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「ほったらかし投資術」山崎元 水瀬ケンイチ 朝日新聞出版 2010年 /「友だち地獄」土井隆義 ちくま新書 2008年 ①(前半)【再掲載 2016.9】 [読書記録 一般]

今回は、山崎元さん水瀬ケンイチさんの
「ほったらかし投資術」を紹介します。



出版社の案内には、

「わかりやすくて、ローコスト。それなのに、プロにも負けない。それがイン
 デックス運用。しかも、ほぼほったらかしでOK!世に出回っている『運用商
 品』はもういらない。景気が良くても悪くても、のんびり待てる。賢い人は、
 これを選んでる。すぐにできる実践ガイドが登場。」


 
とあります。


出版社の案内を調べていたら、
本年2回目の全面改定されて新しく出ていることが分かりました。
人気があるのですね。
早速注文しました。




もう一つ、再掲載になりますが、土井隆義さんの
「友だち地獄」②を載せます。
子どもたちの変わり様を見ていて思い当たるところがたくさんありました。




<浜松のオリーブ園>

浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。
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<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

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☆「ほったらかし投資術」山崎元 水瀬ケンイチ 朝日新聞出版 2010年

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◇人はどのようにインデックス投資家になるか 水瀬ケンイチの投資遍歴
  分かったこと
   ① 個別株式投資は生活に支障を来す
 ② 個別株式投資は市場全体が下落するとそれにつられて一斉に値下が
     りする

  違う道を模索
  → インデックスファンドを買ってじっと待っている

  最初にセットを決めたらあとはほったらかし
  
  「毎月インデックスファンドを積み立て投資しして後はほったらかし」
        |
     インデックス投資 = 資本主義経済の長期的成長への投資       


◇早速始めてみよう!インデックス投資の正しい手順ガイド
  お金の運用プロセス
   ① 家計の状況を把握する
      → どの程度のリスクを取ることができるか
  ② 資産配分(アセットアロケーション)を決める
  ③ アセットクラス毎にベストな商品を選ぶ
  ④ 商品と売買する金融機関を決める 
       手数料が異なる
  ⑤ DC NISAを最大限利用する
  ⑥ モニタリングとメンテナンス
   運用資産全体
        「ポートフォリオ」
         → モニタリングとメンテナンス
 
  運用プロセスは家電商品を買うのと同じ
  ① 家計の分析      
       = テレビの大きさと予算を決める
  ② アセットロケーション
       = テレビのスペックを決める
  ③ 商品選択       
       = テレビの商品を選ぶ 
広い範囲からベストなものを
  ④ 取引金融機関の選択
       = どこでテレビを買うか決める
×取引銀行  オススメ  ×ラップ口座
  ⑤ DCとNISAの活用
       = エコポイントのような優遇措置を利用する
  ⑥ モニタリングとメンテナンス
       = テレビと家電全体の
 
  実際に運用してみよう
  無リスク資産は「国内債券」と「現金」
      アセットロケーション 
       「国内株式」「外国株式」「現金」  5資産
       「国内債券」「外国債券」
 
  リスク資産は「国内株式」と「外国株式」     

  誰でも利用できる「個人マネー」運用活用
  ① 生活防衛資金と運用資金を分ける
  ② ネット証券に口座開設
        手数料安
  ③ DCとNISA口座開設
  ④ リスク資産の投資内容決定
  ⑤ リスク資産はインデックス
    リスク資産は内外の株式インデックスファンドを50%ずつ
      「MAXISトピックス上場投信」
      「ニッセイ外国株式インデックスファンド」        
  ⑥ DCとNISAへの投資の考え方・注意点
   DCに外国株式
  NISAに国内株式
    ⑦ 「無リスク資産」運用の内訳 
  ⑧ モニタリングとメンテナンス



