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「人生はあなたに絶望しない」 永田勝太郎 こころの時代 「ラジオ深夜便」より [読書記録 一般]

昨日、午前中は校内研修「外国人指導について」
講師の先生を迎えて 充実した研修となりました

午後は 引佐で 発達支援研修会
浜松医大の先生3名の 講話を聞きました
準備がしっかりされており 大変勉強になりました
現在、大学院生として頑張っておられるW先生の話は
ざっくばらんで すっと頭に入ってきました

わたしは ラジオ深夜便が好きで 
「こころの時代」(現在は「あすへの言葉)を よく聞いています


4時に起きられないことも 多くなり
録音もしています

心にしみる話が多く、いつのまにか涙を流してしまうのもたびたびです

今回紹介する 永田勝太郎さん(当時 浜松医科大学)の話には
思わず引き込まれ じんと涙を流してしまいました

日本でもロングセラーとなっている「夜と霧」
その著者フランクル博士に会いに行った話
御自身が病気になった話
全人医療の患者さんの話…

「生きるとは」
「生きる意味とは」

について真剣に考えるきっかけとなりました

今でも、時々 車の中で 録音を聞いています

心が洗われるような気になります

インタビューからおこした 雑誌「ラジオ深夜便」の記事ですが
インタビューの様子がよく伝わってきます

長くなりますが 紹介します

※ 参考
http://www.asahi.com/kansai/kokoro/kataruhito/OSK200805020032.html

http://www.e-oishasan.net/site/nagata/



☆こころの時代 「人生はあなたに絶望しない」 永田勝太郎 「ラジオ深夜便」より

1.jpg

 医師で浜松医科大学医学部附属病院心療内科科長の永田勝太郎さんは、1948
(昭和23)年生まれです。20年前、永田さんは、医師としての岐路に立たされ
ていました。そんなとき、オーストリアの精神科医ヴィクトール・E・フラン
クル博士(1905~97)の著書『夜と霧~ドイツ強制収容所の体験記録』に感銘
を受け、ウィーンに住む博士を訪ねて交流を続けました。永田さんが提唱して
いる「全人的医療」は、フランクル博士が強制収容所という極限状況の中から
導き出した「人間とは何か」という、深い洞察に支えられているのです。
                 [聞き手 鈴木健次」



◇人間の可能性を信じることの大切さ

―まず、フランクル博士について簡単にご紹介いただけますでしょうか。

永田 フランクル先生は5年、オーストリアのウィーンでお生まれになってい
  ます。ユダヤ人であったために、第二次世界大戦中ナチスドイツによって、
  ポーランドのアウシュピツツ強制収容所に捕虜として捕らわれた経験をお
  持ちです。

   収容所では、冬でもシャツー枚、ズボンー枚の生活で、食事といっても
  パンー枚と塩水のようなスープだけでした。

   当然のごとく、次々と餓死者が出ます。その中で先生は、あることに気
  づきました。それは、弱っていく人に自分のたった一切れのパンを与える
  ことができる人がいる一方で、けだもののように人のパンを奪って食べて
  しまう人がいるということでした。この違いは何によるものか、

   先生は観察を続けました。

   その結果、人にパンを与えることができる人たちは、自分の。「生きる意
  味」を心の中にしっかりと持っていた人たちであることがわかりました。

   どんなささやかなことでもいいんです。まだ成人前の子どもがいるとか、
  やり残してきた仕事があるとか、きわめて日常的なことなのですが、「こ
  れをやり遂げるまでは死ねない」ということ、それがフランクル先生の言う。
 「意味」なのです。

   先生はそのことをアウシュピッツという煉獄の中で自ら体験し、ポケッ
  トに忍ばせたカードに速記で記録し、精神医学の見地から学問的に実証さ
  れた方です。

   戦後になって『夜と霧』(日本での初版は1956年)という本にまとめら
  れましたが、人間の可能性を信じることの大切さを主張するこの本が戦後
  世界に及ぼした影響は、大変に大きなものがあります。



―永田さんがフランクル博士と交流することになったきっかけをお聞かせください。

永田 20年前、私は東京のある大学病院におりました。ところが、そこでいろ
  いろな事件に巻き込まれて、いわば失脚するようなかたちで大学を追われ
  てしまった。

   地方の小さな病院で医師としての仕事は続けましたが、自分にとってこ
  の職業がどういう意味を持つのか、深く悩んだ時期が続きました。

   そのとき、高校生のころに読んで感銘を受けた『夜と霧』を読み返しま
  してね。非常に得るところが大きかったわけです。

   フランクル先生の確立された実存分析という学問を勉強したいと思った
  私は、先生に手紙を出しました。

   すると先生はすぐに、「ウィーンにいらっしやい」という返事をくださっ
  たので、私は飛んで行きました。先生は両手を広げて私を迎えると、「私に
  できることは?」とおっしやってくださったのです。

