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竹原泰三さんはこんなことを(月刊「少年育成」より)⑥-教育改革を後押しする拉致事件 竹原泰三 ジャーナリスト /「イスラム 癒しの知恵」内藤正典 集英社新書 2011年【再掲載 2016.1】 [読書記録 教育]

今回は、11月30日に続いて、かつての月刊『少年育成』誌のコラムから、
「竹原泰三さんはこんなことを」6紹介します。

今回紹介分についても、出版年月、出版号は不明です。




もう一つ、再掲載になりますが、内藤正則さんの
「イスラム 癒やしの知恵」を載せます。




☆竹原泰三さんはこんなことを(月刊「少年育成」より)⑥-教育改革を後押しする拉致事件 竹原泰三 ジャーナリスト

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 10月17日、朝日新聞が教育基本法の改正問題を報じた。


 中央教育審議会の中間答申の素案を紹介した記事の見出しは「『愛国
心』盛り改正提言」。


 素案では「法の見直しを行うべきだ」という結論が明示されている。

 そして具体的には、
 ▼公共心や道徳心、郷土や国を愛する心を基本理念に盛り込む、
 ▼教員の使命感や責務、家庭の役割や責任を規定すること、
などを提言している。


 こうした内容について朝日新聞は、解説の中で、「国家のための教育
からの脱却を目指した戦後教育の大きな転換といえる」と述べている。


 日本の戦後の教育は、戦前の軍国主義の反動から、国の権威を認め
ず、「国のため、社会のため」という考えを否定してきた。


 国旗や国歌も当然拒否した。


 さらには「子どもは親の道具ではない」と家庭での保護者の教育権さ
えも否定してきた。


 これが戦後教育を支配してきた左翼系の理念である。


 残るのは、個人の自由だけ。


 個人は本来自由であり、国も社会も家庭も、この自由を制約すること
はできない。


 こういわれると、自分勝手な子どもたちが、

「俺たちは何をやっても自由だ、じゃまする権限など誰にもない」

と考えたとしても当然だろう。


 少年非行の根っこも案外こんなことかもしれない。
 

 日教組には「落ちこぼれを出さない」というもう一つのスローガンが
あった。


 落ちこぼれがでるのをどのようにして防ぐか。


 教育水準を最低のレベルにあわせることだ。


 それでも落ちこぼれが出そうなら、レベルをもっと落とせばいい。


 授業が難しければ、易しくする。


 勉強をしたくなければ、授業時間を減らす。


 今年から導入された学習指導要領も、こうした考えを引き継いだもの
だ。


 しかし、戦後社会を支配してきた教育理念はいま、現実によって否定
されつつある。

 すでに少年法が改正された。

 国旗、国歌法も成立した。


 導入されたばかりの学習指導要領評判が悪く、早くも改正が取りざた
されている。


 教育を取り巻く環境は確実に変わりつつある。


 もはや少年たちの自分勝手は許されない。


 朝日新聞が紹介した中間報告の素案も、社会の中で生きていくために
は、

「国や社会など『公』に主体的に参加する意識や態度を養うこと」
「日本人のアイデンティティ(伝統、文化を尊重し、郷土や国を愛する
心)をもつこと」

が重要、と位置づけている。


 まさに戦後教育の転換である。

 
 ここで北朝鮮による拉致事件の話をすると、場違いと感じる人も多い
だろう。


 しかし私は、拉致事件の影響は、教育問題にも大いに関係があると
思っている。


 9月に行われた日朝首脳会談では、北朝鮮のキム・ジョンイル総書記
が拉致を認め、謝罪した。


 しかし、拉致事件の被害者の調査結果は、8人が死亡という悲惨なも
のだった。


 それにもかかわらず、小泉総理大臣は北朝鮮との国交正常化交渉を再
開することを決めて帰国した。


 これに対して、日本人を拉致したのは、日本の主権の侵害であり、人
権の蹂躙である、小泉総理は交渉再開など決めず席を蹴って帰国すべき
だった、といった意見も聞かれた。


 いまや、日本人の間では、北朝鮮に対して毅然とした態度をとるべき
だという考えが大勢を占めている。


 そういえば今年5月、中国・瀋陽にある日本の総領事館に北朝鮮から
の亡命希望者5人が駆け込んだ時も、領事館の治外法権が中国の武装警
察官によって破られたとして、日本の外務省が抗議し、中国政府に謝罪
を要求した。

 
 この時も日本国内では、中国に対し毅然とした態度を主張する意見が
主流になった。


 こうした考えは、かつて繰り広げられた「謝罪外交」とは相容れない
ものである。


 いまここで「それでも日本は中国や北朝鮮に謝罪するべきだ」といっ
たら、どういうことになるだろうか。


 そもそも謝罪外交、あるいは自虐的外交の議論は、中学校のすべての
歴史教科書が従軍慰安婦の問題を取り上げたことに始まる。

 このことに危機感を抱いて「国民の油断~歴史教科書が危ない~」を
出版した西尾幹二・藤岡信勝両氏は、その後歴史教科書を編纂し、検定
も通ったが、このときは採用した中学校は少なかった。


 しかし拉致事件や瀋陽の総領事館の事件、それに先に行われたワール
ドカップ・サッカーなどを見ていると、日本人は教育基本法を改正する
前から十分「愛国的」である。


 問題になった歴史教科書を採用する中学校も今後増えるのではないだ
ろうか。


 そうなると、問題は教科書や教育にとどまらず、戦後を支配してきた
思想そのものの転換につながるのかもしれない。







☆「イスラム 癒しの知恵」内藤正典 集英社新書 2011年【再掲載 2016.1】

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◇はじめに
イスラム圏での自殺率は究めて低い


◇信じることによる癒し
□イスラムにおける自殺の禁止  
   すべてを神に委ねる
禁止だけで自殺は防げるか?

□来世に対する絶対的な確信(来世と運命)
   事故に遭うのは自分のせい

□イスラムに「死者の霊」の発想はない
   ~ 神の御意志

□「試練」と「神の御意志」の違い
   → 苦しいことは神に丸投げ

□自己責任の限界 
   インシャ・アッラーの真意 
   他人の責任も追及しない

□自爆テロと自殺の違い


◇行いによる癒し
   信じるだけではイスラムの信仰は成立しない 
   五行(信仰、告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼)
罪と償いの明示  
   恐れと安堵 
   徹底したもてなし、旅人へのもてなし、返礼は必要ない
親切は神の法による「義務」  
   ラハットの原型 - トルコのギュル外相
ヨーロッパ的心地よさ
     - 他者と分け合うような感覚に乏しい
声を掛けることで人間関係とラハットにする


◇一人で居るのは
「助けて」と呼べる社会  
   個の確立が求められる日本
     「ひとりじゃない感覚」
喜捨のシステム
   結婚の奨励 
   夫婦の性は善行


◇内藤正典 
  1956東京生 東大卒社会学博士 
  多文化共生論、現代イスラム
一橋大 → 同志社大学院 グローバル・スタデーズ研究科

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