   ① 生活防衛資金と運用資金を分ける
   通常の生活を送る分は3か月分で十分
   ② ネット証券に口座開設
     理由
        1 手数料が安い
   2 セールス中の圧力に晒されずにすむ
      ネット証券の選び方
          SBI証券 
      楽天証券 
      マネックス証券
     開設の仕方とその手順      
1 ウェブサイドで口座解説画面 特定口座
      ネット証券に入金
        即時入金   
   ③DCとNISAの口座開設
     DC 年金-長期
      NISA
   ⑤リスク資産は内外の株式インデックスファンドを50%ずつ
    5:5 お勧め 国内「MAXISトピックス上場投信」
         外国「ニッセイ外国株式インデックスファンド」
 ◎ニッセイTPOPIXインデックスファンド  楽・SBI・マネ
  日本株式インデックスe           楽・SBI
  SMT TOPIX インデックスオープン  楽・SBI・マネ
 ◎ニッセイ外国株式インデックスファンド    楽・SBI・マネ
  外国株式インデックスe           楽・SBI・マネ
  野村インデックスファンド新興国株式     楽・SBI・マネ  







☆「友だち地獄」土井隆義 ちくま新書 2008年 ①(前半)【再掲載 2016.9】

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◇はじめに
□「野ブタをプロデュース」の世界
高度に配慮し合う子どもの姿と,そのために互いの反発が表に出ない
   よう押し込められ,人間同士の重圧感がひしひしと増していく様子がリ
   アルに描かれている
    = 対立の回避を最優先にする若者達の人間関係 「優しい関係」    
   大平健
    「他人と積極的に関わることで,相手を傷つけてしまうかもしれないことを危惧
      する今風の優しさの表れ」   (『やさしさの精神病理』1995)


□教室はまるで地雷原
千石保  
    「マサツ回避の世代」 教室は例えば地雷原

山本七平
    「空気とはまことに大きな絶対権をもった妖怪でありつづけた」

  →◎ 優しい関係が営まれる場の空気の決定権を握っているのは,そこに
    参加している一人一人の個人ではない



◇いじめを生み出す「優しい関係」
□繊細な気配りを示す若者達
いじめ
   ~ 他人との違いに対する感受性がとぎすまされていく独特のメカニズム

  「自分の対人レーダーが間違いなく作動しているかどうか,常に確認し合
   いながら人間関係を営んでいく」
   ~ 衝突は異常事態 ~ 
      相手から反感を買わないように心がけている
     = かつてより遙かに高度で繊細な気配りを伴った人間関係       

◎現在の人間関係だけを絶対視してしまい,他の人間関係のあり方を比較
 して相対化できない


□友達との衝突を避けるテクニック
「ぼかし表現」
    = とりあえず,~的には,~みたいな
◎ 半独言,半クエスチョン
  ◎ 対話でなく共話  細井優佳(朝日新聞)


□立場が入れ替わりやすい現代のいじめ
極めて流動的で,理由に客観的な根拠を見出すことが難しい
   ~ ◎ いじめの主導権を握っているのは「場の雰囲気」 


□消えた客観層の子どもたち
特徴:それをただ黙って傍観しているだけの人間が非常に多い
    = 人間関係が狭くなっている
    ~ 島宇宙化(宮台真司)
       = 狭い範囲での関係の固定化


□無関心層の自覚されざる利得


□浸透していく「優しい関係」の重圧
静かで密かなる振る舞いとして行われる
   = 陰湿化しているように見える

  ◎ 遊びや悪ふざけといじめの境界線がはっきりしないという意味での流
   動性


□いじめを遊びのモードで覆う理由 
優しい関係にとって,いじめは触媒のようなものである
   → いじめの外面を遊びのモードで覆う
      ・遊びや悪ふざけとの区別が付きにくくなってしまう
      ・バラエティショー 「いじり」のテクニック    


□つながり合うネタとしての少年犯罪
非行グループ
   ~ 群れて行動する傾向にあるが,統率力のあるリーダーは見あたらない
  あたかも遊びのようで,加害意識や罪悪感が感じられない
  <集団内部の関係を維持することにより能力の殆どが動員>
 →◎ 犯行は互いにつながり合うためだけのネタの一つに