   先生の考え方の根底にあるのは、深い人間愛なんですね。非常にユーモ
  アにあふれた方でどんなつまらないことでも笑いに変えてしまう特技をお
  持ちでした。

   それはやはり、生と死の境を生き抜いてこられた体験をお持ちだからこ
  そではないかと思います。以後、先生がお亡くなりになる97年まで、私は
  何十回もウィーンにうかがっております。


◇絶望の淵から

―フランクル博士は、夫人をアウシュビッツで亡くされていますね。

永田 はい。最初の奥さまは、ガス室の犠牲になっています。しかし戦後、生
  涯の伴侶となるエリーさんと運命的な出会いをされて、再婚なさいました。


―永田さんはそのエリー夫人から、「人生はあなたに絶望しない」というフランクル博士の言葉を贈られたそうですね。

永田 はい。実は十年ほど前、私は大きな病気を患っております。ある日突然、
  末梢から筋肉が麻蝉してくる病気で、寝たきりになってしまいました。

   主治医からは、「治療方法はない。もう車いすで生活することも無理だ
  ろう」とまで言われました。
 
   ある温泉病院に入ってリハビリを続けたのですが、ちっともよくなりま
  せん。部下の局員はどんどん辞めていき、とうとう誰もいなくなってしま
  いました。

   何か自分が見捨てられたような、絶望的な気持ちでしたね。
   花を見ても、「来年この花が咲くころには、心はこの世にいないのだ」
  と思ってしまう。

   そのころ、フランクル先生はすでに亡くなられていて、私はエリーさ
  んに手紙を書きました。

  「エリーさん、さようなら。僕は不治の病になってしまった。僕は先生の
   もとへ行くよ」

   するとエリーさんからすぐに返事が届きまして、こう書いてあったんで
  す。

  「私はあなたに何もしてあげることができない。でも、生前フランクルが
   いつも私に言っていた言葉をあなたに贈ろう。『人間誰しも心の中にアウ
   シュビッツ(苦しみ編集部註)を持っている。しかしあなたが人生に絶
   望しても、人生はあなたに絶望しない。あなたを待っている誰かや何か
   があるかぎり、あなたは生き延びることができる』」

   私はその手紙を何百回も読み返しました。時を同じくして、私が教えて
  いた学生が何十人も押しかけて、
  「先生、早く大学に戻ってきてください」
  と励ましてくれたり、
  「先生が実践されている全人的医療を勉強したい」
  と申し出てくれるドクターたちが現れました。そして家族の存在。

  「よし、もし命を長らえることができたなら、残りの人生を医学教育に捧
   げよう」

  と、私は決心したんです。

   それからは、リハビリのメニューを3倍にしてもらいました。加えて、
  生命力を高めるために東洋医学的な方法も治療に取り入れました。

   その中で、すばらしい鍼灸師の先生に出会いましてね。私が
  「ちっともよくならない。どうせ死ぬんだ」
  と愚痴を言うと、先生は一緒に泣いてくれたんです。

   その先生が示してくれた共感とエリーさんの手紙を心の支えにしながら
  必死に努力して、2年後、私は大学に復帰することができました。


―フランクル博士の言う「生きる意味」を、永田さんご自身が実体験されたのですね。

永田 病気のあと、患者さんへの対応が変わりました。私たち医師にとって、
  死と隣り合わせの患者さん、「生きる意味」を探そうにも探せない患者さ
  んに共感することは、実は大変難しいことです。

   しかし、私は自分の経験を通して、どんな状況に陥ってもそこから逃れ
  る方法は必ずあるということを、患者さんたちに伝えられる。それが今の
  私の役割かなと思っています。

   ですから、「私はいつ死ぬんですか」とびくびくしている患者さんには、
  カルテを閉じてこう言います。

  「いいかい、これは医者として言うんじやないよ。僕は三途の川まで行っ
   てきたけど、こうして戻ってきた。そして、今、生きている。あなたも
   今、生きているじゃないか。あなたにも、『戻ってくる自由』があるんだ
   よ」。


◇全人的医療と現代医学

―先ほどおっしやった「全人的医療」は、人間の心理的な側面を重視する医学と考えてよろしいのでしょうか。


永田 そのとおりです。現代医学は高度に進んだ科学である半面、人間を臓器
  や細胞、場合によってはDNAのレベルにまで専門分化しすぎたきらいが
  あります。

   しかし、それでは人間というものはわからない。人間はもっと総合的な
  存在です。そのような視点に立って、ありとあらゆる科学的な思考を一人
  の患者さんのために投入する。それが、私どもの目指す全人的医療です。

