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竹原泰三さんはこんなことを(月刊「少年育成」より)⑨-教育基本法の改正は実現するか? 竹原泰三 ジャーナリスト /「滅びゆく国家」立花隆 日経BP社 2006年 ②(後半)【再掲載 2014.9】 [読書記録 教育]

今回は、12月30日に続いて、かつての月刊『少年育成』誌コラムから、
「竹原泰三さんはこんなことを」⑨を紹介します。



20年前の記事です。


教育基本法改正は成功したといえるのか、
それとも失敗だったとの評価なのか‥。


もう一つ、再掲載になりますが、立花隆さんの
「滅びゆく国家」②を載せます。
教育基本法改正の評価の視点が示されているように、
わたしは感じました。








☆竹原泰三さんはこんなことを(月刊「少年育成」より)⑨-教育基本法の改正は実現するか? 竹原泰三 ジャーナリスト

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 「少年育成」の2月号と3月号で「学力低下論争に判定が下った」と
いう内容の文章を書いた。


 文部科学省が去年初めに行った学力調査の結果、社会と算数・数学の
学力が低下していることがわかったというのが、主な根拠である。


 朝日新聞社の月刊誌「論座」4月号の中で、二人の教育学者がこの問
題を取り上げている。

 その一つは「学力低下論争は終わった」。

 著者の東京大学大学院教授の刈谷剛彦氏は、学力格差の広がりと、そ
の背後にある基本的生活習慣を問題にしている。具体的にいうと、


◎勉強のできる子とできない子の格差が広がっている

◎毎日の朝食、学校に持っていくものの確認など、基本的な生活習慣が
 身に付いている児童生徒ほど、得点が高い傾向が見られる、という調
 査結果である。


 これについて文科省は「おおむね良好」という見方を示して批判を受
けた。


 刈谷氏は、誰の学力が低下しているのか、良好でない子どもたちがど
のような環境で育ち、どのような問題を抱えているかには政策の目が届
かない、と指摘している。


 そして、このままでは、「学力低下は現場の指導法の問題」とされ、
教育現場がよりいっそうの課題と責任を背負わされてしまう、と問題を
提起している。


 もう一人の著者、大阪教育大学の長尾彰夫教授は、「学力低下論争を
総括する」というタイトルで、学習指尊要領の改訂の過程を振り返る。


 この中で、文部科学省が去年からの新指導要領の実施を前に発表した
「学びのすすめ」は、教育内容の削減や、学校週五日制をうたった新学
習指導要領が「学力低下」批判によって、ノックアウトされかねないと
して投げ込まれたタオルだったのかもしれない、と位置づけている。