  尾崎豊『十五の夜』 
    「校舎の裏 たばこふかして見つかれば逃げ場もない」
→ 現高校生 
       「わざわざ学校で吸わなければ問題にならないのに」
  ◎ 昨今の非行グループには一般的な社会への反動というものではない


□個性化教育の意図せざる結果
臨教審 「生きる力」「考える力」「個性の重視」
  = 教育の抽象化
  × 明確な基準のないものを教育目標としてしまった
  政策転換 
    全ての子供の学力を一律に伸ばす政策
    → × できる子,できない子の能力の違いを認める教育
       = 自分で自分の価値をつくり上げなければならなくなる
    ※ 子どもたちには「自分探し」とそれに基づいた自己表現が期待さ
     れるようになった           


□「大きな生徒」となった教師
教師 
   - タテ関係が崩れた


□若者はなぜ「むかつく」のか?
むかつく
   = 他人の存在を前提としない
齋藤孝
   「怒りを爆発させにくい相手や状況において,こみ上げるものをはき出
    せないときに,むかつくは基本的にその当人や事物に怒りを向けられ
    なかったとき,その後に使う言葉」
→ ◎ 各自の内部に溜め込まれた感情のエネルギーは,その放出先を求
     めて,いじめのターゲットを探し回ることになる


□「優しい関係」を傷つける「KYさん」
 現代の若者達は,互いに傷つく危険を避けるために,コミュニケーショ
  ンへ没入し合い,その過同調にも似た相互協力によって,人間関係を,い
  わば儀礼的に希薄な状態に保っている

  ◎「ルールへの侵入者」


□見当違いな「規律の乱れ」言質
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「徳川家康天下取りへの道-家康と遠江の国衆-」浜松市博物館特別展 H27 ③ /「『悩む力』を失った若者たち-悩みを克服して新しく生きようとする『生きる力』として『悩む力』が必要なのだ-  新堀通也・武庫川女子大学教授(当時)-「月刊少年育成」2004年1月号より【再掲載 2012.6】 [読書記録 郷土]

今回は、7月25日に続いて、
H27.11.1(日)~12.6(日)に浜松市博物館で開催された、
徳川家康公顕彰四百年記念事業特別展
「徳川家康天下取りへの道-家康と遠江の国衆-」の紹介3回目です。



特別展の紹介には


「若き家康が今川氏から独立し、三河国を平定したのち、今川領であった遠江
 国をいかに攻略し平定していったのか。そこには、遠江の国人たちの抵抗や
 恭順があり、家康や家臣たちが苦労して遠江国を平定し、天下取りの足掛か
 りとした歴史がありました。
 徳川家康公顕彰四百年記念の本年は、家康と、井伊直虎や飯尾連龍など遠江
 の国衆の資料を集めた特別展を開催いたします。」

 
とあります。




本日紹介分より強く印象に残った言葉は…

・「本能寺の変後、家康は甲斐や信濃に出兵し旧武田領を領有した。領地は三
河・遠江・駿河・甲斐・信濃の5国となった」


・「家康は武田家の旧家臣を抱えて、徳川軍や譜代の家臣団に組み込んだ。井
伊直政は武田家の旧家臣を召し抱えて最強の赤馬団を形成した」


・「小田原の北条氏攻めで先発を務めた家康は落城後旧北条氏領地の関東へ移
封となった。その際、三河譜代家臣・遠江国衆も移住した」


・「戦国期、戦国大名だった今川氏は、江戸時代には旗本(高家)となった」




もう一つ、再掲載になりますが、新堀通也さんの
「悩む力を失った若者たち」を載せます。
悩むこと、考えることを面倒に思う子どもたちの顔が頭に浮かびます。



<浜松のオリーブ園>

浜松にもオリーブ園ができました。
和Olieve 園のサイト





ふじのくに魅力ある個店
静岡県には、個性ある魅力ある個店がいくつもあります。
休みの日に、ここにあるお店を訪ねることを楽しみにしています。
機会があれば、ぜひお訪ねください。
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<浜松の新名所 浜松ジオラマファクトリー!>