   現代医学は外科的な手術や放射線療法、抗がん剤治療、化学療法といっ
  たようなどちらかというと体の中にある問題点を除去する方法論にすぐれ
  ています。

   一方、ある臓器が弱っても、他を活性化して全体のバランスをとればよ
  しとする考え方が東洋医学的な考え方。それから、体が病気になれば心も
  病気になってしまうから、心をしっかりと支えていこうというのが心身医
  学の考え方です。

   フランクル先生の実存分析は、そこに人間を生かしている「意味」とい
  う概念を取り入れることによって、その人が自分の能力以上の力を出せる
  よう支えていこうという考え方ですね。

   そういったことをやっていきますとね、人間というのはけっこうすごい
  パワーを示すことがあるんですよ。

   私どもの病院には、末期がんの患者さんも多いのですが、中には奇跡と
  しか表現できないような回復をされる患者さんがおられるわけです。

   そのことを現実のこととして受け止めて、なぜその人が回復したのか、
  科学的に実証してゆかなければならないと思っています。

   これはわれわれの研究でわかってきたことですが、面白いことに、「生
  きる意味」に気づいたとき、人間の脳は生命力を活性化するホルモンを分
  泌するんですよ。つまり、単に心理的に元気になるだけでなく、身体的な
  反応として生命力が活性化する。まだ発展途上ではありますが、医学の可
  能性を大きく発展させることができる考え方ではないかと思います。

   逆に言うと、それがわれわれの仕事ではないかと考えているんですね。


◇だれにも 生きる意味がある

―具体例をお聞かせいただけませんか。

永田 15年ほど前のことですが、東京の大きな病院で筋ジストロフィーと診
  断されて、医師から「余命半年」と宣告された男性の患者さんが私ども
  の病院に来られました。

   私は彼に、

  「今、あなたは生きているし、こうやって東京から浜松まで来ることも
   できた。『あと半年』と言った医者は神さまじゃありません。まず体
   をしっかりケアしましょう」

  と励ましました。彼は病気のためにコンピューターのキーボードを押す
  こともできなくなっていましたが、それはリハビリで機能回復するしか
  ありません。

   そこで彼は、太極拳を習い始めたんです。その後、彼はみるみる健康
  を回復していきました。
   今では太極拳の最高段位を取得して、弟子が150人もいます。彼の場
  合、リハビリのために始めた太極拳が「生きる意味」の1つになったん
  ですね。

   こんなケースはいくらでもあります。キューブラー・ロスというアメ
  リカの精神科医で、やはりフランクル先生の影響を強く受けた方が、こ
  ういう言葉を遺しています。

  「人間とは、その死の瞬間まで成長する可能性のある生物である。その
   可能性を、われわれ医師は奪ってはならない」

   患者さんに対して「余命何か月」などと軽々に言うことは、医師とし
  て厳に戒めなければならないことだと私は思います。

   残念ながら亡くなってしまわれた例ですが、50歳のある女性のケース
  もご紹介したいと思います。彼女はお父さんを早くに亡くされて、母親
  と二人暮らしでした。

   そのお母さんががんになられたので、彼女はずっと介護をしていまし
  た。しかし、お母さんもついに亡くなり、ほかに身寄りのない彼女は一
  人ぼっちになってしまった。

   そんなとき、今度は彼女自身が子宮がんであることがわかりました。

   彼女は放射線療法を受けました。ところが、治療中に大出血を起こし
  て、医師からは、

  「これ以上あなたにできることはない。ホスピスヘ行ってください」

  と言われたそうです。しかし、ホスピスは満床で一か月待ち。

   そこで彼女は考えたんですね。

  「私の人生、ちっともいいことがなかった。死ぬ前くらい、どこかの温
   泉にでも行こう」

   そのとき彼女が選んだのが、たまたま私どもの病院がある浜松に近い
  舘山寺温泉でした。それから一週間後、彼女は激しい痛みのためにベッ
  ドベの上で動けなくなってしまった。病気が急速に進行したんですね。

   女将から連絡を受けて、私はとりあえず、症状を緩和する治療をしま
  した。しかし、この人を救うにはどうしたらいいのか、私にはわからな
  かったんです。彼女はもう死を覚悟しているんですよ。

   天涯孤独になってしまった。この人の「生きる意味」はいったいどこ
  にあるのか、見つけられないんです。私は暗澹とした気持ちで彼女を診
  ていました。

   ところがある日、一人の男性が彼女の車いすを押しているんですね。

  「この方はどなた?」

  と聞くと、彼女はニコニコしながら、

  「先生、この人はね、私の幼なじみなんですよ。私、この人にプロポー
   ズされたの」

  って言うじゃないですか。それはもう驚きました。

   その男性は昔からずっと彼女のことが好きで、彼女が病気と聞いて駆
  けつけて来たんだそうです。そして、これがもう最後のチャンスだと思
  って彼女にプロポーズした。