 そして、「ともあれ、タオルが入れられた限り、試合は終了となる」
と明解である。


 長尾教授はさらに、「子どもたちの学力が低下しているのではないか、
学習意欲が弱くなっているのではないか、そうしたことを感じている教
師は少なくない。


 そうであればこそ、今回の論争をもっとも深く受け止め、総括すべき
は現場の教師たちであってしかるべきであろう」と書いている。


 「学力低下」論争は終わっても、現場の教師の課題は残っている。
 


 話は変わるが、今年3月に中央教育審議会が教育基本法の改正を答申
した。


内容は

◎社会に主体的に参加する「公共」の精神を養う

◎日本の伝統・文化を尊重し、郷土や国を愛する心を育むこと

などを教育の基本理念として新たに定めるべきだとしている。


 その背景には、いじめや不登校、学級崩壊などの問題が、深刻化して
いるという現実がある。


 これに対して日教組は記者会見で「教育基本法を不磨の大典とは考え
ていないが、答申は、今後の教育のあり方が見えないうえ、国民的な合
意も不十分。


 改訂作業に入ることを阻止すべく活動する」と話している。


 朝日新聞は、中教審の答申にあわせて、日本PTA全国協議会の会長
の文章を載せている。


 この中で会長は

「家庭教育が大切だという考えに異論はない。ただ、それを強調すると、
 教育に金をかけられる家庭と、そうでない家庭の子で差が開いていく
 のではないか」

といっている。


 これにはあきれてしまった。

 PTA会長は家庭で勉強を教えるつもりだろうか。


 塾に通わせることを考えているのだろうか。


 私は「家庭教育」という言葉をそんな意味で使ったことはない。
 

 毎日の朝食など、基本的な生活習慣が身に付いている児童生徒ほど、
得点が高い傾向が見られるという結果が、すべてを物語っていると思
うのだがいかがだろうか。


 さて、改正反対を訴える朝日新聞は今回の答申をどう見ているのだ
ろうか。

 社説は

「今の教育にいろいろな問題があり、早急に手を打たなければならない
 ことは間違いない」

と素直に認めながら、

「理念をいじっても、いじめや学力低下への処方箋にはならない」

と改正を否定する。

 代わりに何をするのだろうか。

「公共や伝統、愛国心という言葉は基本法にはないが、同じような理念
 はすでに盛り込まれている」。


 それではなぜ、教育にいまのようないろいろな問題が出てきたのだろ
うか。


これから先はイデオロギーの議論にならざるを得ない。


日教組にしても、朝日新聞にしても、今の教育基本法を変えたくない
し、変わっては困るのである。


 教育基本法の改正には、イデオロギーが絡み、憲法改正とも関係し、
与党のなかでも足並みはそろっていない。


果たして今の国会に改正案を提出できるのかどうか、先行きは不透明で
ある。
(『少年育成』2003.5)







☆「滅びゆく国家」立花隆 日経BP社 2006年 ②(後半)【再掲載 2014.9】

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◇靖国論・憲法論
  保守とリベラルの論客が靖国批判
  小泉首相の政治技法 
    中国を挑発 ドイツ型謝罪を 
感情任せでは国を誤る
  → 次世代に新たな火だね
   → 政治には儀式が必要
憲法は本来ルールブックにすぎない 
    憲法は権力者が守るべき命令
基本的人権は憲法以前からあった権利
   = 自然法
  憲法第9条はグローバルスタンダード
   = 国連憲章
憲法第9条を死守して「崇高な理想」を貫け
  壊れていないことは修理するな 運用されてこそ「生きる方」
   になる
  自衛隊法は改憲しなくても合法 自衛隊法
靖国問題の決着へ向け小泉首相・豹変せよ
   豹変能力を欠くのは愚かな政治家 
  重い意味を持つサンフランシスコ講和条約
国立追悼施設の…  
    東京裁判をすでに受け入れている
天皇が公式参拝できない靖国神社 
  中国と米国の狭間で上手に生き抜く
科学技術の指導部は一斉に若返り
  対日戦争抜きに中国は存在しなかった
    対日戦争は中国という国家の原点


◇小泉改革の真実
小泉首相による国家の解体と切り売り
新しい利権になだれ込む自民党議員
米国の関心事は350兆円の郵政マネー
世界最大の銀行をなくした後に残るもの
   → 不良債権処理で国民から富を収奪
  

◇ポスト小泉の未来
新世界位置の借金王・小泉改革の正体
    キングメーカーの執念
恐怖政治が始まった


◇イラク問題
  日本 = 不戦国家の誇り  
       だれも殺さないだれも殺されない
  「普通の国」は日本の繁栄を棄てること
   堤尭『昭和の三傑』集英社インターナショナル
      「日本はアメリカの無理難題を憲法第9条を盾に拒み続け
       てきた」
ドルからユーロへ
  愛国主義を振りかざす危ない社会


◇メディア論
  ネットと放送が完全融合したCNN
IT時代に完全に乗り遅れた日本の放送局
明らかになった政治介入の具体的手法
 『ザ・タイムズ』の豹変に新聞の来るべき未来を見た
 マードック買収のもたらしたもの
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