  ものづくりのまちとも言われる浜松。
 山田卓司さんのすばらしい作品を 
 ザザシティ西館の浜松ジオラマファクトリーで味わえます。
 お近くにお寄りの時は ぜひ お訪ねください。






☆「徳川家康天下取りへの道-家康と遠江の国衆-」浜松市博物館特別展 H27 ③

◇エピローグ 将軍家康と国衆のその後(徳川260年の天下泰平)
□天正3(1575)年 
  長篠設楽原の戦い
   信長・家康連合軍  
      武田勝頼 
        - 武田氏は天正10(1582)年に滅びる
家康は遠江の再平定と駿河の領有化
   
  本能寺の変後 
家康は甲斐や信濃に出兵 → 旧武田領の領有化
領地 = 三河・遠江・駿河・甲斐・信濃の5国
家康は武田家の旧家臣を抱えて、徳川軍や譜代の家臣団に組み込んだ
井伊直政
       - 武田家の旧家臣を召し抱えて最強の赤馬団を形成
小牧長久手の戦い、小田原城攻め、関ヶ原の合戦で功績
→ 譜代筆頭の大名 幕末まで要職


□天正18(1590)年 
小田原の北条氏攻め
先発 → 落城後
旧北条氏領地の関東へ移封
三河譜代家臣・遠江国衆も移住


□家康に就いた国衆たちのその後
  氏族    戦国期     江戸時代

井伊氏   国衆  →    大名(近江彦根)
近藤氏   土豪  →    旗本
菅沼氏  土豪 →  紀伊徳川家家臣
鈴木氏  土豪 →  水戸徳川家家臣
松下氏   土豪  →    大名(奥州三春)
都筑氏   土豪  →    本多家家臣
久野氏   国衆  →    紀伊徳川家家臣
江間氏   土豪  →    紀伊徳川家家臣
小笠原氏  国衆  →    紀伊徳川家家臣
大沢氏   国衆  →    旗本(高家)
本間氏   土豪  →    旗本
今川氏   戦国大名→    旗本(高家)








☆「『悩む力』を失った若者たち-悩みを克服して新しく生きようとする『生きる力』として『悩む力』が必要なのだ-  新堀通也・武庫川女子大学教授(当時)-「月刊少年育成」2004年1月号より【再掲載 2012.6】

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◇悩みと人間

 観察や実験によって明らかなように動物にもストレス、怒り、敵意、競争心
などの心理は存在するが、それらを悩みと称することはできない。


 それらは生物学的な本能、例えば個体と種の保存という本能に由来しており、
悩みという複雑微妙な心理とは本質的に異なる。


 悩みの基礎は自我意識であり、悩みは自我意識の発達とともに生まれる。だ
から生まれたばかりの赤ちゃんにも、動物的なストレスや怒りは見られるが、
自我を意識していないので悩みにはならない。


 やがて自我を意識するようになると、自分の容姿や素質などをきょうだいや
仲間と比較したり、比較させられたりして、自己に対する劣等感や敗北感、す
ぐれた相手に対する羨望やひがみを抱くようになる。そうした劣等感やひがみ
自体にさいなまれ、それから脱し切れない自我を意識するとき生まれるのが悩
みである。


 例えば劣等感に悩まされ、劣等感に悩む自分に悩むのであり、悩みとは劣等
感と同列にある心理ではなく一種のメタ心理だといってよい。


 そこでさらにこんな自分を生んだ親に対するうらみ、自分を一向に評価して
くれない周囲に対するひがみや敵意が育って悩むようになる。


 こうした悩みは程度の差はあれ、自己と他者との比較を制度化している社会、
例えば学校や会社に入って優劣を評価される場合、トップの者以外のすべての
人にとって不可避である。


 いやトップの者さえ、いつトップの座を奪われるかという不安に襲われるし、
周囲からの羨望や敵意にさらされる。学校で成績はトップの人も人望や人気は
低いかもしれない。


 こうして一見、世間からみれば羨しい限りの、悩みなどと無縁と考えられて
いるエリート、成功者にも家族関係、子どもの教育、健康上の心配など、人知
れぬ悩みがあり、心労は絶えない。