   彼女も考えた末に、彼の申し出を受け入れることにしたんですね。彼
  女はこう言っていました。

  「先生、私、死ぬのやめた!」。  

   2年後、彼女は亡くなりました。しかし、ホスピスではなく、彼の腕
  の中で。たった一年間でしたけれども、その一年間は他の人の50年に匹
  敵するような、すばらしい一年だったろうと思います。

   人間は、一生懸命「意味」を見つけようとしていれば、必ず見つかるん
  です。そのことを、彼女は教えてくれたのだと思います。


◇「あきらめない医療」を

―末期がんやそのほかの重篤な病気に限らず、糖尿病や高血圧などにも、フランクル博士の考え方は適用できるのでしょうか。

永田 もちろんです。たとえば糖尿病の患者さんの場合、食事療法を避けて通
  れませんね。

   ところが、食事療法は実行するのが実に難しい。自分が慣れ親しんだ食
  習慣は、簡単に変えられないものなんです。

   ですから、例えば高齢の糖尿病の患者さんには、私はこういうことを言
  います。

  「○○さん、確かお孫さんがいたね。5歳? そう、かわいい盛りだね。
   でも○○さん、こんなに血糖値が高いでしょう。そのうち目が見えなく
   なっちゃうかもしれないよ。その前に、心筋梗塞を起こして、あの世に
   行ってるかも。お孫さんの成人式、あの世から見てもしょうがないでし
   ょう。その目で見届けないと」

   つまり、自分のためでは行動変容できなくても、お孫さんのためなら行
  動変容できる。その方を生かしている「意味」を刺激すると、「食事療法を
  やってみよう」という気持ちになってくださるわけです。

   フランクル先生は、こんなこともおっしゃっています。

  「どんな人間にも必ず意味がある。
   ただし、多くの人たちがそれに気づいていないだけだ。医療職の役割は、
   それを患者と一緒に気づくことだ」


   私たち医療職がすべきは、まず、その人の病気を丁寧に診察し、検査を
  し、状況を判断すること。そして、あきらめることなく、患者さんの「生
  きる意味」に一緒に気づいていくことなんです。



―これからの医療に最も必要なこととは、何でしょうか。


永田 専門性の高い医療ももちろん大切です。しかしその前に、全人的に患者
  さんを理解する医療を広めていかなくてはなりません。

   全人的医療は患者さんに共感するところから始まるのですが、これがい
  ちばん難しいですね。しかし、それができないと、患者さんを理解するこ
  とはできないわけです。

   全人的医療とは、患者さんの体、心、社会環境、生きる意味、この四つ
  を総合して診ていくことです。残念ながら、まだそのための教育は十分と
  は言えません。


   フランクル先生は亡くなる前、私にこういう言葉を遺されています。

  「永田君、僕はもう十分に生きた。ただ、一つだけ心残りがある。自分の
   学問が医学の分野でもっと浸透してほしかった」

   今後も医学教育にもっともっと努力していかなければなりません。

   それからもう一つ、今、自分の命も、他人の命も粗末にする人たちが多
  いですね。その人たちは、自分の命の可能性に自信がないのだと思います。

   これはもう、家庭教育、学校教育だけの問題ではなくて、国民全体の問
  題です。

   私たち一人一人が自分の可能性を信じて、希望をしっかり持って、変え
  ていかなければならないと思います。                                 (2008年9月23・24日放送)

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通りすがり学生

最近NHK「100分de名著」で、V.E.フランクルの『夜と霧』が取り上げられていました。
残念ながら最終回しか見れませんでしたが、V.E.フランクル氏に興味を持ち情報収集していたところ、こちらの記事を拝見させてもらいました。
今看護の勉強をしていますが、全人的医療をふまえた看護をしてくためにも、V.E.フランクル氏の著書を読みたいと思いました。
ハマコウ さんの記事から勉強になりました。
ありがとうございました。
by 通りすがり学生 (2012-08-23 22:58) 

ハマコウ

通りすがり学生 さん  ありがとうございます

この永田さんのラジオ 途中で何回も涙が出てしまいました
「あなたが人生に絶望しても 人生はあなたに絶望しない」
忘れられない言葉となりました
諸富さんが解説してくれたNHK「100分de名著」わたしもみました
テキストも買ってしまいました
医療・看護に携わる方が 大変な勤務だとは分かっていますが 少しでも全人的医療 について考えてくださると ありがたいと思います
永田さんは フランクルさんの考えを 分かりやすく教えてくれます

励ましの言葉 ありがとうございます
by ハマコウ (2012-08-24 00:29) 

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