスの作家 
        ギルバート・キース・チェスタトン(1874-1936)
      日本の民俗学者
        柳田國男(1875-1962)
→ ◎「死者のための民主主義」という思想
   
  チェスタトン 
   「死者の民主主義」
今の人間が投票権を独占することは、たまたま生きていて
     動いているというだけで生者の傲慢な寡頭政治以外のなにも
     のでもない
- 「いかなる人間といえども死の偶然によって権利を奪われ
       てはならない」
      とチェスタトンは訴える 

  柳田國男
    「今の人間」だけが社会を構成し社会の参加者として意見する
    だけではなく死者の希望や、これから生まれてくる人間の利益
    を考慮すべきだと民俗学者になる以前に語っていたのである。    
-1910「時代ト農政」にも死者の政治参加に関する記述がある


□祖霊の政治参加を促す 
  1902~翌年  
     国家は現在生活する国民のみをもって構成すといい難し。死
    し去りたる我々の祖先も国民なり。その希望も容れざるべから
    ず。また国家は永遠のものなれば、将来生まれい出すべき我々
    の子孫も国民なり。その利益も保護させるべからず。  

  1910(明治43)『時代ト農政』
   国民の二分の一プラス一人の説(?)は多数の説だけれども、
    にはいかない。しかも、万人が同じ希望はもってはいても、国
家の生命は永遠であるから、まだ生まれてきていないものたち
の利益も考慮しなければならない。況んや、我々はすでに土に
帰したる数千億万の同胞をもっておりまして、その精霊もまた、
国家発展の事業の上に無限の利害の感を抱いているのでありま
す。
 
※柳田國男 
貴族院書記官長
- 国際連盟委任統治委員(国連事務次長新渡戸に請われ)
   
◎ 日本における「草の根」とは本来こういった国家観、社会観
をさした 

妖怪や精霊にも選挙権を
わたしたちはこれから伝統にもとづく古くて新しい民主主義を
考えていく必要があるはずだ
『21世紀の民俗学』畑中章宏 2017
妖怪たちは災害や戦争などにより不慮の死を遂げた人々の集
合霊であり、彼らにも選挙権を与えるべきだと主張した
- 集合霊たる妖怪がどのような公約を掲げる候補者なら納
      得するかを想像してみることは決して現実離れしたことで
      はないだろう
- 精霊や妖怪、小さな神々を素朴に信じる人々、信じてき
      た人々こそが民主主義の担い手であるとわたしは考えるの
      だ


□「死者の立憲主義」
  政治学者の中島岳志が近年「死者の立憲主義」を繰り返し唱
    えている
 
  東日本大震災
死者との出会い直しの重要性を論じた
- 死者はいなくなったのではなく、死者として存在している
- わたしたちは死者の存在を思い、死者から照らされて生き
     ることで倫理や規範を獲得する
◎ 過去に蓄積してきた苦難の歴史の遺物が憲法であり、死者の経
   験の総体が現在の権力をもっていると中島は言うのだった







☆「わかりあえないことから」平田オリザ 講談社現代新書 2012年 ②【再掲載 12016.1】

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◇伝えたいという気持ち
「伝えたい」という気持ちは「伝わらない」経験からしか来ないの
ではないかと思う
 - いまの子どもたちは「伝わらない」経験が決定的に不足して
    いる
 →◎いちばんいいのは体験教育
   障害者施設・高齢者施設訪問、ボランティア、
      インターンシップ制度
   ◎外国人とのコミュニケーション   

  ※ 自分と価値観やライフスタイルが違う「他者」と接触する機会
   をシャワーを浴びるように増やしていかなければならない
  → 演劇、演劇的○○の大きな役割

 演劇は常に他者を演じることができる
欧米では異文化コミュニケーション教育の中核の一つに演劇
     = 自分を出発点にできる


◇「口べた」というハンディ
「コミュニケーション問題の顕在化」
   「コミュニケーション能力の多様化」
  ◎「無口な職人」はプラスのイメージから、無口では就職できな
   い世知辛い世の中になってしまった

 「コミュニケーション問題の顕在化」
    口べたな子でも現代社会で生きていくための最低限の能力を身
   に付けさせるための教育
    ◎ あと少しだけはっきりとものが言えるように… 


◇産業構造の変化
映画 「トウキョウソナタ」
    ◎ 産業構造が大きく変わったにもかかわらず、日本の教育制
     度は工業立国のスタイルのまま


◇慣れのレベルの問題
「コミュニケーション能力の多様化」
    ~慣れてしまえばいい


◇現場という幻想から離れる
 参加型、体験型の授業を含めた総体をコミュニケーション教育の
  プログラムととらえるべき
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