 このように悩みはすべての人間にとって不可避の宿命であり、人間とは唯一、
悩める動物だと定義することができる。人生とは悩みの連続であり、悩みをい
かに受けとめ処理、克服するか、悩みといかに付き合うかという「悩む力」は
「生きる力」の中核的な要素だといってよい。


 悩みはたしかに誰にも経験され、決して愉快なものではなく、悩みがあるこ
と自体、人間特有、人間永遠の悩みだといえるが、同時に悩みは人間固有の特
権であり、悩みを通してこそ人間的な成長、充実はもたらされると解すべきで
あろう。


 古来、人間の定義は数多いが、人間は社会的存在といわれ、歴史的存在とい
われる。前者は人間をヨコ軸から、後者は人間をタテ軸から、換言すれば前者
は空間、後者は時間からその特徴をとらえようとした定義である。さらにそれ
ぞれを大きく分けるなら、前者は自我を取り巻く他者(家族、知り合い、住民、
国民、人類など)、あるいは環境に、後者は過去、現在、未来に分類される。


 そして現在の自我はこの二つの軸の交差点に位置する。


 客観的に見ればどんな人間も(あらゆる動物、生物と同様)過去や環境から
決定的な影響を受けているが、人間だけはそれをいかに解釈するかという特権
的な能力を賦与されている。


 現在の自分が過去や環境の所産であることは間違いないが、不幸、不遇な過
去を後悔し問責する人もあれば、それから教訓を得、それをバネにして成長し
ようとする人もある。


 思い通りにならない他者や環境に打ち負かされて逃避したり破壊的行為に出
たりする人もいれば、建設的な人間関係を打ち立てい人は、他人の悩みに気付
かない。


 悩みや悩みを生み出す過去や環境などを嘆き悲しんで劣等感や絶望感、孤独
感や人間不信に陥るのではなく、悩みを克服して新しく生きようとする「生き
る力」として「悩む力」が必要なのだ。



◇未来と理想

 悩みのレパートリにはさらに自己の未来や理想にかかわる悩みがある。その
時その時、その場その場で思い通りにいかない現実的な悩みがあるとともに、
これからの自分はどうなるか、これからの自分はどう生きるべきかについての
悩みがある。過去や現実とはちがって、未来や理想は自己の判断、決断、選択
によって左右できる程度が大きい。


 その日暮らしの刹那主義、現実主義の人にはこの種の精神的あるいは道徳的
な悩みは乏しいが、自我を大事にする人、生きがい、自己実現を求める人、自
我意識に目覚めた人にとっては、この種の悩みは最も深刻である。


 現代のような経済不況のもとでは誰もが失業やリストラ、勤務先、さらには
国や世界の行く末に不安を覚えているし、現代のように社会変化の激しい時代
には誰もがその変化から取り残され、「落ちこぼれ」てしまうのではないかと
絶えず心配している。


 これらの悩みは何れも将来への不安に根ざした現実的な悩みだが、ここでい
う精神的、道徳的な悩みとは自分の目標や理想に解らして、自分はこれでいい
か、このままでいいか、といった悩みであり、多くの選択肢のうちどれを選べ
ばよいかといった自己反省、自己決断にかかわる悩みである。


 かつての身分社会、封建社会のもとでは個人は予め将来の道を運命的に決め
られていたし、自己決定、自己選択の範囲は限られていたから、そこには「あ
きらめ」という名のもと、この種の悩みは少なく、人びとは与えられた仕事の
中に生きがいを見い出す訓練を受けていた。


 しかし現代はそうではない。個人の尊重、選択の自由が高らかに謡われ、人
びとには生き方にせよ行き先にせよ、選択の幅が広く開かれている。親のいう
まま世間の流行のままに自らの将来や現在を委ねるわけにいかず、自ら絶えず
選択し決断しなくてはならない。


 また自らの抱く理想や目標に照らして現在の自分を見つめ反省しなくてはな
らない。こう見てくると、現代日本にこの種の悩みが広範深刻になって当然で
ある。しかもこうした悩みが自己反省、自己批判、自己責任、自己決定、理想
や希望などといった自我の確立を生む刺激、機縁となるのだ。



◇悩みを忘れた著者たち

 ところが奇妙にも、また不幸にも、現代日本の若者には「生きる力」の中で
も最も重要な「悩む力」はおろか、悩みそのものを忘れた若者が急増している。


 彼らにも多くの不満、不平、不安、逸鋭、失敗があり悩みがあることは事実
だが、その悩みを自ら悩み、自ら乗り趨えて立ち直ろうとする「悩む力」を養
うことに、現代の大人はすこぶる臆病、冷淡であり、人間にとって極めて大事
な悩みそのものを不幸と同一視し、子どもからできるだけ悩みを取り除いてや
ることが子どもの幸福に連なり、子どもの人格や人権を尊重するゆえんだと決
めてかかる傾向がある。


 悩みの原因になりそうなものは大人が前以て除去してやり、また悩みに陥っ
た子どもには大人がサポートの手を差しのべてケアしてやる。


 悩みの原因はすべて悩みを除去し、いやしてやれない大人にあるとする。


 その一方、子どもの欲求や希望はできるだけかなえ、子どもにはやりたいこ
とは何でもやれるよう自由な選択の幅を大きくする。家庭でも学校でも「子ど
もが主人公」という子ども中心主義が信奉され拡大解釈されるので、子どもは
自己中心主義に陥り、悩みを知らぬ子どもが大量に生まれる。


 こうした子どもが何らかの失敗、孤立、無視、不満などを経験するとき、自
らの悩みの原因を探って自己を見つめ、自ら悩みを克服する力を養われていな
かっただけに、悩みを理解してくれず、救いの手を差し伸べてくれない(と勝
手に考える)親や教師に八ツ当たりし、悩みの原因をすべて外に求めて癇癪を
爆発させる。


 他方、親や教師が善意で敷いたレールの上を何の疑いもなく走りつづける子
どももいるが、彼らは悩むことを知らないのでそれだけ「悩む力」を養われて
いない。


 彼らが複線のレールの中から一つを自ら選択し、自ら独立した人生を歩まな
くてはならない立場におかれたとき、深刻な悩みに直面せざるを得ない。


 現代日本の青少年は先に述べたヨコ軸(空間的、社会的存在としての視点)
とタテ軸(時間的、歴史的存在としての視点)から現在の自我を位置付ける訓
練や教育を受けていないので、ヨコ軸では自己と他者との関係を無視した自己
中心主義に陥り、タテ軸では過去を生かし、未来を見通して現在を反省しよう
としない刹那主義を奉じ、自分さえよければ、現在さえ楽しければ、それでよ
いという人生観を抱きやすい。


 他者や周囲の悩みや迷惑は意に介さず、未来への希望、責任、予想も忘れ、
少しでも自分の気に入らないこと、ムシャクシャすることがあればすぐにカッ
となって爆発したり、自分の殻の中に閉じ込もったりする。


 今さえ楽しければ、何をやっても勝手だと考える。現在、広く見られる若者
の間に見られる犯罪は、「悩む力」、いや悩みそのものを失なった彼らの象徴
だといってよい。


 例えばここ一年を取っただけでも、大きな不安と広い関心とを引き起こした
事件がいくつか起きている。代表的なのは長崎市で4歳の幼児を12歳の中学
生が誘い出して性的ないたずらをした後、駐車場ビルの4階から突きおとして
殺害、東京六本木では早大や東大など有名大学の学生が主催するサークル(通
称スーフリ)のイベントに全国から集まった多数の女子学生を集田強姦、大阪
府河内長野市では大学一年の男子が家族3人を殺傷、交際相手の高校一年の女
子も家族殺害計画をもっていたとして逮捕、といった事件がそれだ。


 詳しく説明する余裕はないが、何れも前後左右の見境いのない、「悩む力」を
失なった若者たちの代表だといってよい。
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